阿部幹雄氏の那須雪崩事故の真相 山と溪谷社2019年 を読んだ。春山訓練中八名の高校生と一人の教師の9人がなくなり、多くの負傷者を出した痛ましい事故だった。事故直後の教員側の問題に真摯に向き合おうとせず、都合の悪いところを隠蔽しようとする態度に怒りを覚えざるを得なかったが、その後の事故の真相究明の努力にもかかわらずうやむやに終わったことを残念に思っていた。
その後の関係者や雪崩の専門家ら懸命の努力である程度までは真相に迫ったが、肝心のところで教師らが沈黙を守ったために解明できなかったことが多くうやむやのままになってしまった。
阿部氏らの雪崩事故発生の科学的解明への努力には頭が下がるが、いくら科学的な解明に迫っても教師らが沈黙しては真相解明は困難で遺族の怒りは増すばかりだろう。科学者らの努力と教師らの置かれた状況に落差がありすぎて虚しい気持ちになる。もし教師らが言うように当日の急斜面でのラッセル訓練の場所全く安全で雪崩の恐れなど 全く無いと考えていたとすれば教師らは雪山講習を行う資格は全く無いと断ぜざるを得ない。どうして安全と考えたのか_そこが決定的に重要だが教師の沈黙はあらゆる議論を拒絶するものだ。
その辺りは敏腕ジャーナリストの領分だが誰も聞き出せなかったのだろうか？
スキー場を一歩でも出ればたちまち雪崩その他の危険と隣り合わせになることはごく普通の認識だろう。安全と信じたと強言し続けたのは2010年の雪崩事故を隠ぺいしたことと同じ隠ぺい体質を引きずっているのでありこの問題が解明されなければ科学的な雪崩の解明も虚しく感じられる。
一読者として残念に思うのはなぜ被災者家族らが民事訴訟を起こさなかったのか？死亡者らの損害賠償訴訟を起こすことで裁判のなかで真相に迫り加害者教師らの無責任とも思える行動の真相に迫ることが出来たのではないか？学校と闘う勇気が欲しかったが後の祭りなのか、やるせない思いで本を閉じた。
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那須雪崩事故の真相ー銀嶺の破断を読んで
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