6月29日（土）火山災害考古学シンポジウム

2024年06月30日 02:57講演会・研究会全体に公開

火山災害に関する考古学者のシンポジウムを聴講するためにお茶の水にある明治大学グローバルフロントホールに出かけた。少し早めに出かけて、同大中央図書館で、勉強中の親族関係の歴史に関する本をいくつか当たって、一部のコピーをとる。10時前、ホールで受け付け、前の方の席に着席。司会は黒曜石センターの堤隆氏、今度、旧石器学会会長に就任されたのには驚いた。来週は佐久平で「石棒」に関するシンポジウムも主宰され、お忙しそう。数年前まで浅間縄文博物館館長をされていたので、火山災害考古学にも詳しいと納得。
　今日の発表は
①縄文時代前期初頭の南九州のアカホヤ噴火＝鬼界カルデラ噴火の縄文社会への影響とその復興（レジリエンス）
②榛名山二ッ岳噴火と古墳社会
⓷富士山宝永噴火
④天明３年浅間山噴火の考古学的調査
⓹十和田平安噴火と地域社会
⓺災害考古学から防災考古学へ＋道南火山噴火とアイヌ社会
と盛りだくさん。いずれも実に興味深い内容だ。

最初の鬼界カルデラアカホヤ噴火（九州大学桑畑氏）―アカホヤとはこの噴火で出た降下火山灰が南九州で大量にたまっており、その赤い火山灰を農家が畑から取り除いていたが、それを現地農家は「アカホヤ」と呼び、その名が火山噴火にも用いられたそうだ。この噴火は薩摩・大隅半島南端と種子島・屋久島の間の西側の海中で発生、その規模は噴火規模の指数の７，有珠山噴火を1とすると巨大な規模で、列島での更新世―8万年前の阿蘇カルデラ噴火が８，最大規模のスマトラ島のトバ火山噴火も８で、鬼界カルデラ噴火は完新世最大規模の噴火とされる。
　この噴火の正確な時期、年代の研究、噴火による降下物、火砕流その他のイベントの火山学者、地質学者らによる検討、年代に関連する縄文土器型式や遺跡の研究ー継続か断絶かー植生や地形、盛業への影響、各地の縄文人の生活への影響、復興作業の様子など、40分という短い時間で多くの内容をハイスピードで解説し、追いつくのに苦労する。津波や火砕流などにより、種子島や薩摩・大隅半島などでは多くの集落が壊滅したり，放棄されたりしたようだ。その後、周十年。数百年後に場所により遺跡が復活してくる（轟B式期）。この場合、土器型式が連続的か断絶したかなどは、考古学で詳しく検討されてきたらしい。その後の植生変化、縄文人の生業、食生活の変化など、土器の残留脂肪酸などの分析を実施中で、まだまだ鶏鳴されるべき課題は多そう。分厚い火山灰の上下の遺跡の発掘調査も簡単ではなく、まだまだ研究史解明されるべき課題は多い。遺跡では種子島、屋久島、大隅半島、薩摩半島のみならず、宮崎平野など各地におよぶ様々な影響に関して、行われている。南九州には、2－3年前に何度か鹿児島県を訪問、硫黄島などの火山島群を訪問しようとして、コロナ問題や気象状況で船が出向できず、数回チャレンジしていまだに行けていない。
　次の古墳時代の上毛野（かみつけの）の榛名山二ッ岳噴火と古墳社会への影響に関して、名大教授、若狭徹氏の発表、鎧を着た古墳人骨出土でも知られ、また日本のポンペイともいわれる渋川市の黒井峯遺跡やその周辺の火砕流や泥流に覆われてそっくり出てきた古墳社会の様々なことがわかってきて注目を集めてきた。
昼食休憩、ランチの後　午後に入り、宝永４（1707.12）年火山噴火と地域社会の復興活動（東京大学の杉山浩平氏）、続いて天明3年（1783年５月）浅間山噴火と地域社会の被災と復興活動についての発表（嬬恋町郷土資料館、関俊明氏）、比較的近い年代の両者の被災状況と地域住民、宿場町、農民、宗教施設などに関する復旧、復興の様子、幕府や関連藩の対応など、地域的な違いと共通性など、興味深い。
　続いて平安時代の十和田火山噴火と出羽、陸奥および当時の日本の外にあった北東北（蝦夷と呼ばれた人々の地域≒津軽、下北など）への影響と律令国家の北進との関係なども興味深い（発表は岩手県立博物館の丸山浩二氏）。最後に「日本災害・防災考古学会」の初代会長となられた弘前大学の関根達人氏が新しい学会設立の経緯、これまでの活動tぞともに、自身の道南火山噴火（駒ヶ岳・有珠山・樽前山＝これまで登ったことのある山々だ）とアイヌ社会の対応（特に遺跡から出る畑ー焼畑の痕跡）などについてのこれまた妙味部会報告があった。発表内容はそれぞれ膨大で時間は短いので、ハイスピードの発表で十分細部まで理解できたとは言えないものの、様々なことを理解する手掛かりが得られ、聴講して十分満足できる充実した内容だった。

2024-06-29 6月29日(土)庭のユリにむせ

2024-07-06 ７月30日(日)火山災害考古学

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