明治大学博物館友の会からの連絡で同大学黒曜石研究センターに所属する谷畑美帆氏のコーディネートによる豊橋市「市杵嶋神社古墓群の中世人骨」シンポジウムが開催されるので、豊橋まで出かけてみた。午前中は浜松市の地域遺産センターの「浜北地域の古墳時代」展を見学し、引き続きレンタカーで豊橋駅近くの市民文化センター（カリオンビル）に向かう。新東名から東名高速を通過して豊橋駅付近の公共駐車場に車を入れる。昼食の場所を探すが、どこも混んでいて厳しいー餃子の王将でもかなりの時間待たされた。受付開場時間が迫ってきて急いでチャーハン餃子を食べて会場に向かう。すでに会場が始まっていたが、幸いまだ満席でなく、前のほうに陣取ることができた。
講演は
1）考古学から見た市杵嶋神社古墳群（岩原剛：豊橋市文化財センター）
2）頭蓋形態から探る市杵嶋神社古墳群の被葬者（近藤修：東京大学）
3）DNAから探る被葬者（神澤秀明：国立科学博物館）
4）派から探る市杵嶋神社古墳群被葬者（竹中正巳：鹿児島女史短大）
5）骨表面の痕跡から見た遺体の取り扱い方（皆川真莉母：東京都立大学）
6）市杵嶋神社古墳群出土人骨及び埋葬から探る被葬者増（谷畑美帆：明治大学）
中世の人骨は、古くは材木座出土人骨が有名だが、これらは戦乱による刀傷が多く、中世人骨は殺傷人骨が多いと考えられてきた。しかし縄文時代と異なり、中世人骨は残りが悪く、出土数も少ないようだ。谷畑氏は出土した人骨が縄文時代の貝塚の上に作られ、人骨の残りが非常に良いことに目をつけて、これらをチームで研究するプロジェクトを立ち上げた。上記のようなそうそうたるメンバーでこれまで調査が十分あされなかった中世人骨の研究を開始。これまで確認されなかった新しい知見を得ることができ、今後のさらなる研究に大いに期待できそうな研究発表だった。
講演�，任蓮�岩原氏が中世の牟呂津(市杵嶋神社付近の要衝の港町)と周辺の様相を文献と考古学により、わかっていることを解説、次に百体以上とされる人骨埋葬、出土状況で、埋葬姿勢、頭位などの概要を話された。最後に東三川地域の中世墓な関して、寺社との関わりが強く、上位層の塚墓、石組墓の他に多くの土坑墓が見られ、上位層以外にも墓を造る層が拡大したようだ。中には火葬墓も見られるようだ。
次の近藤氏は、頭蓋形態について論じ、中世人骨の特徴と言われる長頭数、低頭が古墓人骨でも観察され、さらに歯槽性突顎(いわゆる出っ歯)も目立つようだ。こうした特徴は遺伝的変化の少ない列島においては、何らかの環境的な要因が考えられるという。
三番目に国立科学博物館の神澤氏が、DNA解析の結果を報告された。今回の報告はミトコンドリアDNAの解析結果で、41号人骨(四歳前後)は、ハプログループD4b2b.45号人骨は、D5c1a、86号人骨は、M7b1a1a1と推定された。縄文的なハプログループは検出されず弥生時代以降の渡来系の強い影響が見られた。血縁関係の検定をしたが、子供同士では母親は別々で、86号人骨との間も母系の血縁関係はなかった。以前清家氏と神澤氏らが行った久米三成四号墳出土４人骨の全ゲノム解析を行ったところ。ミトコンドリアのハプログループひ不一致だったが、核ゲノムでは血縁関係が確認され、父親と異母キョウダイと判明したことがあった。今後核ゲノム解析で、別の結果が出てくる可能性は残されている。
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2月8日（土）豊橋市「市杵嶋神社古墓」の人骨シンポジウム
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