山のファーストエイドの机上講習に出席する。講師は山岳ガイドのT氏。
山岳ガイド協会のファーストエイド・マニュアルを使って、山のファーストエイドを概説。1時間半では時間が足りないので、かなり端折っている。
最初にまず、登山のリスクに関するコメント。
次のリスクに関する説明はT氏のではなく、別のサイトに出ていた詳しい説明だが、基本は同じで、リスクを危険の大きさと確立の両方の組み合わせで、そうしたリスクをいかにコントロールしていくか、そこに登山者の能力が問われることになるーー。
「リスクとは、危害(Harm)の発生する確率と、危害の重大さとの組み合わせ。
ある一定の時間の中で、具体的な不利益(or有益)な、出来事が起こる確率。あるいは何かを試みることの結果として、望ましくない(or望ましい)事象が起こる確率。天候、季節、年齢、力量(能力・知識・経験)などの条件によって変わる。
原因が外部にある場合(受動的リスク)と、内部にある場合(能動的リスク)とに分けられる。確率(頻度)と結果の重要性を含む。事故・災害の確率×事故・災害が起きた場合に予想される損失(or利得)の大きさ
リスク=傷害の重大さ(最も重い傷害)×傷害の発生確率(回避の不可能性)×暴露時間(暴露頻度)ーーー」
天候などの外部条件によってリスクは大きく異なるが、リスクを減らし、回避するには、事前準備や体力強化などが欠かせない。近年では山の遭難事故で中高年者(自分もそうだ)の下山中の転滑落事故が大きな比重を占めるようになっているそうだが、この対策には大腿四頭筋の強化(筋トレ)が欠かせない。また自分の筋力、筋持久力に見合った登山計画の作成などが必要なのだろう。こうした自分自身のレベル、現状の客観的な評価とその向上のためのトレーニングを継続的に行うことがまず重要として、その前提に立って、実際に起こりうるリスクとどう向かい合うか、そこからファーストエイドの知識、技術の出番になる。
ファーストエイド(第一次救命処置=Basic Life Support=BLS)はまず発生した事故、事件に関して、周囲の状況を確認し、その上で傷病者の全身観察を行い、心停止、出血、呼吸停止、中毒、意識障害などの重大性を判断し、緊急性が高いかどうか判断、緊急度が高い場合は、止血、胸骨圧迫(かつては心臓マッサージと言われた)などの応急措置を行うと同時に、救助要請を行うことになる。
緊急度がやや低く、時間に余裕がある場合(骨折など)は「聞く」「見る」「触れる」「聴く」で、本人確認をしてから、顔色、出血、外傷、意識、呼吸、腫れ、変形、嘔吐、麻痺などの有無を観察、ファーストエイドを実施。ただし、命に別状はないと思われるケースでも、動かしてよいかどうかは、簡単ではなさそう。手足のダメージだけならまだしも、頭、首を含む体幹のダメージは、大丈夫そうに見えても内臓へのダメージがある場合もあり、手足のダメージでも、動かすことで症状が悪化したり、治療への悪影響がある場合もあり、場合により、ヘリを呼ぶなどの救助要請が必要と思われる場合も少なくないようだ。
T氏はこれまでのガイドなどの登山経験の中での遭難事故、救助の具体例を引いて、遭難救助、BLSの原則と例外などについて、わかりやすく説明。
面白かったのはヤマケイの「救急医療ハンドブック」で骨折、捻挫、脱臼などへの応急対処として[
RICE:R=rest(安静),I=icing冷却)、C=compression=圧迫、E=elevation=挙上という原則を紹介しているが、T氏はこれに対して、
「あれやった:あ=圧迫=テーピングなどで固定、れ=冷却、や=休む、安静、た=患部を心臓より高く上げる」
という日本語のわかりやすい原則をあげていた。
最後にこれからの季節に多い熱中症に関して、とりわけ、水分補給とスポーツドリンク(塩分+糖分)の重要性を強調、気温の上昇に応じた必要水分量を的確に予想すること、補給を確実に行うことが重要、ということーー。
登山中の給水量計算式:必要給水量=5x 体重x時間-20x体重
体重60kgの人が8時間行動すると、5x60x8-20x60=1200(ml)となる。
これに気温や日射量などの予想を加味して、余裕を持って水分を準備し、行動することが必要になる。気温が低い場合は一般的には少ない水分量で大丈夫だが、本格的な冬山の場合は、逆にラッセルその他で体力を消耗するので、大目の水分(+電解質)が必要になる。また遭難事故に遭遇したり、眼前で目撃した際の心理的なショックへの対応も課題として指摘された。
おはようございます
>大腿四頭筋の強化(筋トレ)が欠かせない
ふむふむ
>あれやった
これ、いいなぁ
貴重な情報、ありがとうございました
でわでわ
hirokok510さん、はじめまして。
>眼前で目撃した際の心理的なショックへの対応も課題として指摘された。
これについてですが、事故を目撃した人ということですね?
それと、重傷を負った人に対しても、野次馬根性で「ひどいな」とか絶対に言っちゃダメで、「大丈夫怪我は軽い」というような励ましの言葉を掛けるのは必要だと講習を受けたことがあります。
hirokok510さん、こんばんは。
そうですね、登山等の野外活動中に傷病者に遭遇した場合に、非医療者による適切な応急・救命措置は救命率を高める重要なポイントとなり、予後や社会復帰に大きく貢献する事になりますね。
登山中にもし傷病者に遭遇した場合には、支援されます事を願っています。
ごめんなさい、これは、T岳のクライミング中の懸垂下降時の落下で、絶望的な場面で下からのパーティが怖くなって全く動けなくなった場面で、結局懸垂下降もできず、一人ひとり稜線まで上げて下山させた例らいしいです。
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