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本作は土井監督の飯館村シリーズの2作目。土井監督はパレスチナの人々を描いた「届かぬ声ーパレスチナ・占領と生きる人々：四部作で多くの賞を取った記録映画作家、飯館村シリーズの二作目で前作は（見ていないが）、事故直後の同村の家族の行方を追ったもので、本作では二家族と村のその後の状況を描いている。
3部構成で、第一部は「家族」−
二つの酪農家家族（志賀さんおよび長谷川さん一家）の現状、生き様を描いている。志賀さん一家は飯館村の長泥と並んでもっとも線量汚染の高い蕨平地区出身で、今は二世代家族が南相馬市と伊達市に別れて暮らす。長谷川さん一家は以前は4世代が一緒に暮らす大家族、今は健一さん夫婦と祖父母が伊達市の仮設住宅、息子の義宗さんは山形の牧場で働き、家族を支えながら、独立を夢見ている。そうした離散した家族を取り巻く厳しい現実が描かれている。
第二章は「除染」で除染がいかに無力で、非現実的か、また大きな予算がついて、ゼネコンの金儲けの種になっているか、実際の住民にとって、どのような意味があるのかーーなどが問われている。結局いくらお金をかけても、除染には限界があり、大きく線量を下げることはできないこと、少しばかり下げても子供を持つ若い世代は戻ってこないことなど、お金をかけるならば、この土地で生きようとする人々の暮らし、生業の回復に役立つものであってほしいこと、などなどが描かれるーー。
そして「避難区域見直し」で年間２０ミリシーベルト以下になるように除染が進めば、帰村可能になるという。しかし、これは新たな「安全神話」となるーーこの数字は原発労働者などの基準値と同じで、こうした危険な数字で安全だという政府の姿勢に住民らは怒りをぶつけるー「それが安全と信じるのなら、環境庁など、担当者の家族が住み込んで安全を自ら保証してほしいーー。住民らの行政や東電への不信感は根深い。京大原子炉実験所の助教、家中氏は除染はこれまでの公共事業で繰り返されたシステムと同じ構造で、原子力村があるように除染村ができあがっている、という。
村人の間では、子供の将来を心配する世代と、村から離れたくない高齢世帯との間で二極分解せざるを得ない状況ーーこれはいかんともしがたいーー。答えのないまま、現実は進行していくーー
上映後、土井監督と鎌田慧氏とのトークライブがあり、原子力村を生き延びさせようとする現政権と民主党時代の様々な試みとぶり返しを鋭くえぐっていた。
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