ロングスパッツの思い出　　　～編み上げからジッパー、遮熱シート、ゴアテックスまで～

2022年02月11日 13:51昭和の山旅考全体に公開

ロングスパッツの思い出　　　～編み上げからジッパー、遮熱シート、ゴアテックスまで～

　初めて雪山を経験した1960年代後半、オーバーシューズを履いてアイゼンやワカンをつけて登るのが普通で、ロングスパッツを選択肢として意識することはなかったように記憶している。
　ロングスパッツとの出会いは、大学に入って山スキーを始めた時だった。当時の山スキーのビンディングは、カンダハーと呼ばれるタイプで、前方部のバッケンの前皮と後方部に伸びるワイヤで登山靴を固定して、歩行や滑降をするスタイルだった。もちろん貧乏学生が専用のスキー登山靴を買えるわけでなく、普段履いている登山靴を使った。そのため、ワイヤーをひっかけるために登山靴のかかとに太めの革ひもを外付けした。
　こうなると、ロングスパッツのお出ましである。最初に買ったのは、軍靴のような網掛けのもので、ひもも綿製だった。これでは、雪が付着しやすいばかりか、冷えてくるとごわごわになりやすく、着脱に時間がかかって不便で仕方がなかった。
　それを解決したのが、横にジッパーの付いたナイロン製のタイプのものだった。大学2年の学年末（1971年春）に登った白馬岳のスキー登山で、初めて使った。やはり、着脱が格段にスムーズで、春山の縦走など想像以上に便利だった。これは、社会人になってもしばらく使った。
　3代目のロングスパッツを手にしたのは、1977年5月の尾瀬の至仏山スキー山行あたりだったと思う。今度は紺色のものにしたが、何よりの売りは、NASAの宇宙服開発で実用化された遮熱性の強い生地が裏地に使われているという点だった。銀色をしていたから、アルミ蒸着のポリエステルフィルムでも使ったものだろうか。登山道具に関しては新しもの好きだったので、詳しく理解しないまま保温性にたけているに違いないと購入した。これも長くお世話になったが、いつの間にか雪のある季節に山に行くこともなくなったので、不要の長物となってしまった。
　４代目は、現在も多くの人が使っているゴアテックスのロングスパッツである。いつ頃買ったか、いまいちはっきり覚えていないが、防水性もあり、長時間つけていても蒸れることもないという安心感で購入した。この頃になると、泥除けや朝露除け、ヒル除けといったところが使用目的だったのだろう。これも、退職して時間がたっぷりある身分になると、年齢のこともあるので季節のよい好天の日にしか山に登らなくなって、思ったほど活躍する場面も少なくなってしまった。
　こうして振り返ってみると、「たかがロングスパッツ、されどロングスパッツ」である。道具との付き合いは、人生そのもののような気がしてきた。

写真①編み上げの赤スパッツ（北ア烏帽子岳1970.11）
写真②ジッパー付きナイロン製の赤スパッツ（南ア聖岳1971.12）
写真③宇宙服開発品の応用といわれた紺スパッツ（越後駒が岳1980.4）

（参考）
「初めての山スキー妙高・笹ヶ峰」1969.12
https://www.yamareco.com/modules/diary/356744-detail-170005

「天気図を書く、天気図を読む　　撤退は悲しいね」
https://www.yamareco.com/modules/diary/356744-detail-171127

「春の白馬岳　～アイスバーンの大斜面はエッジが効かないの巻～」1971.3
https://www.yamareco.com/modules/diary/356744-detail-200035

「尾瀬・早春の山スキー　～至仏山ムジナ沢を滑る～」1978.3
https://www.yamareco.com/modules/diary/356744-detail-191954

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