「クサリを絶対離すな!」
こんなアドバイスを山で聞かされるのは、非常に残念だ。もう聞いただけで、その登山者やパーティのレベルが分かってしまう。
もちろん、言いたいことは分かるが、そう言われると、大体、腕の力目いっぱい握っちゃうよね。
で、その結果、握力がなくなって、滑落してしまう。表妙義の縦走路などで、良くあるパターンだ。
そもそも、クサリはそんなに力を入れて握る必要はない。
「本能がバカになっていない限り」滑落するほど、弱くは握れない。
「私、握力弱いから、しっかり握ってないと落ちちゃうんです。」
そういう人もいるかも知れないが、そこまで握力がないのであれば、持久力もまったく期待できないので、そういう人は、そもそも、登山をするべきでないし、登山をしなくていい。
腕の力は日頃使っていないと、筋力も持久力も期待できない。最近では、クライミングジムなど、いくらでもある。
命がけであるにも関わらず、トレーニングしないで登山するのはいかがなものか?
登山をするからには、その場しのぎで何とかしようとせず、まずは、基本的な技術、体力は身に着けてから登るべきだろう。
そうすれば、表妙義、剱、穂高の「一般登山道」で、ザイル、ハーネスを使うこともなくなるだろう。
観光、ハイキングのつもりで、登山をするべきではない。
クサリや岩を腕を伸ばして、腕に力を入れないで握るのは、基本だ。たまに、ハイキングなどで、腕を曲げてクサリを握るよう言う人もいるが、補助的にクサリを握るだけの状況なら、それは正しい。
(そもそも、そういう状況では、登山者の実力があれば、クサリを握らないで通過できるような場所であることが多い。)
ところが、表妙義など、体重をクサリに預けなくてはならない状況になると、ムダに力が入って危険な状態になる。腕を伸ばしてクサリを握ることをくせにするべきである。
(当然、クサリに体重をあずけるのは、自己責任。)
もちろん、腕を引き付ける場合には、力を使うのだが、その時間をできるだけ短くするようにするのは、基本だ。
「ゆっくり安全に」という感覚は、ハイキングの感覚だ。危険個所は、「正しい技術で素早く通過する。」のが正しい。
それができないのであれば、登山は成り立たない。危険個所に長くいることほど、危険なことはない。
●参考:指のトレーニング
https://www.yamareco.com/modules/diary/73693-detail-229282