クマに襲われた北ア縦走 五竜岳〜鹿島槍ヶ岳〜針ノ木岳〜烏帽子岳



- GPS
- 57:19
- 距離
- 68.1km
- 登り
- 6,780m
- 下り
- 6,507m
天候 | 最高 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
キレットはもちろん危険個所ですが、クサリやハシゴはしっかりしています。 それよりも、船窪小屋〜烏帽子小屋の間が油断大敵です。稜線東側の崩壊が激しく、砂地で足を滑らせると下まで滑落しそうな場所が数多くあります。関西の人はなじみがあるかもしれませんが、まるで六甲山の蓬莱峡のようなところです。 私たちが通過する前日も滑落者がヘリで救出されていました。急なアップダウンが多く疲れますが、気を抜かないで慎重に通過してください。 今回は危険個所を過ぎた烏帽子岳で、さらなる危険、クマに遭遇しました。 すみません、人が多く通る北アルプスの縦走路では、クマに会うことはないとたかをくくっていました。クマをなめてましたのでクマ鈴も持っていませんでした。詳細は8月14日の記録を読んでください。 みなさんにも注意していただくためにヤマレコに投稿しました。 |
予約できる山小屋 |
七倉山荘
|
写真
船窪岳稜線をホバリングして、明らかに遭難者を捜索している様子である。
詳細は見えなかったが、最終的に遭難者を無事に救出したようで、ヘリは飛び去って行った。
明日は我が身なので慎重に行きたい。
感想
●8月7日 夜車出発
23:00 会社から帰宅後、マイカーにて出発。
名神高速から中央道、途中で仮眠しながら五竜遠見尾根に向かう。
●8月8日(曇り時々晴れ) 遠見尾根〜五竜山荘
8:30 白馬五竜高山植物園の無料駐車場に到着。
最近は「五竜遠見スキー場」ではなく、「白馬五竜スキー場」と呼ぶらしい。
そして夏は「白馬五竜高山植物園」と呼ぶらしい。
9:00 テレキャビンに乗る。
9:30 展望リフトの終点から歩き始める。
遠見尾根は、林間でアップダウンがあり、最後はヤセ尾根の急登である。
私たちは初めてであるが、八方尾根のようにルンルン気分では登れない。
もしかすると、八方尾根を登って五竜山荘に行く方が早くて楽かもしれない。
15:20 五竜山荘に到着。
五竜山荘の夕食は、毎日カレーライスだそうだ。従業員も毎日カレーを食べているのだろうか?
●8月9日(曇り時々晴れ) 五竜山荘〜五竜岳〜キレット小屋
6:30 五竜小屋出発。
7:40 五竜岳頂上着、濃い霧の中で何も見えない。
キレットへの縦走路はしっかりしたハシゴとクサリがあるので問題はない。
午後、晴れ間から見えだした剣岳が美しい。
キレット小屋は、本当に狭いキレット(コル)に建てられているため、岩稜を回り込む最後まで見えない。
小屋の両側ともクサリ場となっており、逃げ場がない。
若いころにも、5月に不帰から鹿島槍まで縦走したことがあるが、その頃は避難小屋しかなかったと思う。
12:30 キレット小屋着。
●8月10日(曇り時々晴れ) キレット小屋〜鹿島槍ヶ岳〜冷池山荘
6:10 キレット小屋出発。
小屋からいきなり、ハシゴとクサリが連続するが、ハシゴとクサリはよく整備されている。
ただし、逃げ場が少ないので、人が多いと渋滞が予想される。
鹿島槍北峰を越えると、突然道がよくなり人が多くなる。
9:00 鹿島槍ヶ岳頂上着。
10:10 布引岳頂上着。
11:30 冷池山荘着。
一日中霧のため、景色はほとんど見えなかった。
冷池山荘は混んでいて、3人で2畳となる。
●8月11日 (晴れ) 冷池山荘〜爺が岳〜種池山荘〜岩小屋岳〜新越山荘
6:00 冷池山荘出発
歩き始めると間もなく晴れてきた。
鹿島槍から種池山荘までの道はよく整備されており、歩きやすく気持ちのよい縦走路だ。
種池山荘を過ぎると、ウソのように人がいなくなる。
7:30 爺が岳頂上
槍ヶ岳、穂高岳がよく見える素晴らしい天気だ。
11:30 岩小屋沢岳頂上着
縦走路から見える剣岳が美しい。
また、若いころによく行った黒部別山の谷がよく見えて楽しい。
12:30 新越山荘着
毎日、半日行動なので本当に楽である。
我々のような年寄りは、無理をしない行程にするに限る。
●8月12日(晴れ) 新越山荘〜針の木岳〜針の木小屋
6:10 新越山荘出発
黒部別山の大タテガビン、丸山東壁などがよく見える。
ある意味、元クライマーにとっても楽しい縦走だ。
7:00 鳴沢岳頂上
8:10 赤沢岳頂上
今日も素晴らしい天気で、北アルプスのすべての山、白馬岳、剣岳、槍ヶ岳が見えている。
10:45 スバリ岳
実は若いころに、未登の岩壁を求めてここまで来たことがある。
しかし、その小スバリ沢ビルディング状フェイスは黒部側なので縦走路からは見えない。
12:20 針ノ木岳
13:00 針ノ木小屋
ここから烏帽子岳への稜線がよく見える。
見るからにアップダウンが多く標高が低いために暑くてしんどそうだ。
パートナーもかなり疲れているが、天気がよいのでまだ行けそうだ。
●8月13日(晴れ) 針の木小屋〜蓮華岳〜船窪小屋
6:15 針ノ木小屋出発
この間、GPSのデータなし。
7:45 蓮華岳頂上
コマクサが咲く頂上を過ぎると道が悪くなる。
14:00 船窪小屋着
小屋に着く直前、ヘリが飛来してくる。
船窪岳稜線をホバリングして、明らかに遭難者を捜索している様子である。
詳細は見えなかったが、最終的に遭難者を無事に救出したようで、ヘリは飛び去って行った。
明日は我が身なので慎重に行きたい。
船窪小屋はアットホームな小さな山小屋で食事もおいしい。
発電機はないので、夜はランプだけとなり味がある。
●8月14日(晴れ) 船窪小屋〜烏帽子岳〜烏帽子小屋
5:30 船窪小屋出発
今日行程が今回の縦走のメインイベントである。
我々のペースだと10時間以上かかると予想されるので、パートナーの荷物も可能な限り私が持つ。
6:50 船窪岳頂上
この縦走路は本当に油断できない。
槍穂高や鹿島槍の縦走路と比べると岩場も少なく何てことはないのだが、稜線東側の崩壊が激しく、砂地で足を滑らせると下まで滑落しそうな場所が多くある。
まるで六甲山の蓬莱峡のようなところが連続する。
昨日の遭難現場あたりも慎重に通過する。
急な登り下りのアップダウンが多く本当に疲れる。
途中の登山道で真新しいクマの糞を発見する。
12:10 不動岳頂上着。
不動岳を過ぎると危険場所はなくなる。
ただし、天気がよいので、とにかく暑く、バテてしまう。
若いころによく登った唐沢岳幕岩も見えてきた。
昔を思い出すのに最適な山旅である。
12:25 南沢岳頂上着。
南沢岳からは、一転してのどかな山容となり道もよい。
烏帽子岳の東側をトラバースするあたりは、岩と這松と池が本当に美しいところで、まるでクマさんの天国だ。
我々を追い越した登山者との会話で、「クマさんに会ったらよろしく」と冗談を言っていた。
ところが、しばらくして、本当にハイマツの斜面にクマを発見する。
我々からは100メートル以上離れているが、先ほどの先行パーティとは50メートルと近いので、あわてて大声で知らせる。
先行者もクマに気づき大声を出してクマを追い払う。
登山者が騒ぎ出したのでクマは茂みの中に見えなくなった。
初めてのクマ体験はこれで一件落着と思っていた...
15:30 烏帽子岳分岐点着。
パートナーは疲れているのでそのまま烏帽子小屋に向かう。
私のだけ烏帽子岳の頂上に向かう。
16:00 烏帽子岳頂上
完全に岩場になっている頂上は高度感万点だ。
烏帽子岳頂上からの下り、烏帽子岳分岐の手前で、またもやクマと遭遇することになるとは...
頂上からの下りで一人抜き、ハイマツ帯を抜けてさらに夫婦連れを抜いて、コマクサのあるガレキ地帯に出る。
岩を回り込んだところで、クマと出会う。
クマも稜線のハイマツ帯から出てきたところで、クマもこちらを向き両者の目が合う。
距離は5メートル、こちらもビックリしたが、おそらくクマも驚いただろう。
クマが明らかに飛びかかってくる態勢を取った瞬間、私もジャンプして横に逃げる。
一瞬の判断でクマの攻撃を避けることができた。
しかし、私はガレキにヘッドスライディングした状態なので、さらに攻撃されると助からないと覚悟した。
幸運にも、クマは第一撃に失敗すると、そのまま谷の方にダダっと飛び去った。
クマの爪を避けることができたのは幸運だったが、ガレキにヘッドスライディングしたので、私の両ひざと両肘は血だらけである。
後ろの夫婦連れの奥さんが近寄ってきて私に声をかけてくれた。
「大丈夫ですか?今、飛び去って行った黒いものは何ですか?」
「クマですよ!」
「...」
奥さんは、ほんの2,3秒の出来事なので、事態が飲み込めていないようだ。
旦那さんは岩陰にいたので見えていなかったようだ。
もし私がこの夫婦を追い越していなければ、間違いなくこの夫婦がクマに襲われていただろう。
クマの足跡の写真を撮り、一瞬の出来事を振り返る。
まだ心臓の鼓動は激しいが、自分でも驚くほど冷静に動けたと思う。
一瞬の判断でクマの攻撃をかわすことができたのは本当に幸運だった。
ザックを分岐点に置いて、空身だったのが幸いしたようだ。
もしその場で立ちすくんでいたら、どうなっていたかと考えると恐ろしい。
夫婦と一緒に、重い足を引きずって烏帽子小屋に向かう。
17:00 烏帽子小屋着
烏帽子小屋でパトロール隊員に事件の顛末を報告しながら、両手両足の裂傷の手当てをしていただく。
この程度の怪我ですんだのは不幸中の幸いです。
パトロールによると、そのあたりはクマの縄張りで、クマを目撃する登山者も多いらしい。
ただし、今回のように接近して襲われたのは初めてのようだ。
もしかすると、今回の件でそのクマは退治の対象になるかもしれないそうだ。
クマの生活域に人間が割り込んでいるので、クマにはかわいそうな話だ。
クマ鈴を持たないで、クマがよく出没する夕方に行動した私が悪いのかもしれない。
●8月15日(晴れのち曇り) 烏帽子小屋〜高瀬ダム
6:20 烏帽子小屋出発
昨日のクマ騒動で、腕も膝も肩も、身体中が痛い。
腕も回らず、ひじの裂傷に当たるので、一人ではザックも担げない状態である。
11:20 高瀬ダム着
タクシーで信濃大町へ到着するも、大糸線の電車の本数が少ないので、糸魚川方面へは2時間待ち。
さらに神城駅からタクシーで駐車場へ。
薬局で各種バンドエイドを購入して、傷口の防水対策をして十郎の湯へ行く。
大町のそば屋で夕食をとってのんびりしていると、集中豪雨のため、岡谷ジャンクションが通行止めとなる。
しかたなく、梓川SAで仮眠しながら待つことにする。
●8月16日 帰宅
朝まで待っていたが、一向に開通しないため、木曽路経由で中央道に出る。
12:00 無事帰宅。
帰宅後、さっそく『山でクマに会う方法』米田一彦著を購入して勉強中です。
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