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2023年09月19日 12:20📖私の覚書📖全体に公開

ヒグマ! 距離は10メートル!

ついに出遭ってしまった。北海道は知床硫黄山で。羅臼岳でも、幌尻岳でも、カムイエクウチカウシ山でも、ペテガリ岳でも、神威岳でも遭わなかった羆に。

その日は硫黄山に登った。カムイワッカの湯の滝手前500mにある駐車場には本州ナンバーの車が1台だけだった。てっきり、先行者がいるものと思ったが、実際には硫黄山に登っていたのは、自分ひとりだけだった。

まずは、登山口に掲示された羆目撃情報をカレンダーにプロットした掲示物を見る、、、ほぼ、毎日じゃん。知床はヒグマの極密度生息域。猛烈に悪い予感がした。でも、目撃は羅臼岳の方に集中してる感じだったので、硫黄山はそんなにでもないんじゃと都合よく考えたが、後で思えば、単に硫黄山は登山者が少ないから目撃が無いだけですね。

いつもの熊鈴2個に加えて、爆音の鈴も持った。熊鈴3連だ。ヒグマ用の熊除けスプレーも持った。万全だ、、、と思う。とにかく、序盤の森の中が、餌場である蟻塚もあって目撃情報も多く、怖かった。そこを抜けてしまえば、なんとかなるだろうと。硫黄採掘跡は、視界が開けていた。ヒグマは見当たらないが、他の登山者も見当たらなかった。

硫黄採掘地跡を抜けると、さらにハイマツ帯を抜けて、涸れた沢の中を進む。熊のフンが、そこらじゅうにある。水溜まりのある場所の周囲に濡れた足跡のようなモノが。明らかに登山靴ではない。サイズも小動物ではない。うーむ。さっきまで、ここで水を飲んでいたのか。鈴の音を聞いて、身を隠してくれたのか。

硫黄山に登頂して下山を開始。沢、ハイマツ帯を抜けて、順調に新噴火口最上部を通過した辺り。そこにいた。登山道上にいる。約10メートル先だ。かなり近い。そして、でかい。ニンゲンより、確実にでかい。ハイマツの枝が張り出していて目隠しになっており、かなり接近するまで気が付かなかった。

自分が羆に気が付いた時には、向こうは立ち止まってコチラを見ていた。今思うと、自分でも不思議なくらいに落ち着いていた。なぜ、この時、平常心でいられたのか、自分でも分からない。思ったことは「でかい」だけ。写真を撮りたいけど、レンズを向けて、シャッターを切ったら、その音ですら刺激してしまうのではないかという距離感。実際、レンズを向ける行為自体がクマを刺激してしまうこともある。ヒグマとの間には、障害物は何もない。突進されたら、一直線だ。羆は、不整地を時速40キロで走れる。不整地を競技場を走るウサイン・ボルト選手よりも速く走れれば、ひょっとしたら、逃げ切れるかもしれない。時速40キロは、1秒間で11m進む。初速を考慮しても、10mの距離では自分に衝突するまで2秒はかからないだろう。熊の攻撃態勢を確認してから回避行動をとったところで間に合うか。また、どのようにかわすかを瞬間的に判断しなければならない。かわせるわけがない。

慌てず、騒がず、落ち着いて。顔と体を熊に向けて、決して目を見ず、ゆっくりと後ずさり。熊は、1秒くらいこちらを見た後、ゆっくりと振り返って遠ざかって行ってくれた。ヒグマが振り返る1秒の間に様々なことを考えたからか、やたらに1秒が長く感じられた。

とても、写真が撮れるような状況ではなかった。やっとの思いでカメラを取り出した時には、背中の一部しか撮影できなかった。ハイマツの揺れで、熊がどこまで移動したか分かったので、ある程度、離れたところで、熊鈴を強めに鳴らしたら、その瞬間に走って遠ざかっていくのが分かった。これが熊鈴の威力。効果絶大だ。スプレーを使うまでもなかったけども、もしスプレーを持っていなかったら、今回のように冷静に対処できたかどうか、わからない。

ハイマツの揺れ具合から判断して、200メートルくらい離れたのを確認して、移動開始。その後は、無事に下山できた。

水溜まりで水を飲んでいたヒグマは、熊鈴の音を聞いて、自ら身を隠してくれたようだが、遭遇したヒグマは、音の出所がニンゲンであることを確認してから、ゆっくりと離れて行った。熊にもニンゲン同様に性格があり、個体差がある。知床の山、いや、北海道の山に登る場合は、本州の山以上に十分な熊対策を。ツキノワグマよりはるかに大型ですし、鈴を付けてても、間近で見かけますから。

○ヒグマ対処法(知床財団HP)
 https://www.shiretoko.or.jp/higumanokoto/bear/

クマは、本来、慎重で臆病な動物です。突然、襲ってくるわけではありません。ニンゲンの接近に気づけなかった熊を、追い込んでしまった結果、熊は自身を守る最終手段として薮から飛び出してきます。積極的には人間を襲いません。あらかじめニンゲンに気づいたクマは物陰に隠れて、人間が通り過ぎるのを待ってくれています。遠くから、人間の気配に気づいていた熊は、身を隠したり逃げたりする余裕があります。人間の接近に気づけずに咄嗟に身を隠した熊は、人間に見つかるかもしれない恐怖に耐えかねて飛び出してくるというわけです。つまり、襲われるかどうかの差は、どの段階で熊がニンゲンの接近に気づいたかの差です。

遠くから、熊にニンゲンの接近を知らせるにはどうしたらいいですかね。ネット上には、熊に襲われたという参考になる動画が、たくさん公開されています。なぜ、襲われたのでしょうか。耳を澄まして聞いてみてください。それらの動画から、鈴やラジオの音が聞こえるかどうか。それが、答えです。

ただし。先にも述べたように、熊にもニンゲン同様に性格があります。熊鈴を気にしない個体もいます。熊に関しては、この対策が絶対というモノはありません。鈴と撃退スプレーといった具合に二重の対策をするのが、より良いかと思います。
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