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2024年08月21日 12:54📖私の覚書📖全体に公開

300名山を完登した時の追想

2024年7月23日に、200名山、300名山を完登した時に、レコ造りを急ぐあまり、感想に書き切れなかったことを今、改めて整理して書いてみました。

針ノ木岳にて、200名山を完登したあと、針ノ木小屋まで戻ってから、今度は、300名山完登へ向けて蓮華岳への登りがはじまる。すれ違う人も、何人かいた。挨拶する人、しない人、無視する人。もう、そんなことはどうでもよくなった。広大な展望稜線を歩いていると、やがて、若一神社奥宮に着いた。蓮華岳山頂まであと100mくらいの位置にある。山頂までが目と鼻の先で、もう登りもなく、ほぼ平坦だった。山頂に、男性か女性か1人だけいるのが見えた。

奥宮に安全登山を祈願したところで、ふと、山頂に行くことが怖くなった。今まで取り組んできたことへの到達地点が、すぐそこにあるのと同時に、全ての終わりがそこにあるような気がした。できることならば、この青空の下、身体の動く限り、どこまでも、いつまでも、歩いていたい。ここで引き返して下山してしまえば、300名山への挑戦は、これからも続いていく。しかし、1つの到達点が、目の前にあるのであれば、やはり、そこに行くべきだろうと思い直し、山頂に向けて歩き出す。

残りの100mくらいの距離は、もう「無」でした。何も考えていないし、なんの感情も起こらない。ただ、いつもと同じように、左右の足を動かして身体を前に進めているだけ。300山目の頂には何があるだろう。何かを悟るだとか、大それた答えは期待していない。いつもと同じような眺めの良い山頂があるだけで、特段、何も無いだろう。単に三百名山の300番目に登った山というだけのことかもしれない。山頂にいた人は、気が付いた時には直ぐ近くにいて、風が吹き抜けていくように通り過ぎて行きました。

誰もいない蓮華岳の山頂は静かでした。誰に祝ってもらわなくても、1匹のテントウムシだけが、私の膝の上にのってきてくれました。どこからかやって来たこのテントウムシは、自然界が祝福のために、私の元に遣わした使者なのだろうか。2800m級の山の上では、夜にもなれば冷え込み、明日にはもう生きていないだろう。あと数時間の命かもしれない。このテントウムシは、今日という限りある命を懸命に生きている。人間とて同じだ。命があと数時間で終わるとしたら、自分は何をするだろうと考えた時、それが人生でやり残していることなのだろう。命に限りがあるならば、生きているうちにやらなければならないことがある。ヨコシマなことをやっている時間など、人生には無い。真っすぐに生きたい。テントウムシを見ていると、そんな気になってくる。

誰かに認められたいとか、凄いと言われたいとか、評価されたくてやってきたことではない。自分を高めたいとか、限界に挑戦したいとか、感動や癒し、達成感を求めていたわけでもない。楽しくてはじめた登山ではあったけども、なんで、やり続けてきたのかは、今となってはよく分からない。客観的に見て苦行にしか見えない山や、自分でも、一体、何やってるんだろうと思う山もしばしばあった。6年前に百名山を完登した時にも書きましたけども、人間が山に登るのに、理由や答え、目的はいらないのかもしれません。そこにあるから登る。ただそれだけ。6年前はその言葉の輪郭が、ぼんやりと見えるだけでしたが、今では確信に変わりました。

自分は、変わった。山登りを始める前と今で、明らかに変わった。今の私には、テントウムシの祝福だけで、十分すぎるほどのご褒美でした。

山とは登るものではなく、登らせていただくもの。
生きていることを実感するのではなく、
生かされていることを実感した。

今まで登らせていただいた全ての山々には、
鍛えていただいたという感謝しかありません。

これが、蓮華岳の山頂をあとにして、針ノ木岳を正面に見据えた時に、心に浮かんだ素直な感情でした。百名山を完登した時には、なにも感じなかったので実に不思議。三百名山を完登して、フッと肩から力が抜けた感じがした。今にして思えば、この時が自分の体の中で何かしらの変化が起きた瞬間だったのかもしれない。言葉で表現するのであれば、まるで、自分自身が自然の一部になったかのような、そんな感覚でした。

ありがとう、三百名山。
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コメント

こんにちは

>山とは登るものではなく、登らせていただくもの。
全く同感です。
いにしえの人々は山には神が宿るとして山岳信仰が発祥しました。
山に対して畏敬の念が生じるのは自然なことだと思います。
ひとつ間違えれば命を落とすことに畏怖の念を禁じえません。
そういう意味で、ただ単に『登頂した』ことを『制覇』と表現するのは如何なものかと思います。
2024/8/21 13:50
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たかやまさん、コメントありがとうございます。

山に対して、畏敬の念を抱くのは、登れば登るほどに自然なことなのではないかと、思えるようになりました。人間が自然に打ち勝つことなど、常々、あり得ないことだと思っています。
登らせていただくという謙虚さを忘れてしまっては、いずれ、この身に不幸が及ぶものと考えています。
なので、いつも、どの山でも登頂した際には、山名板や標柱、時には三角点に対して、敬意を払うよう心がけています。
2024/8/21 17:12
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藪犬☆moglessさん、こんばんは
200名山、300名山完登、どんなに大変なことか見当もつきません、
おめでとうございます。
目標を設定して、達成するその直前のお気持ち
謙虚になるということだけ、少しわかるように思います
そして満足しているとき、小さな虫と二人だけの静かな世界も
(自分に寄せて解釈しているだけ、かけ離れていることはお許しください)

とても素敵なエッセイ
昨年、自分の目標を歩いたので、歩くことの意味を見失いかけている近頃です
でもやっぱり歩くっていいな、と思いました
おすそ分けをありがとうございます☺
2024/8/22 23:01
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kayoさん、コメントありがとうございます。

蓮華岳山頂の直前まで、遮二無二突き進んできたのですけども、はたと足がとまりました。
100m先を見据えて、このまま、山頂に行ってしまってよいのだろうかと。
ゴールを目前にして、何年もかけてライフワークのように続けてきたことが、これで終わりなのかと思うと、なにやら、寂しい気持ちにはなりましたね。

あのテントウムシは、いつものように山頂で一人で三脚を出して記念撮影をした後に、近くに石に腰を下ろしてパンをかじっていた時に、膝の上にのってきました。こんなところにテントウムシがいるとは、不可解なこともあったものだと思っていました。今では、この邂逅は、大切な思い出になっています。

記念に、このテントウムシを新しいプロフィール写真にしようかとも思ったのですけども、永らく、ナキウサギがトレードマークになっているので、とりあえず、それは保留です。

この日記は、レコのほうに書ききれなかった素直な気持ちを書いたところですが、うまく書けたもんだと自画自賛しております。
読み返すたびに加筆修正したりして、内容が微妙に変化してたりします。
2024/8/23 15:48
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