津久井湖城山のムササビ観察会

2014年01月27日 09:48自然観察会全体に公開

津久井湖城山パークセンターの企画で、ムササビ観察会（いきもの語り）があるので、今月初めに参加を申し込み、でかけた。人身事故があって小田急のダイヤが乱れ、パークセンター研修棟到着が定刻の午後4時を10分くらい過ぎてしまい、センターの動物担当専門員の清水氏のスライド解説が終わりかけていた。げっ歯類専門家の同氏は最後のスライドで、ムササビの天敵の話をして、同氏が遭遇したムササビの死骸についてしゃべっていた。一つは胴体の内臓と肉だけが食べられて、頭としっぽ、手などだけが残されたもの、二つ目は肉が少し残っている毛の塊、一番目は、別の人が発見し、翌日連絡を受けて現場で遺体を収容したが、すでに痛んでいて異臭が酷く、十分調査を果たせずに冷凍保存しているという。

　ムササビを襲った可能性のある動物は、クマタカ、フクロウなどの猛禽類、アライグマ、テン、タヌキ、ハクビシンなどの肉食の哺乳動物だが、哺乳動物に襲われたようなかみ跡が見つからなかったらしい。クマタカは体が大きく、有力候補だが、城山付近では観察されていないという。しかしフクロウやトンビなどは体が小さく、比較的大型のムササビを襲って食べるということは、考えにくいのだそうだ。ただ、死骸が発見された場所が、テーブルとテー物の間とか、クマタカが獲物を引き込んできれいに解体して食べる習性があることに符合するので、可能性を否定できないともいう。まだまだ分からないことが多いのだそうだ。

　次に東京農大の大学院生の木本っさんが、ムササビのフンの調査から、そのホルモンを分析して、オス、メスの分布や行動の研究をしていることを報告。この城山公園の中でもフンを集める作業を行っているが、そのやり方などを話された。三番目に「リス・ムササビ・ネットワーク」の方がこれまでの城山でのムササビ調査の概要をスライドを使って話された。高校教師のムササビ研究家、篠原氏による巣箱や自然巣穴での営巣状況、巣箱巣穴のナンバリング、メスとオスの行動パターンの違い（メスはなわばりをもち、オスはメスを求め、放浪する）、城山一帯はおよそ100haくらいで、少なくとも4～50頭は生息するとみられる（理論的には１haに一頭）。自然穴、老大木が少ないので、巣箱の利用度が高いこと。えさが豊富なので大きな滑空をする必要が少ない。えさは植物食で、カシ、ドングリの実や杉の実、花など、木の皮なども食べる。げっ歯類なので前歯が二本でていて、食痕は鋭く切られている感じで、落ちている枝も、折れ口を見ればわかるそうだ。ムササビの天敵、生存上のリスクとしては、自然災害ーー城山は風が強く、台風で巣穴の歩きが倒されたり、落雷で大杉が焼けたり、ということがままあるが、これまで、自然災害でムササビが死んだいう目撃例は城山ではないそうだ。ブッポウソウ、ヤマガラ、オシドリなど、ムササビの巣箱から中にある毛などを失敬して自分の巣に持ち去るちゃっかり鳥もいるそうだ。ハクビシンは雑食性だが、アライグマは肉食で木登りもうまいので、ムササビを襲う可能性は十分ありそう。テンは体の小さいモモンガを襲う例があるそうだが、体の大きいムササビは不明。アオダイショウなどのヘビは卵を食べる。城山にはムササビや日本リスはいるが、モモンガの目撃例はまだない。峰の薬師にはいるという。多いのは奥多摩。ムササビのいない県は北海道（エゾモモンガはいる）、沖縄、千葉県だそうだ。ムササビは植物食なので、フンのにおいはなく、植物の香りが少しするらしい。漢方薬の原料になるそうだ。

　さて、5時過ぎになり、観察に出発。まだ少し明るい。昨日、主催者側で事前に下調べをしたら、メスをめぐって、オス数匹が激しい争いを展開し、5時過ぎから大きな声で鳴きあっていたという。そのため、今日は静かになり、出てくれるかどうか心配という。橋に差し掛かり、最初の巣箱の場所に出て、しばらく待つことに。観察には直接サーチライトを当ててはならず、赤いフィルムをかぶせて光を柔らかくして当てるのが適切という。赤い光を浴び、巣箱の中にムササビがいることは確かめられた。今日は月明かりもなく、ムササビ観察には適していないようだが、それでも巣箱から顔を出し始める。遠くで昨夜近くで鳴いていたというフクロウの声。別のムササビの声も聞こえるというが、なかなかわからないものだ。鳴き声の聞き分けは遠くだと難しい。しばらく、顔を出したり、中で毛づくろいをしたりしていたが、とうとう出てきて、巣箱の上に上り、木の上に向かって登っていく。途中、フンをしたらしいが、良く見えない。しばらくすると姿が見えなくなった。6時45分になり、次の巣箱やコナラの木のあたりを目指して少し登る。ムササビが現れる。今度はドングリなどを食べている様子。そして別のムササビも現れ滑空ーー赤いフィルムをかぶせたライトに照らされ、体全体が赤く光って見える。すばらしい姿だ――ラッキーーーそしてもう一度滑空ーー一度ならず二度も飛ぶ姿を見ることができた。滑空を見ることができ、主催者もホッとする。しかも二度も飛び、こんなに飛んでくれることはめったにないという。よかったよかったーー。その後も餌を求めて木の上を歩いていたが、やがて姿が見えにくくなる。6時過ぎ、観察を終え、暗い夜道を懐中電灯を照らして研修棟に戻る。途中、巣箱作成者の篠原先生が現れ、研修棟でお話を聞く。先生の巣箱は大変良くできていると評判で、かけてから48時間でムササビが入ったという記録があるそうだ。高尾山あたりではなかなか入らないらしいーーもっとも大木、自然巣穴がたくさんあるのではあるがーー。おさらいの話や質疑、標本の説明などがある。ムササビ標本は大学の博物館から借りてきたものだが、リスとモモンガの標本は清水氏が事故死したものなどを拾って標本にしたものだそうだ。残念ながら、写真技術の未熟さと装備不足から、望遠レンズでの写真撮影は不成功で、ムササビの写真はとれなかったが、今日はムササビの滑空を見ることができ、ラッキーだった。

写真1：農大のムササビ研究の院生の木本さんと標本
写真2：巣箱製作者の篠原先生
写真3：滑空前のムササビ（リス・ムササビネットの報告者の写真）

　

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