5月10日（土）古代オリエント博物館自由学校始まる

2014年05月17日 09:22講演会・研究会全体に公開

5月10日（土）古代オリエント博物館自由学校始まる

考古学を系統だって学ぼうと、い古代オリエント博物館の自由学校の講座を二つ申し込んだ。今日から１）メソポタミア文明の源流－先史時代のメソポタミアの学習ー２）中央アジア美術を探るだ。池袋のサンシャインビルに行く前にヤマダ電機によって、最近のタブレット型PCとICレコーダーを見に行く。

「源流」の講師は早稲田大学高等研究所助教の小高氏。過去何回か、発掘報告会で話を聞いている。今日は最初の導入で、イラクのテル・ベグム遺跡の発掘調査の経緯を話す中で、西アジア考古学の大枠を説明した。

　そもそも、メソポタミアは、肥沃な三日月地帯という文明発祥地点として、また1920～40年代、V.G. チャイルドの新石器革命とオアシス仮説という大きな枠組みが、ブレイドウッドの学際的な調査で覆されたことで、現代の西アジア考古学が出発していることを論じた。チャイルドは農耕と文明の起源が大河沿岸で発生するとしたが、実際に農耕の起源の証拠が出ていなかった。しかしブレイドウッドらがかせんから少し離れた上流の台地を調査すると、農耕や定住の具体的な遺構・遺物が出てきた。つまり、農耕と定住の起源は従来考えられてきた大河沿岸ではなく、もっと上流の山麓地帯であったことが実証された。従来とは異なるラインでの三日月となった。

　こうした大きな視野を踏まえて次にイラク、イラン、シリアなど中東地域の紛争の歴史の中で、考古学が発掘を続けていくことが困難で、1961年の発掘を最後にイラク・クルディスタン地域は長い長い紛争に巻き込まれ、長い間、考古学者が足を踏み入れることはできなかった。メソポタミアと言えばその中心がイラクであるが、学校で学んでも直接その地を踏むことができなかった。1960年代初頭から始まったクルディスタン地域の紛争で、発掘調査はストップし、以後もイランイラク戦争や湾岸戦争など、半世紀にわたって紛争が続き、メソポタミア考古学を目指す世界中の研究者も、イラクの地を踏むことすら容易でなかった。それが近年、状況が改善され、とりわけクルディスタン地域が自治政府のような扱いになり、自治政府の方針として考古学調査を積極的に受け入れるようになっている。クルディスタン地域自体も外務省の海外安全分類ではクルディスタン地域は渡航延期勧告地域、その他の地域の大半はバグダッドを含め退避勧告地域となっている。これまで小高氏が調査してきたシリアは真っ赤だ。そんな状態でもシリアで発掘調査をしていた世界各国の考古学者らを含め、少しでも可能性を求め、このクルディスタン地域の考古学調査誘致を受けて、欧米の学者たちによる発掘オリンピックのような状況になっている。鳥明け安全性がより高いスレイマニ－ヤ地域に発掘が集中している。小高氏が参加するテル・ベグム遺跡もスレイマイーヤ地域だ。シリア時代に知り合ったオランダ・ライデン大学の土器専門家、ニュウエンハウゼ氏が調査体調で、調査主任に同大学でアッカーマン教授の下で研究している金田明美氏と、両氏に声をかけられて参加することになった小高氏。金田氏は本来は陶磁器が専門なので発掘調査を指揮したことはない。ニュウエンハウゼ氏も土器専門家で発掘自体の指揮をとった経験に乏しいので、同じく土器専門家であるが、欧米のように極度に専門分化した教育をしていない日本で考古学を学んだ小高氏は発掘経験も豊富なので、発掘の指揮を執ることになった。またクルディスタン政府側から、文化財局のカマル・ラシード（以前、イラク政府の文化財局に勤務していた経験あり）と同査察官のザナ・カデルが参加。査察官とは発掘調査が適切にルール通り行われているかなどをチェックし、違法な遺物の持ち出しや売買などが起こらないように規制する仕事だそうだ。ニュウエンハウゼ氏は、この調査に先立って2011年にテルベグムでの表面採取を行い、土器破片を採取している。元来、2009年にドイツのハイデルベルグ大学とスレイマニヤ文化財局とで行われた「シャハリゾール・サーベイ・プロジェクト（SSP)」という、シャハリゾール郡に存する遺跡群と
古環境復元調査を含む学際的な調査として始まり、その後、調査隊長のシモーネ・ミュール女史がミュンヘン大学に移り、ドイツに加え、オランダ、イギリスの大学が加わり、国際調査となった。来年はここに日本の旗もたつ可能性があるという（日本からの学術調査費調達がでそうということか？）。半世紀ぶりの発掘調査になり、文化財局担当者も大半が未経験、初めての発掘調査になる。テル・ペグムは元々ダム湖に沈む予定だったのだが、実際には水が来なかったのだそうだ。この地域の発掘の歴史は1960年にイラン文化財局が発掘調査を行い、1997年にI．ヒジャラが部分的な報告書を公表、1960年代の発掘時の遺物の一部は、ケンブリッジ大学のジョン・オーツという著名な研究者に贈られているが、当時の調査報告書は残っていないそうだ。2011年にはSSPで体系的な表面遺物採取を行い、これらの結果、SSPに土器専門家として参加していたニュウエンハウゼがテル・ベグム遺跡での発掘調査を立ち上げることになった。2013年度の最初の調査は、8月から始まった。夏休み一か月を利用した60年代の発掘調査のトレンチ跡をチェックし、今後の本格調査のための準備作業を行ったという。今回は昨年暮れに小高氏が報告したテル・ペグム発掘調査の紹介を通して、メソポタミアの先史時代研究の導入とした。次回からは古代オリエント考古学入門のテキストを使った講義となる。

　

2014-05-09 5月6日、「学芸員が語る山岳映

2014-05-19 5月15日江戸博講座「浮世絵師

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