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旧石器時代の遊動生活の中では、高齢者はその激しい移動についていけなくなり、北米インディアン社会などに見られるように、ある日、「引退」がやってきて、人々の移動から離れ、消えてゆく――日本の「姥捨て」ではないが、高齢者は早めに引退していく社会が「定住」により、大きく変化し、「高齢者の知恵」が尊重され、知識の集積、蓄積が起こり、「知の爆発」が起こっていく、そんな準備期間が縄文かもしれない。
相模の「大山」は大昔から神の宿る山だったーー相模の国の各所から見える大山の美しい姿−―山そのものが神様だったーーその山々から登る朝日、沈む夕日に神様を見たーーそういう精神世界の痕跡が列島各地にあったーー秋田県・大湯の環状列石（ストーンサークル）から見る山々と太陽ーー夏至や冬至にストーンサークルの中心と中心を結ぶ線上に登る太陽、沈む太陽を見るために人々が集まってくるーー青森県大森遺跡から見る岩木山と太陽、三内丸山遺跡の六本柱の間から見る夏至・冬至の太陽ーーそのような山々と太陽の視覚体験、精神的な体験は日本各地にその痕跡を見る音ができる。ーー長野県各地、群馬県各地の縄文や旧石器遺跡の場所から見るアルプスや八ヶ岳、赤城山や榛名山など、それば私自身も体験したことだったーー。
その時代、日本列島で生活した人々がどのような言葉を話したのかを知る方法は今のところないのだが、少なくとも、ヒトやモノの移動、共通する遺跡のプラン、共通する土器、ヒトとモノの移動と交流状況を考えると、少なくとも言葉が通じ合っていた、通じる言葉を持っていたことは明らかだ。各地で異なる言葉であっても理解しあえる言葉も持っていたーーそれは、東北から沖縄まで、考古学調査から推測できるのだ。朝鮮半島により近い津島でも縄文文化はあったが、朝鮮半島にはない−―文化が違う、言葉が違う、朝鮮半島と日本列島は古くから交流があったことは確実であっても、そうした歴史、人間社会の文化的な境目があったことはたしかだ。「浮世絵」を生み出した日本社会は、その数千年前には「縄文土器」というすばらしい「芸術作品」を製作していた。そうした日本文化のユニークさは、縄文の人々の視覚体験、精神世界、「ビジョン」の積み重ねとそれらを表現する「ことば」により、伝承され、積み重ねられていった、そうしたことを縄文研究から学ぶことができると小林氏は説いている。中々含蓄の深い話だった。
写真１）小林達雄氏（國學院大學名誉教授）
写真２）群馬県道訓遺跡から見る赤城山
写真３）土偶は何を語る？
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