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2014年08月16日 01:36博物館、展示会、美術館など全体に公開

日本発掘2014展講演「旧石器」と文化庁調査官による展示解説

恒例の「発掘された日本」展だが、今年は、始まってから20周年で、「日本発掘2014」と題して、江戸博6階では20年間のハイライトの重要遺跡の展示、5階では、この二年間の重要発掘成果を展示している。
江戸博の学習イベントで、展示に関連した連続講座が組まれ、今日は最初の「旧石器」に関するもの。講演は現在明治大学黒曜石研究センターの所長で、これまで日本考古学協会や日本旧石器学会、アジア旧石器協会などをけん引してきた小野昭氏。旧石器時代の考古学研究の二十年は、なんといっても2000年に発覚した「ねつ造」問題とそれをどう乗り越えるかが、最大のテーマだった。これまで長い間に築いてきた日本の考古学への信頼を失墜させた衝撃的な事件をどう総括し、何を学び、立て直すのか、日本考古学協会は特別委員会を設置しての検証作業を行い、事件の反省の上に立って旧石器学会を創設、さらにアジア旧石器教会を設置するなど、様々な努力を払い、足元の現場、全国動向、国際的動向の三つのレベルを一体的に把握するよう努め、若手研究者の国際学会への発表、国際学術誌などへの発表などを進めてきたという。特に日本列島の旧石器時代研究のこの10年間はアフリカに起源を発するホモサピエンスが東アジアまでどのように拡散、到達してきたのかという世界的な研究動向とリンクさせて議論を展開させてきたという。

 また酸素同位体の分析手法などが進み、地球の気候変動がより精緻に分析され、人類の石器時代の大半が、現在より厳しい過酷な変動の中で現在の人類文明の基礎がつくられたらしい。ねつ造事件の懸賞の中で、日本の後期旧石器時代の遺跡の数が多い年で年間一万件を超え、世界的に見ても非常に多い。その中で、とりわけ重要な遺跡発掘に関する展示を今回行っている。世界的な黒曜石鉱山であった北海道の「白滝遺跡」、蛇紋岩製の大量の磨製石斧などの製作工房を持つ日向林遺跡、同じく環状ブロックを持つ集落跡と考えられる下触牛伏遺跡、田名向原遺跡など、石器以外の遺構、遺物の残りにくい旧石器時代遺跡として貴重だ。また黒曜石の化学分析の進展から、その原産地と移動の様子が詳細にわかるようになってきている。例えば伊豆七島の神津島の黒曜石が全国各地から出土していることから、後期旧石器時代における船による移動があったことが確実になっている。これはオセアニアなどへの人類の移動問題にも関係する問題だ。また白保竿根田原洞穴遺跡(沖縄)における二万年前とみられる日本最古の人骨とDNA分析(南方系要素が強いらしい)など、人骨や動物の骨、住居跡など、石器以外の遺物、遺構などが注目されてきている。なお、今回の「日本発掘」展では20年間のハイライト展だけでなく、5階展示場ではここ二年間に発掘された注目すべき遺跡の展示も行われ、十分見どころの多い展示となっている。

講演の後、4時からは文化庁の担当調査官による展示解説も行われた。

写真1:青森県風張遺跡出土の「合掌土偶」(国宝)
写真2:宮内庁所蔵でめったに見られない天皇陵出土の直弧文鏡と家屋文鏡(この展示に限って、文化庁管理のため、撮影が許されている
写真3:最古のひらがなの書かれた土器発見(平安京跡)
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