【2011年】北アルプス縦走(折立〜雲ノ平〜槍ヶ岳〜上高地)
- GPS
- 104:00
- 距離
- 51.9km
- 登り
- 3,614m
- 下り
- 3,451m
コースタイム
- 山行
- 8:50
- 休憩
- 0:05
- 合計
- 8:55
- 山行
- 7:10
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 7:50
- 山行
- 6:20
- 休憩
- 1:00
- 合計
- 7:20
- 山行
- 1:45
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 1:45
過去天気図(気象庁) | 2011年07月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
新潟−富山(JR特急きたぐに) 富山ー折立(富山地方鉄道バス) 【復路】 上高地ー新島々ー松本(アルピコ交通) 松本ー長野ー越後川口ー新潟(JR在来線) |
コース状況/ 危険箇所等 |
1日目 折立から入山〜太郎兵衛平〜薬師峠キャンプ場 2日目 薬師峠キャンプ場〜雲ノ平〜三俣蓮華岳キャンプ場 3日目 三俣蓮華岳キャンプ場〜西鎌尾根〜殺生ヒュッテキャンプ場 4日目 槍ヶ岳山頂往復〜槍沢〜徳沢キャンプ場 5日目 上高地へ下山 |
写真
感想
***仕事の関係で新潟に在住していた時の山行記録です***
この三連休、前後に一日づつ休みをプラスして4泊5日のプランで北アルプスを縦走した。北アルプスは全般にコースが明瞭だし、セーフティーネットとしての山小屋も充実している。ソロ山行にはうってつけのフィールドだと思うし、一度はガツンと日本でもっともメジャーな山域を思いっきり歩いてみたい、という願望をかねてから抱いていた。
梅雨明け10日間は一年の中で最も天気が安定していると言われるが、目論見通りの晴天が連日続き、ストレスフリーな縦走登山を楽しむことができた。ただひたすらに歩き、たどりついたテント場に幕営し、夕陽で赤く染まる山や雲を眺めながら、静かに一日の終焉を迎える。歩いて、食って、寝る、というシンプルな生活を過ごしたいという単純な欲望を満たす為にはそれなりの大きなフィールドが必要だ。
北海道の山々に馴れ親しんできた自分にとって、大雪山に代表されるような、山の高さより広がりを好む志向が強くある。その点、北アルプスの最深部である雲ノ平という広大な高原地帯は魅力的な存在であるし、3000m級の山々の間を縫うように続くトレイルは水平移動願望の強い者にして、理想のフィールドと感じられたのだ。
稜線や山頂を目指さずに渓や峠を歩くことをその目的としたが、ロングトレイルのアクセントとして、何処から見ても「ツン」と尖った絶対的な容姿を見せ付ける槍ヶ岳のピークだけはできれば踏んでみたいな、と、おぼろげに思いつつ山に分け入ったのだ。
Day1:薬師岳登山口〜薬師峠キャンプ場(5時間)
縦走登山の始まりは薬師岳の登山口から。現地までのアクセスは新潟22時58分発、大阪行きの急行きたぐに。富山駅で途中下車したのは午前2時を少し回ったところ。早朝5時の折立行きのバスをベンチで仮眠しながら待つ。大阪からの深夜列車が富山駅に到着してからはわかに登山客が増えだした。そこから折立へのバスはなんだかんだと満席状態。この日がこのバスの季節運行初日であった。
標高1350mから登山開始。バスでアクセスした人に加え、自家用車組もあわせて登山口は結構な賑わい。天気は快晴だが、これくらいの標高だと気温は25度以下。下界の蒸し暑さは感じられない。豊かな樹林帯を高度を稼ぎながら2時間ばかりで三角点のある見晴らしのよいポイントに躍り出た。有峰湖や立山方面の眺望が良い。剣岳もその山頂部だけだが確認できた。
高層草原の中を石畳のように整備されたトレイルや木道を歩くのは気持ちが良い。ニッコウキスゲの黄色もちらほら。残雪を纏った遠くの山の白い稜線と、草原の緑のコントラストがいかにも、夏だねぇ・・・なんて酔いしれながら更に2時間程で太郎平小屋。
この小屋は大雑把に云ってしまえば、北側に薬師岳、南には黒部五郎岳、西方面には雲ノ平へと続く道がクロスするジャンクション。山行の要所ともいえる山小屋でキャンプ利用の手続きを済ませ、ちべたーいビールを仕入れる。
太郎平小屋からキャンプ場へは木道を薬師岳方面へポクポク歩いて15分。既に何張りかの先行者がテントを設営していた。なるべくデコボコの少ない平らな場所を選んでテント設営。グラウンドは固く、ペグが利かないので張り綱は石で固定する方式だ。これからテントで4泊する訳だが、ペグが使えたのは草原のキャンプ場の徳沢だけであとは石を利用したテント固定となる。こんなキャンプ場ならやはり自立式のテントが安心だ。薬師岳峠キャンプ場には水場とトイレあり。こじんまりとしているが風さえ吹かなければ快適なキャンプ場だろう。午後になると次第に雲がモクモクと姿を現したが終日天気は晴れ。これからの天気にも期待できそうだ。
この日は前日の夜、就業後に深夜列車とバスを乗り継いで現地入りだったので、ほとんど寝ていない。さすがに疲れた。簡素な食事を済ませ、持参したモルト酒を頂いてから、まだ日のあるうちに寝袋にもぐりこんで曝睡してしまった。
Day2:薬師峠キャンプ場〜雲ノ平〜三俣蓮華キャンプ場(9時間)
朝4時起床、出発は5時30分。撤収に1時間半もかかってしまった。スピーディーに撤収作業が進むようになる頃にはこの旅も終盤戦になっていることだろう。長旅ではいつもそんな感じ。バックパッキング中の朝はコレといった飯を摂取せず、湯を沸かしてコーヒーとSOYJOYとかカロリーメイトをモソモソと食っておしまいというパターン。余ったお湯をアルファ米の袋に注ぎしっかりジッパーを閉じ、バックパックに納めておいて道中適当な場所で食べる、というのがいつものスタイル。こうすると特にゆっくりと腰をおろして昼食を調理する手間が省ける。いわばおにぎり的な感覚。もちろん気が向いたときや時間に余裕がある時は別途インスタントラーメンを作って食べたりもするが。
さて、今日はいよいよ山旅のメインステージの一つである雲ノ平。朝から願ってもない青空がフレーム一杯に広がっている。太郎平小屋へと引き返す木道からは槍ヶ岳の穂先が遥か遠方に望まれる。あの向こうまで歩くのか、と思うと否が応でも気分が盛り上がる。太郎平小屋の分岐を雲ノ平方面に進むと高度は一気に下がり、沢沿いのトレイルへと続いて行く。薬師沢の水は何処までも美しく、ほとばしる水滴の一粒一粒に生命が宿っているかの如く自在にその姿を変化させ歓喜の声を上げながら下流へとすっ飛んで行く。
沢に架かる橋から川原に降りちょっと一服。ブーツを脱ぎ捨て足を沢の水に浸けると、キィーンとアタマに響くほどに冷たい。くうぅ〜〜ッ・・・素足で一分も我慢すれば十分な罰ゲームである。
小沢の徒渉と木道が交互に続くトレイルを進むとしばらくして薬師沢小屋に到着。ここらの沢は増水すると徒渉が困難になるというから、歩く前にあらかじめ情報は入手しておきたい。
小屋前のベンチで小休止。仕込んでおいたアルファ米を食べ、なっちゃんオレンジ(400円)を購入。飲むとビタミンCが身体に浸みる。そして半分くらい飲んだところで小屋の水を継ぎ足し延命させるというミミッチさ(トホホ・・・)。
さて、ここからは北アルプスの奥座敷、憧憬の雲ノ平へと渓から台地へとよじ登る訳だが、この急坂は聞きしに勝るものであった、とだけ書いておこう・・。息急き切って雲ノ平に出てみればハイマツとお花畑の高原台地を取り囲むように、黒部五郎岳、鷲羽岳、水晶岳、赤牛岳、薬師岳・・・北アルプスの名峰がどどーんと。雲ノ平にはアラスカ庭園、ギリシャ庭園、スイス庭園、日本庭園といった魅力的な名称が地図上に散りばめられている。本当にそうなのか?名前のイメージと実際には乖離はないのか・・・?なんて無粋なことは言わず、ここは「ほほぉ〜」と素直に喜ぶのがスジというもの。
雲ノ平のテント場は山小屋と距離にして20分くらいの位置関係だが、それゆえに静かな野営が楽しめそうな好立地である。今日はここにテン泊でも良かったが、時間はまだ正午前。歩く時間は十分あるので次のキャンプ場まで進むことにする。祖父岳の巻き道を進みハイマツのトンネルをくぐり抜けると、黒部五郎岳、三俣蓮華岳が手に取る程の位置に感じられる。そして点のような存在であった槍ヶ岳がこれまでとは桁違いな迫力の山容を見せつける。北鎌尾根から槍のピーク、そして穂高へとナイフの刃先のような急峻な稜線が連なる様には容易に人を寄せ付けない威厳と気迫が感じられた。
トレイルは第一雪田、第二雪田と雪渓を渡り、この辺りから目指す三俣小屋の赤い屋根が見えているのだが、実はここからがキビシい道程で、一旦黒部の源流部へと下りそこから再び登り返すという、既に8時間近く歩行している身にとってはムチ打つツラさなのだ。
あまりのハードさに渓へ下った所で大休止。小腹も空いたし、今日の行程の目処が立ったところで黒部源流の水で調理したのはその名も黒部源流ラーメン。味はさぞかし格別!・・・と思いきや、いつものマルタイ棒ラーメンのいつもの味だった。
三俣蓮華のテント場はすぐ脇を雪渓の溶け水が流れ、地面がフラットな理想のキャンプサイトだ。メインのテン場からハイマツを隔てたプライベート感漂うポイントにテントを張った。雲ノ平からはあまりパッとしなかった鷲羽岳も、ここから見上げると、どっしりとした風格を備えた山で、夕陽に照らさたその容姿は品格さえ漂うな、と感じた。
思えば今日が三連休の初日。夕暮れも近くなって各方面からの登山者でキャンプ場も賑わってきた。どかっとエリアを拡げてキャンプサイトを占有できるのもここまで。他のキャンパー達に場所を譲るべく、辺りを整理してからテントへと潜り込んだ。
Day3:三俣蓮華キャンプ場〜西鎌尾根〜殺生ヒュッテキャンプ場(8時間)
縦走3日目の朝。行動開始は朝6時。なぜか撤収に2時間もかかってしまった。慣れるにしたがい撤収の高速化がなされるはずなのだが・・・昨日より遅いぞ。なんでだろ?まぁ良い、今日も朝からあきれるほどの日本晴れなのだから。
三俣のキャンプ場に別れを告げ、30分ほどで三俣蓮華と双六方面への分岐(三俣峠)。もう少し登れば三俣蓮華岳の山頂であるが、今回は山頂には拘らないので迷わずこの分岐から双六岳の巻き道を選択する。双六の東斜面は雪渓が多く残っており、スノーブリッジを渡る時には若干の注意が必要。
分岐から2時間で双六小屋とキャンプ場。広々としたキャンプサイトは地面もフラットでなかなか快適そうだ。双六小屋前には今まさに出発しようと準備中の登山者がたくさん。今日の目的は槍ヶ岳?それとも雲ノ平?新穂高温泉からのアクセスだと、この小屋がちょうど良い登山基地になるため人気だという。そしてこの辺りからカラフルなウェアに身を包んだ山ガールが急増。新潟のローカルな山ではありえない光景にちょっとしたカルチャーショックを受けた。
双六小屋を後にいよいよ槍ヶ岳へと続く西鎌尾根にアタックだ。樅沢岳の頂上に登ると(ここまで歩いて唯一のピークなのだ)西鎌尾根の向こうにそびえる槍ヶ岳とその対角に立つ笠ヶ岳が特に美しく望まれた。
尾根を渡る心地よい風を感じながら千丈乗越と槍ヶ岳を見上げる。ハードな登りはこの辺から本格的になり、クサリ場もちらほらと現れる。千丈乗越からはひたすらガレ場の急斜を登る。高度が上がるごとに斜面の角度も増す。日射は強烈だし、照返しも相当なもの。リップクリームを忘れてしまったのでクチビルはもうボロボロだ。休み休み、少しづつ登る。その度に同じ登山者と抜きつ抜かれつ・・・次第に妙な友情のようなものが芽生えてくるのが面白い。ここまでくればもう、荷物が重いとか、ここまでどれだけの距離を歩いてきたかなんて関係ない。とにかく体力勝負だ。程なくして槍の肩に建つ槍ヶ岳山荘に到着。
よくもまあ、こんな急峻な岩山に山小屋を造ったものだと素直に関心した。テント指定地には岩場に空いたわずかな平坦地にゲージュツ的に幕営されている。段差を利用したテント場は個性的で面白いな、と思ったが収容できるテント数には限りがあり、連休中日のこの日は既に満場となっていた。
さて一方、槍の頂上へと向かう登山者は今まさにピークの状態で、大勢の登山者が鈴なりとなって頂上へと隊列を成している。これでは登山というよりテーマパークのアトラクションである。行列に並ぶのが大の苦手な僕は、早々に諦め(明日の朝に期待だ)テン場を求めて殺生ヒュッテへ。槍ヶ岳山荘から標高にして180m程度下ったこの小屋のキャンプサイトにはまだスペースがありそうだ。
無事テントを張り終えしばらくすると雲が槍ヶ岳を隠し始めた。3日目の夕方にして初めて空の大半が雲に覆われた訳だが、明日の槍ヶ岳アタックにも一抹の不安が・・・。
Day4:殺生ヒュッテキャンプ場〜槍ヶ岳往復〜槍沢〜徳沢キャンプ場(7時間30分)
4日目の朝。テントから上半身を乗り出し、身を捩って槍の穂先をパシャリ。朝日に照らされた槍ヶ岳。今日も良い感じの朝だが予報によると天気は下り坂。ラジオで知る限りではどうやら台風も近づいているらしい。
テント以外の装備をバックパックに収納してそのまま放置し、身支度と頂上までのピストンに必要な道具をバックパックのリッドに詰め込んで槍ヶ岳山頂へと向かう。パック本体からリッドを取外すとウェストバッグになるギミックはこんな時に便利だ。
頂上へは昨日の混雑具合からすると今は余裕の状態。御来光の時間には遅いし、ある意味プライムタイム。見下ろすと高度感満点だが、クサリやハシゴを慎重にクリアすれば難しいことはない。20分程度で頂上へ。人生初の3000m峰の頂きに立つ。遮るものない360度の絶景パノラマは、さすがに素晴らしい。
頂上で絶景を堪能した後、キャンプ地に戻りテントをバックパックに納めてからリスタート。夜露にぬれたテントはもうすっかり乾いている。槍ヶ岳を背にして槍沢沿いを一気に下る。ガレ場の下りは苦手なのだが、このトレイルは案外歩きやすかった。登山者の数が多く、その分しっかり踏み固められている為か、浮石もあまりなくて快適な下り坂。沢沿いの道が続き、天狗原分岐辺りからは斜度も緩やかに。
更に平坦な道を徳沢へと歩く。歩きやすいトレイルの場合、個々の歩行スピードさほど差がつかないので、知らぬ間に他の登山者と抜きつ抜かれつのデッドヒートになりがち。徳沢でキャンプ予定の僕は特に急ぐ必要はない。途中でスピンアウトし梓川の川原で休憩。水入り、といったところだが、ラーメン用の湯を沸かしているとポツポツと空から雨粒が・・・本当に水入りになってしまった。
更に歩いて徳沢着。おしゃれなレストランや小奇麗なみやげ屋。ちょっとした山岳リゾートを味わえる一級の観光地、といった印象だ。
徳沢のキャンプ場は一面の草原。雨が降ったり止んだりで忙しかったけど、気持ちの良いキャンプサイトだ。キャンプだけが目的だとしても十分に満足できるリッチな立地(・・・苦笑)。それにキャンプ場から歩いてすぐの徳沢ロッジの風呂は最高!宿泊客以外でも利用できるのがありがたい。開放される時間は要確認だけど(午後4時頃〜となっているようだ)4日ぶりの湯船は入湯料400円以上の値はあったと思う。なにせ明日は公共交通機関を乗り継いで帰宅せなばならない。汗と埃にまみれた身体を洗い少しはこざっぱりとしなくちゃね。
湯上りにはおきまりのビールをプシュっと。良い気分でボケーッとしていると雨は本降りに。干していた衣類を取り込み、とっても幸せな気分でスリーピングバックに潜り込んだ。
Day5:徳沢キャンプ場〜上高地(1時間45分)
北アルプス縦走最終日は雨。キャンプの撤収時間は1時間。4泊目の朝にして、やっと本領発揮の素早さ(?)。なんてことはない。雨が降っていると濡れまいとして行動が早くなるだけのこと。
装備をすべてバックパックに収納してパックカバーを装着。これまで全く出番のなかった上下のレインウェアを着込み、旅のゴールに向けて歩き出す。ヒートアップした心と身体を雨でクールダウンしつつ観光客に紛れて上高地バスターミナルへと向かった。
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