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2018年08月29日 17:02📖私の覚書📖全体に公開

熊鈴のこと

先日の奥穂高岳登山の折。徳沢から横尾へ向かって歩いていると、対向から来た女性が、すれ違いざまに挨拶もせず無言まま、両手で自分の両耳を塞ぎながら通っていった。

最初、何の事だか分からなかったが、果たして、私が付けていた熊鈴が耳障りとでも言いたいのか。先に言っておくと、すれ違った場所は今年の8月10日にツキノワグマが目撃された場所だ。もちろん、その女性は鳴物は一切付けていなかった。

山は熊の生息域。姿が見えないからいないのではない。いるんです。ニンゲンが接近したことを察知して、物陰に身を隠して息を潜め、ニンゲンが通り過ぎるのを待ってくれているのです。単に人前に姿を見せないだけ。ニンゲンがその存在に気が付かないだけ。

ニンゲンが大勢いれば、熊は出ないのか? 2009年にはシャトルバスが発着する乗鞍岳畳平に熊が現れた。熊が出ないのは、山小屋の中だけ。登山道もテント場も山である以上、熊は出ます。熊に限らず、ニンゲンと同じで動物も歩きやすいトコロを歩きます。だから、登山道で目撃されるのです。

耳を塞ぐ女性とすれ違ったのは、熊が活発に活動する時間帯であり、熊がよく出没する沢沿いであり、熊が身を隠せる樹林帯の中であり、まして、ごく最近の真昼間に目撃情報があった場所。鈴だけでいいんです。過度な装備は必要ありません。私は鈴だけで、一度もツキノワグマやヒグマに遭ったことがありません。他の動物は鈴を付けてても出てきます。雷鳥も、ナキウサギも、鹿も、猿も、リスも、カモシカも。

観光客でゴッタ返す乗鞍岳畳平に現れたツキノワグマは、登山用ストックで顔面を殴打された後、殴った者を含む9人に重軽傷を負わせて、売店に逃げ込んだところを射殺された。熊は積極的にニンゲンを襲ったりはしない。ニンゲンの接近に気づけず、不幸にしてニンゲンと出会ったしまった熊は、自分の身を護ろうとするだけ。ただ、力の差が圧倒的なだけに過ぎない。

ツキノワグマは九州ではすでに絶滅し、四国では50頭もいないと言われる絶滅危惧種。登山道に出没するニンゲンを傷つけた危険な熊は、その後どうなる? 熊の出没が想定される登山道で、熊鈴に耳を塞ぐ行為の行きつく先にあるもの。それは、血を流して横たわるツキノワグマの亡骸だ。個体数を減らさないためにも、クマ除け対策は必須でしょう。これ以上、熊が不幸な目に遭わないために。

自然に親しむのであれば、自然の中で生きる者に対して敬意を払うのが道理であると考えています。熊がニンゲンに遭いたくないのであれば、ニンゲンが熊の存在を察知することが困難である以上、鳴物で熊に対してニンゲンの接近を知らせてやることが、自然の中に生きる者への礼儀であると私は考えています。

ちなみに、一番、左の写真は、上高地バスターミナルの登山届ポストの近くに掲示してありました。この山域では提出が義務化されている登山届を出しに行けば、自然と目に入る位置にです。耳を塞いだ者は、この掲示物を目にすることは無かったんでしょうか。
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