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計画段階（昨年末）で、高崎から上信電鉄のレンタサイクルを使って回る方法や、歩きとバスなどを使う方法を比較検討し、最終目的地、群馬の森（歴博）へのアプローチのしやすさを考え、倉賀野駅でチャリを借りつ方法を選ぶ。
倉賀野駅の駐輪場でレンタサイクルの手続きを行い、8時過ぎに出発。久しぶりのチャリツアーで首尾よく時間通り回れるか、やや不安ーー最初に浅間山古墳は、駅から東国歴史街道を走ると前方に白くなった浅間山ーーなるほどそれで浅間山古墳？経―街道から浅間山古墳はすぐそれとわかるが、どこからアクセスするかでナビを信じて間違う。裏側に出て畑の奥から墳丘に上がるが、墳頂上は薮で、看板、碑もなく表側を下って街道に近い側に石柱と解説板があった。
「浅間山古墳は、墳丘全長171.5メートルの前方後円墳です。前方部は2段に造られていて、長さ66.3メートル、高さ5.5メート、後円部は3段に造られていて径105メートル、高さ14.1メートルの規模があります。後円部に比べて前方部が小さいことが特徴です。墳丘の周りには平面が盾形をした内堀があり、その外側には中堤と外堀があることがわかっています。
発掘調査などで、円筒埴輪の破片や剣形の石製模造品が確認されています。
前方部が小さいこと、盾形の堀をもつこと、確認されている埴輪の特徴から、4世紀後半に造られたと考えられています。」
浅間山古墳は、群馬県内で太田市の天神山古墳に次いで第2位の規模を誇り、築造された当時は東日本最大の古墳でした。（高崎市ホームページより）
そこで撮影して再び墳丘を越えて、畑の自転車に戻る。こうした軽いミスが重なると、予定が少しづつ遅れてトラブルになりがち。次の大鶴巻古墳に進む。後から地図を見ると、ショートカットコースがあったようだが、少し大回りして接近、最初に古鶴巻古墳をチェック、次に大鶴巻古墳手前にチャリを止め、墳丘に登る。墳丘上は、360度の見晴らしで浅間山、赤城・榛名・上越国境・前日光などの山々を見渡せる。なるほど、さすがの景観、このあたりは古墳・古代の古東山道＝古代最大の国道＝付近の交通要所を抑える豪族とヤマト王権の連携を感じさせる景観だ。
「大鶴巻古墳は墳丘全長123メートルの前方後円墳です。前方部は長さ51メートル、高さ6.5メートル、後円部は直径72メートル、高さ10.5メートルの規模があります。後円部に比べて前方部が小さく、浅間山古墳を2／3に縮小した形であることが指摘されています。2段築成と考えられていますが、後円部は3段築成の可能性もあります。墳丘のまわりには、平面が盾形をした周堀があります。墳丘の形や採集された埴輪から、4世紀後半に造られたと考えられています。
大鶴巻古墳に接して小鶴巻古墳があります。墳丘全長が約87.5メートルで、大鶴巻古墳よりやや小型です。浅間山古墳の1／2であると指摘されています。後円部墳頂では、凝灰岩製のくりぬき式石棺が確認されていることから、5世紀後半頃に造られたと推定されています。」（同HP)
次に山上碑を目指す。烏山川を渡ると、上流方向に浅間山・妙義などの山々が見える。道標に従い、山上碑を目指すが、一段下の集合住宅の道路を走り、途中で一段上の道まで階段をチャリを4担いで登るーー。その先すぐに山上碑下に出て、休憩所で行動食を補給し一息。付近にチャリを置き、階段を上って石碑と古墳を見学。特別史跡（国宝と同じ）と世界記憶遺産となってからは初めての訪問。覆い屋の外から観察し、押しボタン式の解説を聞く。古墳の石室内は狭いが入ることができ、奥には中世の石造物が安置されている。おそらく古墳は山上碑の建立者、放光寺僧の長利の一族と思われる。無論1世代以上石碑が新しい。
山上碑は681年建立、母の追善供養碑でほぼ完形で出土した石としては最古。宇治橋断碑は642年以降でおそらく最古だが、文章全体は読めるが3石全体の分の一しか残っていない。山上碑から金井沢碑に向かう。チャリがなければここから歩きたいのだが、今回は遠回りでチャリで向かう。いったん標高差60mくらい下り、県道30号線に戻り、緩い坂を上っていく。標高80mくらいから金井沢碑入口を左折し、標高差20mくらいを登る。緩い坂だが、ママチャリだと結構きつい。金井沢碑の駐車場に下り、遊歩道を進むとすぐに石碑覆い屋がある。この石碑も自然石をほぼそのまま利用している半島風だ。
「金井沢碑は、奈良時代前半の726（神亀［じんき］3）年に三家氏［みやけし］を名乗る豪族が、先祖の供養と一族の繁栄を祈って建てた石碑です。三家氏は、佐野三家［さののみやけ］を管理し、山上碑［やまのうえひ］を建てた豪族の子孫であると考えられます。
碑文には、三家氏を中心とした9人の名前が記されています。碑を建てたのは三家子□（□は欠字）という人物で、上野国群馬郡下賛郷高田里［こうずけのくにくるまのこおりしもさぬのさとたかだのこざと］（現在の高崎市上佐野町・下佐野町周辺か）に住んでいたようです。続いて、三家子□の妻と娘［物部君［もののべのきみ］氏に嫁ぐ］、孫3人の名前が登場します（グループ1）。この6人ほか、同族とみられる三家毛人［みやけのえみし］・知万呂［ちまろ］の兄弟と礒部君身麻呂［いそべのきみみまろ］の3人の名がでてきます（グループ2）。
碑文からは、女性が結婚後も実家の氏の名で呼ばれていること、子供達と共に実家の祖先祭祀に参加していることがわかり、家族のつながりに女性が大きな役割を果たしていたと考えられます。
さらに、地名の表記などからは、当時の行政制度（国郡郷里［こくぐんごうり］制）の整備状況が分かります。ちなみに、碑文に出てくる「群馬」の文字は、県内では最古の事例であり、群馬県の名前のルーツを知る上で非常に重要な資料です。
このように、金井沢碑からは、古代東国での仏教の広がり、家族関係、行政制度の実態などを知ることができます。」（上野三碑＝こうづけさんぴ＝高崎市HPより）
ガラス越しの撮影は難しいが、なんとか撮影し、解説放送を聞いて休憩所まで戻る。少し補給し、さらにチャリで多胡碑に向かう。
すぐ先に山上碑からの遊歩道があり、別の機会に歩いてみたいと思う。ここから少し先に山越えの階段があることも確認できた。さて、ここからさらに登り、標高142mの中山峠を越えねばならない。40mの差は普通は大したことはないが、ママチャリで病み上がり、運動不足の状態ではやはりきつい。次第に腿が上がらなくなり、ふらふら走りながらも何とか峠まで走り、やっと下り、多胡橋に出るー再び烏川を渡り、多胡碑記念館付近の公園に出る。チャリを駐輪場に置き、多胡碑を見る。
「多胡碑は、奈良時代初めの和銅［わどう］4（711）年に上野国の14番目の郡として、多胡郡が建郡されたことを記念して建てられた石碑です。
建郡に際しては、「羊［ひつじ］」という渡来人［とらいじん］とおもわれる人物が大きな役割を果たし、初代の郡長官になったようです。碑を建てたのも、この「羊」であると考えられ、碑の後段には当時の政府首脳の名を挙げて権威付けをはかっています。
多胡郡の範囲は、現在の高崎市山名町から吉井町一帯で、かつて緑野屯倉［みどののみやけ］や佐野屯倉［さののみやけ］というヤマト政権の直轄地が設置されていた領域と重なります。そのため、当時は先進的な渡来系技術が導入され、窯業［ようぎょう］、布生産、石材や木材の産出などが盛んな手工業地域になっていました。
このことから、多胡郡建郡は当時の政府による生産拠点のとりまとめと、それに伴う郡の区割りの見直しが目的であったと考えられます。
碑身［ひしん］に笠石［かさいし］をのせる形状や楷書体［かいしょたい］の文字には、当時最先端の中国文化の影響がみられますが、一方で18世紀以降に多胡碑の拓本が朝鮮通信使を通して中国に渡り、その書風が評価され、後世の日本の書家にも影響を与えました。このように、多胡碑は東アジアの文化交流の様子を示す重要な資料です。」（多胡碑＝高崎市HP)
多胡碑は律令国家による郡（こおり）の分割を記した官製石碑（？）のためか、中国風の直方体の切り石に石の笠がかかっている（笠石）。
つぎに記念館に入る前に、途中にある二基の古墳を見る。南高原1号墳は旧吉井町神保から移設された7世紀前半の古墳で直径17m、二段築成の円墳、群集墳のようにも見えるが、詳細は不明ー石室内には入れず、外から撮影し、記念館に入る。この記念館には、那須国造碑、多賀城碑など列島内の古代石碑のレプリカや解説ばかりでなく、メソポタミア、エジプト、中国などの文字の書かれた石碑などのレプリカや拓本などが展示され、それなりに見どころがある。今から5〜6年前に開館したのだから、世界記憶遺産になる前に開館している。列島内最古の石碑は宇治橋断碑で646（大化3）年のものだが、3分の一が失われており、ほぼ完形で残っているものとしては、山上碑（681年）が最古だ。
記念館を出て11時を回り、予定より遅れているのでどうするか迷ったが、とりあえず、まだ行ったことのない吉井郷土資料館（旧吉井町＝現高崎市吉井）に行ってみる。ナビの道がわかりにくく、道を少し間違えて上信電鉄の踏切を行ったり来たりして、改めてナビをやり直し、吉井駅方面まで戻る。
吉井郷土資料館には、時間がかかり、11時40分に到着、この地域の旧石器から中近世までの多くの資料が展示されている（民俗資料も）ーが、時間があまりないので、急ぎ足で旧石器から古墳時代くらいまでの資料の展示品などを見る。じっくり見る余裕がなく残念だが、またの機会に譲り、12時過ぎに次の藤岡市歴史館と七輿山古墳に向かう。
藤岡市歴史館までは6�劼發覆い呂困世�、意外と時間がかかり12時半頃到着、ここで七輿山古墳や白石古墳群の出土品や沖�彊篝廚覆鼻△量鐇源�代の再葬墓関係、中でも独鈷状石製品など縄文時代の独鈷石や石棒などをほうふつさせる祭祀儀礼関連の出土品や須恵器窯関連遺物などの他、江戸時代の世界的数学者、関孝和関連資料など面白いものが多いが、ここは二度目で時間もないので、じっくり見られず、先を急ぐ。
歴史館の目の前には、白石古墳群の一部、皇子塚古墳、平井地区1号墳などがあり、ここも依然訪ねたことがあったが、今回もとりあえず、この古墳を見てから12時50分前、七輿山古墳に向かう。12時51分、七輿山古墳前に到着ーここも依然墳頂まで登っているので、今日は上まで行かず、13時半から始まる七輿山に関する講演に間に合うよう、急いで群馬県立歴史博物館に向かう。
病み上がりなのにアップダウンのある道を40�劼�らい走り、すでにフラフラだったが、6�卆茲領鯒遒泙任覆鵑箸�13時20分過ぎに到着、講演会開始までになんとかたどり着く。
今回はかなり異色の講演会で、七輿山古墳（国史跡）に関して、遺跡の非破壊調査として、デジタル3D測定と地下レーダー探査法を用い、早稲田大学の大学院生や学部学生が、早大文学学術院の城倉正祥准教授の指導を受けて、調査を実施、詳細な古墳とその地形情報と、これまで未発掘で発見できなかった石室にかかわる情報を得ることができたという。これを報道した東京新聞の記事では、
「藤岡市白石の国指定史跡「白石稲荷山古墳」について、市教育委員会は早稲田大や県立歴史博物館と合同で二月から、デジタル三次元測量や地中レーダー探査による調査を行う。同古墳の大規模な調査は一九三三（昭和八）年以来で、先端技術を活用した非破壊調査で墳丘の詳細な規模や構造などの解明を目指す。市教委は「確認されていない埋葬施設の存在など新たな発見や、古墳の築造年代の特定につながる可能性がある」と期待する。 （石井宏昌）
白石稲荷山古墳は全長百四十メートル、高さ最大で約十三メートルの前方後円墳。五世紀前半に築造されたとされる。三三年の調査で、後円部の墳頂部の東西に竪穴式の埋葬施設をそれぞれ確認。副葬品に直刀や銅鏡、勾玉（まがたま）などのほか、家形埴輪（はにわ）や多数の石製模造品が出土した。
確認されている二つの埋葬施設は墳頂部中心から外れていることから、さらに下層の中心に、より古い年代の埋葬施設が存在する可能性が指摘されている。
調査は早大文学学術院の城倉正祥准教授と学生らが二月二十六日〜三月二十五日に実施。デジタル三次元測量で古墳の詳細な立体的データを解析、地中レーダー探査で墳丘構造や埋葬施設の状態、規模などを調べる。古墳の詳しい形状や別の埋葬施設の存在によっては古墳の築造時期がさかのぼる可能性があるという。
城倉准教授らは昨年、同市上落合の国指定史跡「七輿山（ななこしやま）古墳」で同様の非破壊調査を行い、大規模な横穴式石室があったことを確認した。」
とある。講演では 藤岡市教育委員会の軽部氏のこれまでの概要報告の後、4人の学生さんらが順番に3D探査と地下探査の実施状況と成果を報告、これまで言葉としてはこうした最新科学技術手法があることは知っていたものの、その調査の実際とそこから何をどのように知りえるのか、その一端を知ることができ、とてもよかった。一口にデジタル3d測量でも、地下レーダー探査でも、技術や機器類は日進月歩、最新の機器はスマホの機能とタイアップして、情報を読み取ることができるようで、その様子が、発表の映像からうかがうことができた。
また同大学では、藤岡市と群馬県立歴博と再び連携して、白石稲荷山古墳のデジタル探査を行うという。来月から始まるようで、これも成果が楽しみだ。今回の七輿山古墳の調査もまだ解析中の段階で詳細は今後出される調査報告書を待つしかないが、途中経過報告でもすでに大きな成果が予想されるので今回の記者発表（前日）と講演会となったらしい。
今日は病み上がりで欲張りすぎて大変だったが、とても有意義な一日で無事チャリを倉賀野駅に返却し、帰宅することができた。
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