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写真2）野島公園最上部の野島貝塚付近
写真3）称名寺貝塚A地点（山門手前入口付近）
横浜市ふるさと文化財団主催の金沢区の遺跡見学会に出かけてみた。最初に財団のHPで全体の企画を見つけ、往復はがきで応募した後、ほぼ希望通り当選したまでは良かったが、最初の「金沢区の重要遺跡」の講演会を聴講した後、当選はがきが見当たらなくなり、いくつかのイベントに参加できなかった。今日は最後の見学会で、これに応募・当選したかわからなくなり、急遽財団に電話したが、休日で誰も出ず、行けば何とかなるかと、確証ないまま出かけた。武蔵小杉・横浜経由で京急の特急で金沢八景駅まで1時間半弱、駅改札を出ると、財団関係者らが参加者名簿と思しきものをもって参加者のチェックをしている。私もそこに行ったが、同性の名前はあっても完全に一致しないーーどうやら応募ないしは当選していなかったようだ。しかしそこはわざわざ東京からやってきた身、資料にまだ余裕があるため、なんとか見学会にもぐりこんだ。関係者の方々、ありがとうございますーーうれしいーー。
参加者は25名、ーーまあ多すぎもなく少なすぎもなく、先頭の財団先史考古専門家の平山氏は足早に最初の見学地・上行寺東やぐら遺跡に向かって歩き出す。16号線を横須賀方面に南下し、六浦交差点を右折し、上行寺東京ライオンズマンション方面の間の坂を上る。急な石段を延々と登り、息が切れそうになったところで上に出る。左にライオンズマンション、目の前にやぐら遺跡。最初の「重要遺跡」の講演会の時も説明され、当日資料にも詳しく書かれているが、西側にある上行寺の東側に広がる丘陵地帯に、中世のやぐら群が存在することは、この地域の遺跡調査で著名な赤星直忠氏（1902〜1991)が、古くから「六浦ガード付近やぐら群」と呼んでいたものの一角だ。鎌倉を中心に三浦半島など、中世のやぐらは数多くあるが、大半は江戸時代に凝灰岩の切り出しその他で削平され、戦後の大開発で道路建設や住宅建設で失われ、完全な姿で残るものはほとんどない。この場所もマンション建設で破壊される運命にあったが、事前の記録保存調査で、一部やぐらの内部構造などがわかる遺構が残されていたため、開発か保存か、論争が起きたという。保存運動のさなか、最終的に一部の復元移設保存の運びとなったという。遺跡を子細に眺めると、一段高くなったところ、やぐらの四角く切られた窪み（やぐら）の左側になにやら彫られた模様が出ている。一つは浮彫の仏像の腰から下が見えており（上部は削平）、その左に五輪塔の下部（上部は削平）に梵字の掘り込みが見えている。またその右側のやぐらの内部の吹く室に五輪塔の浮彫の全貌が残されていた。ここのはやや小さく、土台の梵字はなかった。またこうしたやぐら手前には柱穴があり、配水溝も検出されている。柱穴は推定でやぐらとつながる何らかの施設が建てられていたらしい。中世や江戸時代の様々な関連文献史料の調査によれば、かつてこの地にあったと考えられる淨願寺に関連する建屋である可能性があるようだ。淨願寺はその大本は源頼朝が、文治年間（1185-1190)に建立され、1444年に「淨願寺」と改名、1478年、太田道灌の兵火で焼失、1499年に融弁が中興の祖となって淨願寺と光徳院を合併して須崎に移転、「龍華寺」と名を改め、その後家康の庇護を受けることとなったようだ。この六浦のやぐらは、淨願寺となる以前の蔵福寺時代（12世紀から1444年の間）に築造されたものと言う。ともあれ、こうした歴史の一端を記す遺構として貴重で、一部が復元保存され、遺跡として残されることになったという。深く長い歴史を刻んでいるのだったーー。元々こうしたやぐらは外から見えていたものでなく、すべて埋まっていて、公示前に掘り起こして初めて発見されたらしい。こうしたやぐらのある崖はかつては海岸からずっと西側までつながっていたが、鉄道や道路建設、住宅建設などで削られて断片化している。さらに発掘では上部の土層を削るため、その途中にある近代や江戸時代などの遺構はすべて破壊されている。当然だが発掘は遺跡の破壊とともにあるのを実感。いろいろな意味で貴重な歴史の証言者だ。復元遺跡の先にやぐらの一部を保全している場所を見る。かつて海の底にあって火山灰を含む堆積物が固まってできた凝灰岩は、水が浸入すると割れやすく、崩れる心配があるため、補強材を組んでいるが、こうした遺跡のアクセスと安全面の二律背反が文化財管理の難しい点の一つらしい。30分くらい解説を聞きながら見学を終え、次の瀬戸神社に向かう。瀬戸神社は前回の講演会終了後に訪ねてみたが、今回はさらに詳しい解説を聞きながらの見学、瀬戸神社の背後にある凝灰岩の崖とその手前にある「地業面」でどのような遺構、出土遺物があったのかーー「地業面」とは土地を均して生活しやすい面に改良する作業で、上の面は江戸時代の地業面で、貝層、溝、井戸などが検出されている。
貝層からはカキ殻が多数出て、粒もそろっているので、この付近の料亭や旅籠などのための加工場だった可能性も指摘されている。江戸時代の地業面の下からは中世の地業面なども検出され、さらにそれらを除去すると、縄文時代以来の海岸線（波蝕台）と古墳時代の貝塚が出土、貝層の中には多くの土器に交じり、勾玉、管玉などの石製玉類やと滑石性模造品などが出土し、以前見学した勝坂有鹿谷祭祀遺跡や近くにある横須賀市の鉈切遺跡に似た祭祀が行われていたと考えられるようだ。この点は講演会で詳しく触れられた。現在は削られた面は埋め戻され、解説板もなくよくわからなくなっている。
瀬戸神社を後にして、2�劼曚錨譴砲△詭酖膤�塚に向かう。瀬戸神社から、明治憲法起草の碑前を通過し、野島橋を渡って野島公園に入る。ここでいったんトイレ休憩、その後標高57mの野島山展望台付近まで登っていく。野島貝塚はこの山頂手前の斜面に貝塚の一つ（東貝塚？）があり、平坦面上部に解説板と碑がある。ここは昭和22年23年に赤星氏らにより小規模な発掘調査があり、その後昭和58年の野島貝塚緊急調査団により頂部の展望台建設前の調査が行われ、展望台に向かう道の両側から来た貝塚、南貝塚が出土し、展望台方面に続いていたようだ。残念ながら東貝塚の一部が斜面に残され、横浜市史跡に指定されているが、展望台付近は一部破壊されたかもしれない。これらの貝塚は縄文早期後半、貝塚から出土した土器は野島式土器として夏島貝塚から出土した夏島式土器より少し新しい土器として土器編年の標識土器となっている。歴史的な貝塚の一端を見学でき良かった。
最後に長く急な階段を下って1.5�劼曚彬迷Δ砲△訃量昌�に向かう。予定時間を大幅に過ぎ、そろそろ疲れも出てくる中、野島橋を再度わたり、頑張って称名寺に到着、入口の山門のそばでまず称名寺貝塚のA地点の解説、残念ながらこの有名な貝塚は史跡に指定されておらず、A地点もI地点もD地点もそれと示す碑や標柱は何もない。今回初めてその場所を教わり、大変良かった。山門付近の少し小高い場所には貝殻が散乱し、その下に貝塚があることを示している。称名寺貝塚は４千五百年前の縄文中期から2500年前の晩期末まで続いていたようだ。縄文後期初頭の「称名寺式土器」はその中の後期の層から出土しているようだ。その先の仁王門手前の賛同したの下水工事の際にはI貝塚、帰りにはD貝塚の出土地点をおおよそ教わり、これまで何度来ても明確な貝塚の地点を知ることができなかったのでとても満足できた。なお、称名寺自体は国指定史跡でその遺構発掘に関する解説も途中なされた。熱心な解説で予定時間を1時カノーバ―となったが、財団の皆様ありがとうございました。
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