|
|
|
写真��大清水上遺跡
写真�３冂邑妬�再び
午前中、平泉を電動アシストで回り、2時には水沢駅に移動、レンタカーを借り、水沢周辺の遺跡を巡る。最初に奥州市埋蔵文化財センターに立ち寄る。センターのすぐ後ろには胆沢城柵があり、館内には「阿弖流為」らのエミシの抵抗を打ち破り、征服したという倭国王朝側に偏った言説にあふれている。二階展示室ではそうした王権側のストーリーをもとにしたビデオが流され、人々が鑑賞していた。東北人としてどう考えるのか、尋ねたくもあったが、時間もあまりないので我慢して展示を少し見る。驚かされるのは「続日本紀」など資料がほとんどないにもかかわらず、阿弖流為の「イメージ画」が展示され、またそのもとになったであろう「悪路王」などの阿弖流為やエミシを国家に反逆する悪者とするような印象を受ける。むろん阿弖流為を悲劇の主人公と考える人々もいるだろう。市民にアンケートを募集して作られたイメージズは、縄文人やアイヌと悪路王を足して二で割ったような肖像だ。続日本紀などで「蝦夷」と呼ばれた人々がまるで異民族の野蛮人であるかのように記述されているが、そのような考古学的証拠は全くない。7世紀以降に出てくる集落遺跡はほとんどが「竈」を持ち、古墳・古代文化を身に着けた人々で、異民族では全くない。奥州市など岩手県の考古博物館などに尋ねると、彼らが「蝦夷」と呼んでいるのは、続日本紀などに出てくる時代の北東北の人々（中央から派遣された官人や軍人など以外）の地元の人々を便宜的に「蝦夷」と呼んでいるに過ぎない。だがそうした説明はどこにもないことから、東北の博物館を訪れる人々は「続日本紀」などに書かれた記述が「史実」であると勘違いするだろう。またそうした東北の市民は自分たちは征服された「蝦夷」の子孫ではなく「征服者」の子孫だと自分を納得させているのではないかと思われる。もし自分が征服された側かもしれないと思えば、征服者の坂之上田村麻呂らを祀るようなことは考えまい。自分が北東北人なら「馬鹿にするな―エミシなど国家の幻影ではないか！！」と怒鳴り込むやもしれない。
次に奥州埋文センターで中半入遺跡の場所を尋ねるが、行っても標柱も今はなくなっているだろうという。余りあてにならないのでグーグルマップを頼りに探しに行く。昨年は近くまで行ったが標柱の場所がわからなかった。今回はグーグルマップが示す位置まで行き、その周辺の細い農道をぐるぐる回ったら、偶然発見した。何だー標柱はちゃんと立っているではないかーー。ここは5世紀後半から6世紀初頭の間に作られた最北の前方後円墳角塚古墳を作った人々に関連する集落遺跡。黒曜石スクレーパーや馬の歯などが出土し、皮なめしや馬の生産に従事する集団の首長の墓が角塚か？馬匹は続縄文や擦文・アイヌの文化には全く存在せず、古墳古代文化の担い手が北関東や中部・北陸からやってきたと考えられる。また黒曜石石器は当時鉄器を求めていた北方の続縄文・擦文人と毛皮やワシタカの矢羽その他を交易していた北の最前線にあたるだろう。こうした境界がどんどん北上していったのが5世紀から11世紀までの北東北の古代中世史のポイントで、律令体制の崩壊とともに、安部氏、清原氏、奥州藤原氏らの豪族が台頭して中世都市や仏教都市を作っていったのだ。
さて、中半入遺跡から胆沢郷土資料館に向かい、角塚古墳出土の円筒埴輪などや縄文の大集落、大清水上遺跡出土の弩機や石器などを見学する。出土遺物の展示がやや少ないのが残念に感じられた。
4時前になったので、次に大清水上遺跡を目指した。ここから胆沢川の上流に向かう。右手には焼石連峰が大きく見える。走ったのはおそらく397号線より少し南の道路で奥羽山脈の焼石岳の南斜面から流れ出す水系を集めて胆沢川となり、胆沢ダム・奥州湖より手前、南側から北上する衣川上流域の増沢ダムとの間の台地に向かって走ると、胆沢郡若柳という地名となり、大清水上遺跡の案内板が出てきた。指示に従って左折し、湿地の様な草原を進むと、分岐に出る。左は平坦な道、右は急な上り坂――平坦な道を進むと行けども行けども湿地の中、右前方の丘陵はおそらくひめかゆスキー場だろうーーここではなさそうなので、戻って先ほどの分岐を右の坂の方に上ると遺跡があった。解説板にはここは胆沢川が作り出した扇状地のほぼ扇頂部に位置し、標高280mに位置し、5000年前（縄文前期）の大型環状集落の全貌のわかる貴重な遺跡として、ダム建設事業から外され、国史跡として保存されるようになったという。
文化庁のデータベースによれば
「史跡名勝天然記念物
岩手県の南西部に位置する大清水上遺跡は、一辺２０ｋｍの日本最大級扇状地である「胆沢扇状地」の最奥頂部、標高２８０ｍの中位段丘上に立地する。
胆沢ダム建設事業に伴い当該地の発掘調査が平成１２年度に開始されたが、中央広場を有する環状集落であることが判明したため、集落のほぼ全体は計画変更により保存された。
遺跡は縄文時代前期後葉の大木５式期に限られ、遺構がまったく存在しない直径約２０ｍの中央広場を取り囲むように、大型竪穴住居６２棟がその長軸を中央広場の中心部へ向けて円環状に直径約１１０ｍの範囲で配置され、さらにその外側には小型竪穴住居や主に貯蔵穴と想定される土坑が巡る。
縄文時代の環状集落の萌芽は縄文時代前期中葉の史跡綾織新田遺跡（岩手県遠野市・大木３〜４式）や史跡根古谷台遺跡（栃木県宇都宮市・黒浜式）に見られるが、それらはいまだ中央広場に大型竪穴住居の長軸を向けない構造になる。これに対し、時期的にも後出する大清水上遺跡は、中央広場に軸線を向けて環状を形成する集落で、縄文時代中期に普遍化する環状集落の初期形態として、その形成状況がわかる極めて重要な遺跡である。」とある。
実際の遺跡の現場の現状は数度にわたる発掘の後埋め戻され、現在は空き地、草地となっている。今後史跡整備されることを願うばかりだ。
16時半になり、20�凖譴凌綢�駅方面に戻る途中、角塚古墳（5世紀後半の最北の前方後円墳）に立ち寄る。前回訪ねたときは時間がなく、道路から撮影しただけだったので、もう一度周囲を歩いて撮影してみたかった。また古墳の前に古墳公園があることもその時は見逃していた。この古墳は最北の前方後円墳として著名であるうえ、397号線沿いにあるアクセスのよい古墳だ。付近にある同時代の集落―中半入遺跡から出土している馬の歯と黒曜石スクレイパーがこの地域の生業を示唆している。岩手県域など北東北太平洋側はやませなど夏の気温が下がる地域で水田耕作が困難で、仙台平野〜大崎平野以北では雑穀中心で、馬匹や毛皮の交易などを生業としたようだ。角塚古墳、中半入遺跡は5世紀後半の古墳文化と続縄文系の在地文化との接触点だったかもしれない。ただし3〜4世紀には北東北で後北C2D式土器が出土するが、5世紀から6世紀にかけては激減し、古墳文化の浸透とともに接触点は北に後退し続けたと思われる。5世紀以降の在地文化がわかるような集落遺構はあまり発見されておらず、7世紀以降は竈付きの住居址を伴う集落遺跡が急増していく。これらを続日本紀などに出てくるからと言って「蝦夷」の遺跡ということはできないと思うが、東北の歴史家、考古学者はその時代の在地の人を押しなべて「蝦夷」と仮に呼んでいることは納得できない。いわゆる「異民族」でないことは考古資料が証明しているのだがーー。
角塚古墳では一周してこれまで見なかった位置から撮影したが、墳丘は古い時代に削平されて周囲は農地となっているのでやはり形状はよくわからない。
レンタカーを返却し、水沢駅付近の二食付きの古い旅館でゆっくり休むことにした。土木作業者や発掘作業者などがグループで泊まり込むことが多いという。二食付きは最近では珍しいし、驚くような値段だった。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する