|
|
|
写真��続縄文土器と黒曜石スクレーパー
写真�Ｃ宛緤晋妬�の副葬品、金装獅噛環頭太刀ー国内に類例無く、半島製とされる
東北歴史博物館で開催中の蝦夷展もあと僅かな期間となり、今日は二度目の見学で製鉄などに関する講演と展示解説がある。
午前中、８時過ぎに仙台駅に到着し最初に長町南から地底の森ミュージアムを見学、ここは三度目で本展示は軽く流して土器の秘密展を主に見学、その後東北歴史博物館に移動。11時からの展示解説に参加。
エミシの暮らしぶりは同時代の人々とほとんど変わらぬものという解説に、納得のいかないご夫婦が解説の相澤秀太郎氏に、北海道のアイヌを見ても同じ民族とは思えない旨の質問をしていたが、あくまで北東北の8世紀〜9世紀後半の元慶の乱あたり(日本書紀〜続日本紀）までの話しであり、「エミシ」と「蝦夷＝えぞ」−アイヌとを混同しているだけでなく、「エミシ」を民族概念と誤って解釈している。「蝦夷」はあくまで王権による政治的・恣意的概念であり、エミシを一つの民族―いわんや「異民族」と捉えることは誤りだ。「エミシ」に実態は展示にあるように多様で様々な人々であり、大半は古墳文化の影響を強く受け、ほとんど古墳文化人といってよい。土器やお墓の作り方で少し地方色が出ていること、生業の一部に皮なめしと北海道との交易があり、また北海道から交易に来る続j縄文あるいは擦文文化の交易者との交流を示す出土品があるが、「エミシ」はそれらの土の人々を示す語か、王権の文書は明らかでない。ただどの人々であっても（都から送られた役人・貴族以外はみなエミシを意味したとしても）現代の歴史学・考古学の通念からはそれを一つの民族・異民族として認定することはできない。
レンフルーの「考古学」教科書(世界の大学で最も読まれている）の中でも、現代における「民族」概念は他者が名付ける「民族」名や民族を認めず、「自己決定権」を最重要視する。つまり「エミシ」自らが自分たちを一つの集団として「エミシ」またはその他の名前で名乗りを上げなければ、「民族」として取り扱うことはできないと考えるのだ。「アイヌ」は今日、その組織において自ら「アイヌ」民族と名乗り、先住民族」として自己主張し、それを多くの人々が承認したことから、「先住民族」として認知されたが、例えば「沖縄」の人々はそうした「民族」の首長は出ていないので「先住民族」とは認知されない。これは国連の先住民宣言が採択されて以降は、こう考えることが歴史学や考古学、人類学（民族学）に求められることになったのだった。欧州古代（新石器時代以降）の「ケルト民族」に関しても同様の問題（その当時自ら名乗っていないーあるいは記録がない）が生じて、「ケルト」を民族とすべきかどうかに関しては論争が起こっているという。
したがって「エミシ」という概念を民族としては認められないというスタンスをとるべきで、そこが欠如している今回の展示のコンセプトに疑問を感じるのは私だけか？そこをはっきりさせないから、先のご夫婦のような「異民族としての蝦夷」という誤解が生じる。民族でもないものを異民族と決めつけることはできないが、ご夫婦はDNAを調べていないのか、とDNAまで持ち出してなおも食い下がる。しかし残念ながら奈良〜平安時代の人骨はほとんど 得られていないーもっとも近年では、DNA解析もできていない。しかも多様な人々なので一部の人のDNAが採れたからと言って、その人々が蝦夷を代表するわけでない。民族とDNAを同一視することもできない。こうした考えはかなり危険で、民族差別や偏見を生みやすい。
もっともここ数十年の間に古墳時代から近世までの古人骨が東北地方でも少しづつ検出され、古人骨研究は少しづつ前進しているようだ。
「東北地方にアイヌの足跡を辿る：発掘人骨頭蓋の計測的・非計測的研究」
川久保善智（ 佐賀大学医学部），澤田 純明（聖マリアンナ医科大学解剖学教室），百々 幸雄（聖マリアンナ医科大学解剖学教室）Anthropological Science (Japanese Series)Vol. 117(2), 65–87, 2009
によれば、
「最近の十数年の間に，東北地方の古人骨資料は著しく増加し，宮城・福島の古墳時代・古代人骨も 50 例以上が知られるようになり，さらに北海道に隣接する，青森，岩手，秋田各県からの中世末から江戸時代にかけての人骨も，100 例を越えるまでに整備
されてきた。このような状況に鑑みて，筆者らは，平成17 年に「東北地方にアイヌの足跡を辿る」というプロジェクを立ち上げ，発掘人骨を多面的に分析することを試みてきた。
「古墳時代人骨は，宮城県と福島県の太平洋側の遺跡から出土したもので，北限は宮城県石巻市，南限は福島県いわき市である。6 世紀〜 8 世紀の後期古墳と横穴墓出土人骨を主体とする。古代人骨は，宮城県の仙台平野および山形県の飛島から出土したもで，時期は 8 世紀から 10 世紀にかけての人骨である。北東北江戸時代人骨は，青森県，岩手県，秋田県の遺跡から出土したもので，遺跡は概ね馬淵川と米代川以北の地域に分布している。
東北地方北部では，古墳時代人骨の発見例がなく，古代人骨もわずかに 2，3 の遺跡からの出土が知られているにすぎず，また江戸時代人骨は，東北地方南部での発見
例が少ないーー」
またまとめとして
「7 計測的分析でも形態小変異による分析でも，古墳時代と江戸時代には，九州に始まって，関東・東北を経て，北海道アイヌまたは東日本縄文人に至る，形質の地理的勾配があることを明らかにしたのが，この研究の主たる成果であり，これは「日本列島人の二重構造モデル」を支持する所見である。
8 東北地方北部の古墳時代人骨は，この研究で明らかになった形質の地理的勾配から判断すると，南東北の古墳時代人骨よりも，さらに縄文・アイヌ群に近接することが推測されたが，実際にこれらの人骨が，いまだ研究資料として利用できる段階にないので，いわゆる“古代蝦夷論争”に，積極的に関与することはできなかった。
9 古代の文献に出てくる蝦夷（エミシ）と称された人たちが，古代東北地方の在来の住民で，種族ないし民族としてひとつに括られる集団であったのか，あるいは在来の住民だけでなく，他地域からの移住者も含めた混在集団であったのかという問題点が整理されたとしても，蝦夷がアイヌであったか日本人（和人）であったかという，二者択一的な“蝦夷の人種論争”は，あまり意味のある議論であるとは思われなかった。」
とあり、「蝦夷の人種論争は意味がない」ことを記している。
私は基本的に今回の展示コンセプトには極めて批判的だ。エミシ概念はあくまで王権による政治的な概念であり民族問題とは認められないのは現代歴史学や考古学の基本認識だ。これは熊谷公男氏に代表されるような東北史の文献史学者が日本書紀や続日本紀に引きずられ過ぎ、言わば戦前の皇国史観の影響を残しているとしか思えない。
午後から多賀城関連の製鉄に関する講演を聞く。各地の製鉄遺跡の製鉄調査を手掛けた研究者と思われ膨大な内容を抑揚もなく次々と紹介するが中々頭に入ってこない。製鉄史は東北の古代中世史の重要な柱の一つなのでだが後から資料を読み返すしかない。
2本目の多賀城の建物復元の話は建築史の専門家の話だがとてもわかりやすく好感のモテる話しぶりだ。
仙台から新幹線で大宮に戻り、北陸新幹線で金沢経由小松駅までさすがに少し疲れを感じる。宿に指定した小松の三日市ゲストハウスに電話を入れて予定より新幹線運休で遅れることを告げ９時過ぎに小松駅に到着し宿に向う。街の灯りが照らし出す建物景観は印象的で石と木の街小松というものだ。２度ほど小松は訪問したはずだが街を観察したのは初めてか?ゲストハウスも築80年の素晴らしい古民家がベースの宿シャワーを浴びて朝まで目が覚めなかったー疲れていたのかなー?
