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打ち、再訪して続きの見学をした。朝9時半過ぎから見学を始めたら、その日は赤ちゃんを連れた母親対象の学芸員の展示解説日で、私が縄文後期、弥生前期ころの展示を見始めると解説を始めた。そこで時々学芸員の斎藤あや氏に質問することができたのはラッキーだった。縄文晩期に「飛行機型」石鏃というものが現れ、大量に出土する石鏃の中に「飛行機型石鏃」「下布田型石鏃」などと呼ばれる独特の形状の石鏃が含まれる。パネル解説では「下布田型」を凹基型石鏃と説明されていたので、下布田遺跡の石鏃を見ると必ずしも凹基型は多くなく、凸基や平基形も多くみられるので、斎藤氏に尋ねると、もしかしたら説明が違っているかもしれないとのことだった。私も素人で石鏃分類の詳しいことはわからないが、大工原氏などの論文を見ると下布田型の特徴は「飛行機鏃」と呼ばれることが多いので、「凹基型」よりも「飛行機鏃」と記述するほうが正しいように思える。斎藤あや氏は、今回のこのものすごい「石鏃」を含む「弓矢の一万年」展を実現させたすごい人だが、本来「玉」類の専門家で石器や石鏃の専門家ではないので、解説文をどなたが書かれたかわからないが、もしかしたら書かれた方のうっかりミスかもしれない。
ここで問題なのは、この時期に石鏃の出土量が各地で急増することだ。縄文晩期は一部弥生早期や前期と重なるので、雑穀類などの栽培が始まっている可能性もある。すると、動物、鳥類などによる食害問題が深刻になるので、その対策としてわなを仕掛けて石鏃で鳥や動物の接近を阻む罠の仕掛けのために石鏃使用が増えるという可能性も考えらると斎藤氏。この時期の石鏃の急増は面白いテーマで、群馬県埋蔵文化財センターの関口氏は、万木沢B遺跡の縄文晩期の石鏃に関する論文の中で、設楽氏の研究を引用し、
「当該期の小型石鏃の利用について、設楽博己は次のような興味深い仮説を述べている（設楽2022）。設楽（2022)は、西谷大による中国海南島における焼畑とネズ
ミ罠猟の研究成果（西谷2003）を取り入れ、縄文晩期後葉における雑穀栽培の開始に伴い開墾された土地とそこに生る雑穀を目当てに集まる鳥やネズミなどの小動物を捕獲する罠を仕掛け、その道具の一つとして小型石鏃が利用されたという仮説を提示した。畑作に伴う土地と植生の人工的な改変によって連鎖的に生じた小動物が集まる
生態系への変化と小型石鏃の利用を関連付けた仮説である。万木沢Ｂ遺跡でも大型の石鍬の出土により雑穀栽培が存在した可能性が示唆されるため、設楽の仮説は小型石鏃の利用方法や対象動物を検討するうえで重要である。だたし、有茎鏃の増加と小型化は雑穀栽培以前の縄文晩期前葉以前に遡る可能性もあるため、当該期だけでなく前後の時期における石鏃との比較も今後の検証課題である。」
と述べている。これは実に興味深いテーマだ。
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