これからときどき、卒業研究でまとめた「天体の距離測定方法」について紹介していきます。今回は第一回、地球の大きさについてです。
メートルの元来の定義から地球の子午線上の北極から赤道までの距離は1 万km で周囲径はその4 倍の4 万km になるわけですが、人間から見るとかなり大きい、その昔は地球は丸いとすら思われていなかった、この地球の大きさをどのように測ったのでしょうか。
最初に地球の大きさを測ったとされているのは現在のエジプトのアレキサンドリアで図書館長をしていたエラトステネス( 紀元前275 – 194 )と言われています。
地球の大きさ測る前に地球が球体であることを示す( 証明する) 必要がありました。地球が球体でなければ、例えば無限に続く平面であるとするとそもそも地球の大きさを測るということは意味を持ちません。エラトステネスの時代の人々は月や太陽からの類推から地球も丸いのではないかと考えていました。
エラトステネスは図書館にあった文献からアレキサンドリアのほぼ真南にある都市、シエネ( 現在のアスワンダムの近く) にある井戸の底まで、夏至の日の正午に太陽の光が当たるという記述を見つけました。夏至の日の正午、シエネにあった井戸の底まで太陽の光が届くことから太陽は真上にあると判断されます。そこでエラトステネスはアレキサンドリアで垂直に立てた棒の影から夏至の日の正午の太陽の角度を測定し、その角度が7.2 度( 現在の角度単位) と測定しました。
太陽は十分遠く、そこからの光は平行光線と考えると、同じ時刻に測定した太陽の高度角が違うということは、地球が丸いということの証拠にもなります。アレキサンドリアとシエネの太陽の高度角の差が分かったので、アレキサンドリアとシエネの距離がわかれば地球の大きさが計算できることになります。
エラトステネスは実際にアレキサンドリアとシエネの距離を測ったわけではなく、やはり図書館にあった文献から、砂漠の隊商がアレキサンドリアとシエネを何日かかって移動するかを調べました。隊商は1 日に同じ距離を進むとしてアレキサンドリアとシエネとの距離を計算し5000スタディオン( 当時の長さの単位: 1sd =約180m ) としました。
地球の周囲の長さは360°÷7.2° =50ですので地球の周囲長は5000×50 =250000sd と計算しました。スタディオンと現代のメートルの換算が場所や時代により違うので精度は単純には出せませんが、約45000km となり現在の測定値と13%の誤差しかなく、文献調査からの推定値からの計算の割りには、かなりの精度で地球の大きさを算出していたことになります。
地球の大きさの測定精度が大幅に上がるのは18世紀までかかりました。コロンブスのアメリカ大陸発見(1492年) 、マゼランの世界1 周(1522年)よりあとになり、1789 年にフランスアカデミーにより測量計算され、同時にメートルの単位も決められました。
現在では人工衛星を利用してより正確に測定されています。地球上の2 点から同時にレーザー光を人工衛星に発射し、その反射光が帰るまでの時間を測定し距離と角度を求め、それから計算して地球の大きさを出します。
今日はここまで。
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