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御坊市から箕島駅に戻り、昼食後有田市郷土資料館に向かう。「箕島」という地名は高校野球の高校名で知ってはいたが、それが「有田市」にあるとは知らなかった。箕島は1954年に有田市と合併したらしい。
参考（wikipedia)=1954年（昭和29年）9月19日 - 有田郡箕島町・糸我村・宮原村・保田村が合併して有田町が発足。
1956年（昭和31年）5月1日 - 市制施行して有田市となる。
1962年（昭和37年）8月1日 - 海草郡初島町を編入。
江戸時代の初めころ（17世紀前半）、有田から江戸へのミカンの出荷が始まったらしい。郷土資料館にはそうした「有田みかん」の歴史も展示され「みかん資料館」の名前もある。さて、今回有田市郷土資料館を訪問したのは、13日（土）午後に「古代日本犬の成立」の講演があったからだ。数年前に千葉の船橋市の飛ノ台博物館（加曾利博物館の間違いかもしれない）が主催する古代犬に関するシンポジウムがあり、講演者の宮崎泰史氏は元狭山池博物館学芸員（もともと大阪府採用の学芸員で弥生文化や近つ飛鳥、大阪文化財センターなどの学芸員を歴任してきたようだ）もそこに参加し、韓国勒島（ぬくと）遺跡など出土の古代犬の骨を中心に、縄文犬・日本犬と半島〜大陸のイヌのDNAの関係を研究しようと考え、そこで出会た寺井先生と共同で韓国に何度もわたって研究を開始しているという。日本内外の古代犬DNA解析が進むと、縄文犬、弥生犬、古墳古代犬や二ホンオオカミとの関係などの解明が進むと期待される。縄文犬はニホンオオカミに最も近く、ニホンオオカミは遺伝的に古いオオカミの形質、遺伝子を持ち、またニホンオオカミと縄文犬はイヌの成立の謎をとくカギとみられ。世界的にも注目されている。
宮崎氏は日本各地で縄文〜弥生・古墳古代のイヌの骨の研究史、事例を紹介し、近年のDNA解析の現状を説明し、さらに韓国の弥生時代日本と特に関係の深かった勒島遺跡出土のイヌ骨の研究への期待を語った。縄文〜古代犬研究のさらなる前進に期待できそうで興味深い講演だった。
参考：２０２３年１０月２１日（土）のヤマレコ日記
千葉市生涯学習センターで加曽利貝塚博物館主催の「縄文犬研究の最前線」という研究講座があるので、出かけてみた。
九時半頃にセンターに到着、二階ホールで受付を終え、ホールの前の方に座って資料目を通す。
最初の加曽利博物館館長挨拶の後、早速動物考古学の小宮孟氏の縄文人とイヌの関係の話。縄文時代のイヌの骨がいつからどのような遺跡でどのように出土したかを年代と出土状況などに分けて解説、問題は、世界の中で縄文犬ほど古いイヌの系統の骨が多く残っていることが少なく、中国や朝鮮半島などでの古いイヌ骨太の発見と解析が必要で、縄文犬は。大陸ですでにかわれたイヌがその文化と共に入ってきたと考えられるという。国内最古の埋葬犬は四国の上黒岩や九州の東名遺跡などが古いので大陸から西日本に先に入ったと考えられると言う。古代イヌのDNAを研究する寺井洋平氏は、寺井洋平氏(総合大学院大学)は、古代イヌのDNA解析に関して、イヌは最古の家畜と言われるが、その起源は古くよくわかっていない。イヌの全ゲノム解析による系統樹画作られ、狼の亜種であるイヌは日本オオカミのような小型オオカミの祖先種が、東ユーラシアで他のオオカミグループと別れ、その中から、イヌの祖先種が生まれ、ヒトとであってヒトのパートナーとなっていったのが二万年前ごろ、また、ニホンオオカミの祖先は大陸ですでにイヌと交雑しており、イヌのゲノムを持つオオカミが存在している。また、現在の縄文犬はこのニホンオオカミの祖先種のゲノムを二％？ほど持っているという。
またDNAで見ると柴犬は、オオカミにもっとも近いというのは間違いでイヌは他のイヌ同士が遺伝的には近く、オオカミとは離れている、ただし縄文犬にはオオカミの遺伝子をもっとも多く残しており、この系統のイヌが日本以外では見つかっておらず世界中の学者が探しているが、これまで見つかっておらず、ますます縄文犬に注目が集まるようだ。
さらに縄文犬に弥生時代以降の新しい大陸の遺伝子が加わり、大きく変化していくが、縄文犬の遺伝子の残りかたは、多少地域でばらつきがありそうだが、縄文人の遺伝子のようにアイヌや沖縄に多いわけではないという。
面白いのは青谷上寺地遺跡のイヌは人骨が渡来系を強く示唆するのにイヌは縄文犬の要素が強いそうだ。色々と不思議がある。
また北海道では、続縄文やオホーツク文化において樺太やアムール川流域、カムチャッカなどとのヒトの交流と共にイヌの遺伝子にもその遺伝子の交流、交雑の様子が記されていると、大変興味深い研究結果も出ているようだ。これは礼文島で出土した人骨および犬骨の研究から明らかになったようだ。今後、中国、韓国をはじめ、各地の縄文犬の起源に関する調査を進める意向で寺井氏の研究に注目したい。
また同位体生態学で知られる米田穣氏は、出土犬骨の同位体分析から、各地の遺跡のイヌは何を食べていたかを解析、海産物や肉を多く食べた犬とデンプンつまり植物食中心の犬と個体差が大きいようだ。これはヒトにも現れており、同じ集団、集落や時には家族内と思われる人骨およびでも個体差が出てくるという問題と関係するのだろうか？どうやらイヌはヒトとほぼ同じものを食べていた可能性が高いようだ。
最後に東京外大の人類学者が西アフリカのカメルーンの西側のバカピグミーという集団の狩猟とイヌの関係を中心に、犬がとのように使われ、役立ったのかそうでないのか、イヌの役割について
各狩猟においてイヌが必ず役に立っているとは言えないケースもあり、猟の種類、対象動物、集団やの違いなどによりマチマチらしい。ただし 小宮氏によれば縄文犬の頭部の筋肉の強さから現代のイヌとは比べられないくらい噛む力が強く、かつての漁師のイノシシ猟では、勢子が追い込んでイノシシが逃げるのをイヌが追い込んで崖の上りきる直前で足に噛みつき、噛み砕いてしまい動けなくするほどの力があったそうだが、現在の犬にはそうした噛む力は無いそうだ。アフリカの場合も植民地支配以降の社会変容や狩猟禁止圧力、飼い犬の変化など、考慮すべき問題が多々あるようだ。この民族例などからどこまで縄文人のヒトとイヌの関係を引き出せるかは問題だが、縄文犬の能力を考えると十匹程度でも大きな力を発揮した可能性はあるようだ。しかし実際どのくらいの数のイヌをひとつの集団が飼っていたのかは、今のところよくわからない。残された骨はほんの一部と考えるしかないだろう。
ともあれ、新しい縄文犬、古代犬研究から、当時のヒトの社会や動きを読み取る可能性を感じた研究講座であった。またお昼は隣に座った研究会仲間と近くのベトナム料理屋に入り、ベトナムのつけ麺？と揚げ春巻などのランチを食べ美味しかった。
参考�◆�日経サイエンス記事 特集：DNAが語る古代ヤポネシア
縄文犬とニホンオオカミの深い関係 遠藤智之（編集部） 寺井洋平（総合研究大学院大学）
イヌは最も古くから人間のそばで生きてきた動物だ。2万〜4万年前にユーラシア大陸でハイイロオオカミから分かれて，猟犬として飼い馴らされた。日本列島には縄文時代に入ってきたとする説が有力で，国内最古のイヌの骨は神奈川県の夏島貝塚から出土した約9500年前のものだ。愛媛県の上黒岩岩陰遺跡では7200〜7400年前にイヌを埋葬していたとされる骨も見つかっていて，考古学的な史料からは「縄文犬」が狩猟採集を営む縄文人にとって欠かせない存在だったことがわかる。
最近の研究では，日本列島におけるイヌの変遷も少しずつ見えてきた。遺跡から出土した縄文犬の骨からミトコンドリアDNAを抽出して配列を調べたところ，全て縄文犬だけに見られる固有のタイプで，1万1500年前に大陸で他のタイプから分岐していることがわかった。夏島貝塚の年代も考慮すると，イヌは9500〜1万1500年前の頃に日本列島に入ってきたとみられる。
縄文犬のゲノムには，日本列島に到達する以前の痕跡も残されている。約100年前に絶滅したが，かつては東アジアに広く分布していたとみられるニホンオオカミのゲノムを解析した結果，交雑によるイヌへのゲノムの流入が1万年以上前に一度だけ起きていたこともわかった。その直後に日本列島に入ってきた縄文犬は，現代のどのイヌよりもニホンオオカミのゲノムを多く含む。さらに，様々なオオカミやイヌのゲノムを比べた研究では，ニホンオオカミがイヌと最も近縁なオオカミである証拠が見つかった。
動物の古代ゲノムの解析を手がけている総合研究大学院大学准教授の寺井洋平は「これまで謎に包まれていたイヌの起源は東アジアにあるとみている。イヌに最も近縁なオオカミが最近まで日本で生き残っていたことも幸運だった。日本はいにしえのイヌの進化を知る手がかりを現代に残す“貯蔵庫”になっているといえるだろう。縄文犬や日本犬など日本列島のイヌを詳しく調べれば，イヌの最も古いところに迫れる」と語る。
