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2014年03月02日 19:07博物館、展示会、美術館など全体に公開

3月2日サントリー美術館「伊万里展」+見どころトーク

今日はより詳しい「伊万里展」の解説があるので、昨日と同じような時刻に小田急・千代田線で乃木坂で下車、小雨の中をミッドタウンに向かった。昨日同様、ミッドタウン開店前の入口から中に入り、突き当りを左にガレリア3Fのサントリー美術館に通じるエレベーターに乗り込む。会員カードを見せてそのまま展示室に入り、昨日のおさらいをする。11時半を過ぎたので、エレベーターまで戻り、6Fホールに行って、荷物を置いて席を確保する。再び4階展示室で柿右衛門様式からさらに次の金襴手様式の欧州王室などの宮殿を飾った大壺、大皿などを見て3Fの後期、終末期の伊万里輸出品を見る。浮世絵風の美人画を描いた大壺など、なかなか見ごたえのある作品だ。特に166番の色絵笠美人文大壺の遊女は踊り出しそうだ。11時前に6Fに戻って見どころ解説を聞く。講師は学芸員の安河内さんーーあの鑑定団の安河内さんと関係あるのかな??

 最初に伊万里・IMARIの成立・世界輸出の100年(17世紀中期〜18世紀中期=1757まで)に先立つ背景である中国磁器=景徳鎮に関してーー

景徳鎮は漢代にはすでに陶磁器の生産が始まり、宋代には青磁、白磁が現れ、元代の14世紀以降は青花と呼ばれる染付が始まり、顔料の違いで色合いが変わっていくようだ。明代までは世界市場は中国の独壇場だったようだが、明代末、清国への権力交代期に内乱状態になり、一時、景徳鎮窯での生産がストップ、また輸出禁止令も出てしばらく景徳鎮の磁器の生産・輸出が途絶えた。その時期に、17世紀初めに磁器の生産技術を確立し、鍋島藩直営の窯を整備して生産体制を整えた有田周辺の窯から生産される時期に目を付けたオランダ東インド会社がサンプルを本国に送り、1659年以後、急速に輸出が始まった。

 当初は景徳鎮の磁器の写しから始まり、次第に独自の技術を開発して柿右衛門様式が始まり、人気を博する。「白い金」とも呼ばれるようになる。しかし中国の混乱がおさまり、1684年景徳鎮の輸出が再開して、中国磁器の巻き返しが始まる。1690年代には諸般の事情で柿右衛門様式の輸出が途絶え、その代わりに豪華な金襴手様式の磁器を中心に欧州へに輸出が続くが、次第に景徳鎮との価格競争に劣勢に立ち、また1709年にドイツのマイセン窯、1733年ザクセン選帝侯アウグスト強王の死去で後ろ盾を失い、1757年の輸出を最後に100年の輸出の歴史が終わりを告げることになる。欧州窯の発展で18世紀末には中国の輸出も衰えることになる。

展示品解説:
1)初期作品=景徳鎮の写し=展示品16番(景徳鎮の大皿=芙蓉手蓮池水禽文稜花大皿)と18番は伊万里側の写し作品の例。こうした図柄は欧州で好まれ、やがて欧州でデルフト、マイセンなどでの磁器生産が始まると、欧州でも景徳鎮の写しが制作された(作品154番など)

景徳鎮の代役として始まった伊万里の磁器は最初はバタビアなど、東南アジアで試され、やがてオランダに見本が送られて本国へも輸出され始める。欧州輸出品ははじめのうちは日用品が主。中国から伝わったお茶や大航海時代の産物であるコーヒー、チョコレート(ココア)などを飲むマグカップなどが輸出される。欧州に到着すると、マグカップにつける金属の蓋が現地で付加されて売られたようだ。(作品11番)

2)柿右衛門様式と輸出最盛期=1670年代=輸出が始まって15年くらいの時期=
初期の染付から色絵付けが始まり、柿右衛門様式が登場。
1.下地はお米のとぎ汁のような乳白色
2.赤・青.緑・黄の色付け
3.染付は少ない
4.金もわずか
モチーフは花鳥・文人など、以前と同じようでも、もはや景徳鎮の模倣ではなく、オリジナルなモチーフ、デザインで制作されている。この柿右衛門様式の磁器が人気を博し、多くの作品が輸出されたが、1690年には、日本側の事情があるのか輸出が止まる。おそらく、第五代目の技量が落ちて、鍋島藩からの買い上げが停止するなどの問題があったためか、あるいは鍋島藩が将軍家などへの献上品の製作に力を入れたことなどの成果詳細は不明らしいーー??職人の技量不足が主要因かもしれないーー。

作品鑑賞66番の力士人形

3)1690年代から18世紀中盤までの後期

柿右衛門磁器の衰退の後、90年代以降「金襴手様式」と呼ばれる金襴を多用する色絵つけのある豪華な時期が主体になる。この時期は欧州ではロココ様式とマッチしたため、欧州の貴族や王室の宮殿、邸宅の装飾などに珍重された。
作品89番「色絵竜虎文大壺」
作品87番「染付蒔絵鳥籠装飾月広口大瓶
作品119番「色絵桜閣美人文大皿」
作品117番「色絵大壺文大皿」
作品112番「色絵笠美人文皿」
これらの共通しているのは、色合いの豪華さのみならず、図柄・モチーフが浮世絵風の美人図や大壺など、景徳鎮にはない純和風モチーフが主流になり、それが欧州などで広く受け入れられたことだ。

こうした作品がある一方で、107作品や109作品など、欧州側からのリクエストで作成された作品も少なくない。107は欧州の人々にはなじみ深いギリシャの神々だが(この場合はケンタウロス)、全く文化の異なる日本の職人にとっては大変な作業だったろうーーそれでもケンタウロスの上半身は痩せており、筋骨隆々のケンタウロスのイメージとはかなり異なる。109番の作品のように、欧州の王家、貴族の家紋の入る作品も少なくない。これは二つの家紋が入る結婚式の引き出物であったろう。こうした欧州側からのリクエスト作品もしばしばみられるところだ。こうした100年にわたる輸出も、景徳鎮との価格競争、マイセンやドルフトなど欧州の磁器窯の成立発展などにより、競争に負け、熱烈な伊万里支持者の貴族の死去などが重なって、1757年の輸出を最後に途絶えることになる。

 また作品179、180に見られるように、景徳鎮が伊万里を模倣する作品を輸出していることなど、市場競争がいかに激しかったかがうかがわれる。景徳鎮は伊万里との競争に打ち勝ったものの、やがて50年後には欧州窯との競争に負けて、輸出が途絶えることになる。

 100年間の長いようで短い輸出活動だったが、その名品の数々は世界の記憶から消し去ることはできない光り輝く100年だったろう。しかし、日本ではこのような輸出作品があったことは、当事者以外は知りえないことだった。今回の作品も、様々なルートでの買戻しなどの里帰り作品がほとんどで、こうしてこの時代の概要と作品に触れることができることは幸せなことといえよう。多くの人々の努力、情熱に感謝!!
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