人体の免疫機構

生体の免疫機構は学べば学ぶほに、たいへんすばらしいシステムであると感心します。現在、NHKの高校講座の「生物基礎」では免疫に関する講義が全5回で行われています。内容的には結構先進的で放送大学の免疫に関する授業に勝るとも劣らない内容です。現在受講中の「感染症と生体防御」での重点ポイントにもなる、免疫について自分なりにまとめてみました。

生体の免疫には大きく分けて２つの免疫システムがあります。自然免疫と適応免疫(獲得免疫)です。自然免疫では病原体が体内に侵入すると白血球(食細胞)である好中球とマクロファージが病原体を貪食し、樹状細胞は病原体を取り込み次の適応免疫の担い手であるT細胞にその断片を提示します。

マクロファージは近くの毛細顕官に働きかけて感染部位に炎症を生じさせて血管内から免疫物質や白血球を通しやすくします。腫れや痛みを伴う炎症は不快な反応ですが、病原体排除に必要な反応です。咳やくしゃみも病原体排除に必要な反応ですが、感染拡大にも寄与してしまいます。

病原体を取り込んだ樹状細胞はリンパ節に移動し、そこで病原体を断片化した抗原をT細胞に提示し適応免疫が開始されます。その抗原情報を担当するT細胞が抗原を認識するとT細胞が活性化しヘルパーT細胞とキラーT細胞となって増殖し、その一部は記憶B細胞となって残ります。

増殖したヘルパーT細胞とキラーT細胞は感染部位に移動します。キラーT細胞は感染細胞を殺し、ヘルパーT細胞はマクロファージを活性化させ貪食作用を増強します。死んだ感染細胞もマクロファージが貪食します。ここまでが適応免疫の内の細胞性免疫です。なお適応免疫は脊椎動物にしかありません。

もう一つの適応免疫である体液性免疫では抗原をとらえたB細胞がその断片をヘルパーT細胞に提示し、そのT細胞がさらにB細胞を活性化させ同一抗体を多数分泌する形質細胞に分化します。ここで作られた抗体が抗原(病原体)と結合して細胞への感染を防ぎ貪食を助けます。(抗原抗体反応)

2度目の感染の際は記憶細胞が急速に増殖して免疫が素早く働くため発症しないか症状が軽くすみます。しかし細菌感染の場合は記憶B細胞が作られずウィルス感染と違って、一般に2度3度と感染します。(ウィルスには抗生物質は効きませんが細菌には効きます。)

どちらの免疫においても自己の細胞を認識し攻撃しないようになっていますが、自己の細胞を攻撃してしまう疾患を自己免疫疾患と呼びます。また先天免疫と後天免疫に分ける分類もあり先天免疫は生まれつき備わっている免疫、後天免疫には自然感染による自然能動免疫、予防接種による人工能動免疫、胎盤経由の自然受動免疫、免疫グロブリン注射などによる人工受動免疫があります。

先週引いた風邪は未だすっきりとは完治してません。まだ白血球とウィルスの戦いが続いているのでしょう。風邪の薬による対症療法は症状がさほどではない場合は、薬を飲まない方が早く完治するかもしれません。歳と共に免疫力も落ちてきているようです。