地質が面白い！ 各務原の美濃帯とＰ／Ｔ境界の世代について（続）砥石型珪質粘土岩層

・　美濃帯＝ジュラ紀付加体、は、ある意味正しい…
けれども、世代の見方を少し変えると、美濃帯の全てがジュラ紀の岩…と解釈するのは、ある意味間違いとも言える。

（　現実に、ジュラ紀付加体の美濃帯チャート地域の各務原の山で、Ｐ／Ｔ境界を示す「砥石型珪質粘土岩層」があったり、美山の舟伏山のチャート地層でＰＴ境界が見られたり、同じ堆積岩で世代の異なる石灰岩や、変成岩の大理石が、チャートの地層の間にサンドイッチ状や、レンズ状に挟まっていたりすることが、現実にあることが、年代的に矛盾しているようにも見えてしまうことについて、調べてみました。）

・　砥石型珪質粘土岩層とそれらの周辺の年代について、博物館の小冊子の説明や図を３つ。

図１：　地質図と岐阜県の石　／美濃帯／　（　中津川市鉱物博物館2015年発行、大林達生編集　）
　　／　美濃帯をつくった海洋プレート層序の形成過程　／

図２：　石に聞こう！２０億年のあゆみ　　（　中津川市鉱物博物館2008年発行、萩野義雄執筆　）
　　／８．中生代の化石／　−放散虫化石を含むチャート：美濃帯中世層−　より

図３：　（同、上記小冊子）
　　／９．古生代の化石／　−金生山の石灰岩：美濃帯古生層−　より

・　図２のチャートの説明に興味深い点がいくつかありました。

-----　以下、部分引用、要約　-----
ａ）　チャートは、放散虫等のプランクトンの死骸が堆積したもの。
　（　中生代三畳紀〜ジュラ紀前期までの時期に堆積　）
　（　１０００年あたり　１．６ｍｍ　の厚さ　）
ｂ）　チャートには、赤色と灰黒色がある。
　（　　赤　：　微量の赤鉄鋼を含み「酸素が豊富であった時期」　）
　（　灰黒色：　有機性の泥などで「酸素が少ない時期」　　　　　）
ｃ）　海底のプレートにのって大陸側に移動。
　（　途中、火山岩類や石灰岩などが加えられる。）
　（　泥岩や砂岩などの層と、大陸プレートの下に沈みこむときに、陸側に付け加えられる「付加体」作用がおこる。）
　（　深い場所まで沈み込んだ堆積物も変形して付加され、これらが一体となった「複合堆積岩」が形成される。）
　（　このような、複雑な堆積岩類で構成された地質帯を「美濃帯」とよぶ。）　
ｄ）　美濃帯全体では、古生代の石炭紀から中生代ジュラ紀までの海洋堆積物が、ジュラ紀に付加された「ジュラ紀付加体」
ｅ）　同様の地質帯である、関西の丹波帯、関東の足尾帯も、美濃帯と一連のものと考えられ、あわせて「美濃−丹波−足尾、帯」とも呼ぶ。-

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・　図３の右に示された、年代別年表では…
　美濃帯堆積物の始まりから、地質図に表示されている「美濃帯堆積物付加体（ジュラ紀付加体）」に至るまで、ほぼ１．５億年の期間が経過している。
　金生山体積物（石灰岩）はペルム紀に、
　各務原〜坂祝のチャート堆積物が、三畳紀中期〜ジュラ紀前期になっている。

・　図２と図３の説明をふまえて、図１下部の「美濃帯の形成過程の説明図」をみていただくと、岐阜県南部の美濃帯の年代と岩石の年代の意味が、納得できるような気がしてきます。

・　「チャート層」と「砥石型珪質粘土岩層」のＰ／Ｔ境界との関連についても、図１からイメージできる気がします。

・　さらに、irazuyama　さんからいただいたコメントにあった「Ｐ／Ｔ境界＝海洋無酸素事変」の表現も、チャートの赤色と灰黒色の違いが、酸素の多い少ないに関連していることなど、黒い色と酸素の関連から、砥石型珪質粘土岩層の特徴とも合致していて面白い。

コメント

pprmine

RE: 地質が面白い！ 各務原の美濃帯とＰ／Ｔ境界の世代について（続）砥石型珪質粘土岩層
PT境界があったので　初コメントさせてもらいます
PT境界は　隕石がぶつかって　恐竜が絶滅したといわれる　その時の痕跡のようです　岐阜県には　露頭があったらしいのですが　みんな　割って持ち帰ったので　消滅とか　大切なものは　ほどほどにしなくてはいけないですね　チャートの石は　堆積がよくわかるので　いいですね　鉱物採集　初心者ですので　お許しください

makobe

RE: 地質が面白い！ 各務原の美濃帯とＰ／Ｔ境界の世代について（続）砥石型珪質粘土岩層
pprmine さん　はじめまして　コメントいただきありがとうございます。

私もつい最近勉強しはじめたばかりで、主に博物館のパンフレットで勉強しています。

・　今回とりあげています、Ｐ／Ｔ境界（２．５億年前）の絶滅については、まだ原因は明確にはなっていません。
（　恐竜絶滅で有名なのは、Ｋ／Ｐｇ境界（６５００万年前）ですが、これも隕石だけでなく他の要因も重なったのかもしれないといわれていて、まだわからないことが多いです。）

・　各務原の「砥石型珪質粘土岩層」は、地質マップでは連続した深い層が岐阜市北部までいくつも連なっているようで（私はまだ見てもわかりませんが）これらの地質層はもっとスケールの大きな話です、絶滅希少種の草花の感覚とはスケールのまったく異なる話です。

・　今回はちょっと付加体の年代で、「ある意味正しい」とか、「見方を少し変えると間違いとも言える」などと、不明確な表現をつかってわかりにくかったかと反省しています、これについては、続編で問題を整理してみたいと思います。

いろいろ読んでいく度に？？？が多くなっていくようで、奥が深くておもしろいです。
これからも、よろしくお願いします。