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・野山の危険動物
・野山の危険植物
・海の危険生物
に分けてその被害実例と共に紹介しています。タイトルは『野外毒本』ですけども、毒を持たない危険生物も紹介しています。単に突進されると危険とか、咬まれる、刺されると痛いとか。触ると痒くなるとか。いわば、日本の危険生物、危険植物の図鑑でありその生態と対処法が書かれた本です。幅広く哺乳類、爬虫類、魚類、昆虫、花、雑草までと多岐にわたります。中にはどこが危険なのか首を傾げるのもありますけども。菌糸類の掲載はありません。
野山の危険生物としては、熊、イノシシ、ヤマビル、蜂、マムシなどが代表的ですけども、野犬といった比較的盲点な動物まで紹介してます。捨てられて野生化した犬は狂犬病ウィルスを媒介し集団で人やペットを襲う。確かに人里近くだと、放し飼いなのか野良なのか分からない犬に遭遇することがある。他にはスズメバチには虫除けスプレーは効かないとか、刺されて亡くなる方が毎年数十名いるとか、初心者が知っておいて損のない基礎的でいて重要なことが書いてあります。
本の構成としては、最初のほうに危険生物のカラー写真があり、次にモノクロページで生態と被害実例、その対処法を解説しています。危険生物の危険度を3段階のグレードに分け、被害実例、被害の起こりやすい時間帯、季節、予防方法、症状、応急処置、その他豆知識といった具合に小さい字でびっしり書いてあります。よくこれだけ、調べ上げたなという情報量です。危険動物のグレード基準は以下。
危険度1 死亡、重症の可能性、病院へ行く必要がある。
危険度2 死亡、重症化する可能性は低いが場合により病院へ。
危険度3 軽症で済む場合が多いが状況によっては病院へ。
巻末の参考文献を見ますと、基本的には図鑑や他の書籍、インターネットを駆使して調べた情報をまとめた本になるわけで、私としてはあまりそういう構成の本は好みではないのですが、これだけ体系的に日本にいる危険動物を軸にまとめあげた本は、あまり見かけないので勉強になります。
『野外毒本』というシャレた書名ではありますが、著者は山岳遭難を扱った著作が多い方なので、内容的にはいたって大真面目です。ですが、堅苦しくいわけではありません。被害実例だけ読んでも、へぇーそんなことが起こりうるものなのかと納得できます。海の危険生物は興味があれば参考程度に、山に登るのであれば、ヒグマ、ツキノワグマ、ヤマビル、マダニ、蜂、蛇だけでも見る価値のある一冊と思います。何気に海の危険生物の写真が面白かったりする。¥1700で少々高かったですけど。現在は新しく被害報告がされている外来生物などが追加された新装版が出ています。