半年前にここで地下足袋を買ったときは、寝たきりではなかった。特に事情は聞かなかったが、寝たきりで店番するとはすごいと思う。この小上がりは、ご主人が数十年定位置にしていた場所だろう。
「お〜い、お客だよ」とご主人が言うと、奥様がギシギシと階段を降りてきた。お能の稽古で使う白足袋5枚こはぜを探してくれたが、ご主人は、4枚こはぜならあるけど5枚は無いなあとのこと。姉弟子には5枚と言われたが、当の御自身も井上百貨店呉服売り場でも5枚は見つけられず。今回は4枚でいいや。
奥様がお釣りを勘定しているうちに、店内に吊るしてあった僕好みの紺のドカジャンが目に入る。外側は厚い純木綿生地、ウチは裏起毛ボアで、黒い疑似黒貂襟がついている。木綿の生地は近頃あまり見かけない。これは着込むうち、朝鮮軍抗日ゲリラや八路軍が着ていた外套のように、案外いい感じにくたびれるぞ。おそらく10年ほど吊ってあった新古品だろうか。いま着ている同じようなドカジャンはもう3年目で、結構生地が擦れてきているのでちょうどよい、これも買い求める。
近頃の作業着は、なんかちょっと洒落たつもりの柄がワンポイント入っていて、そこがちょっとなあ、と思う。ワンポイント入れるなら、自分でつけたい。
5500圓の商札だったが「2000圓でいいよ」とのこと。前回も地下足袋を破格で売ってくれた。もう、品を仕入れず在庫かぎりでたたもうとしているのかもしれない。90歳前後のご主人。こんなふうに、定年もなく、寝たきりでもお店番しながらお迎えを待つなんて、羨ましい人生だと思う。
むむむ。なんだか我が家の様なお店です。
新古品でも欲しい人がいるというのは嬉しい物です。
うちもそのうち土蔵からいろいろ引っ張り出して
ワンコイン(10円)セールでもやろうという話しをしています。
足袋屋という専門店があるのもびっくりですが、
このご主人が寝たきりになっても
奥様はお店を維持されているのもすごいと思います。
ご実家は、衣料品店?荒物屋さんでしたっけ?引っ張り出すところ、立ち会いたいですね。
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