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私は原山氏の10年下世代で、 80年代後半に大学で地質学を学び、卒論のために5万図の図幅いっぱいの地質調査をした。一人で北海道奥士別の山野、天塩川源流をくまなく歩いた。日本の山の地質調査は、沢登りと岩登りと、ヤブコギができる者でなければ不可能だ。沢や崖でわずかに露出した岩盤でひたすら走行傾斜を測り、岩石を採集し、実験室に帰ってマトリックスと結晶の構造を偏光顕微鏡で観察し、科学組成を元素レベルで分析し、その山域の地質史のパズルを解いて関連の論文をたくさん読んで仮説を推定し、証拠を固めていく。何の役に立つとか即答できないけど肉体と知性を存分に注ぎ込んで研究する楽しい時間だったことを思い出す。
74pの、ハラヤマのコラム、第四紀花崗岩の発見の下りは、そのパズルがとけて一気に長年のもやもやが晴れていく羨ましい体験。
30年前に地質学を修めて卒業してその後も山と関わってきたのに槍、穂高、常念の地質史には不思議と無関心だった、というか、この世界は専門家のための論文ばかりだった。
槍や穂高は何度登ったかわからないけど、これを読んでまた登りたくなった。滝谷も、ジャンダルムも、独標も、常念も、目を閉じればその場の岩層が浮かぶし、地質史の説明もすんなり納得行く。
かっぱ橋から奥の長い道は退屈、とよく聞く。草木の名前がわかれば退屈しないよ、と人に話したことがあるが、岩石がわかれば更に見えるものが違う。そのためには過去の研究の成果を本一冊で頭に入れておく必要はある。知っていれば見えるものが違う。この本は随所にそのメッセージが盛り込まれている。
見えにくいものはかえっておもしろいですね。
この一冊の大仮説(科学はすべて仮説モデル)に至るまでの膨大な苦労もタイヘンなものなんだよね。
原山先生の新著、ご紹介ありがとうございます。
私は、原山先生の書かれた「超火山・槍 穂高」(山と渓谷社 刊)という入門書を、10年以上前に読み、それから山の地質、岩石について興味がでて、地質マニアになりました。
(ご紹介頂いた本は、「超火山・槍 穂高」のリニューアル版かもしれませんが、買って読みたくなりました)
山は、ピークだけでできているのではなく、色んな植物も山の一部ですし、色んな岩石も山の一部だと感じています。私は最近、たとえ低山でも、変わった岩石、地質があれば、楽しく山歩きができていますし、何回か登った山でも、地質を確認するため再訪したくなります。
米山さんも、リタイアされて時間的余裕ができれば、大学時代の知識を生かして、地質学的山歩きをされてはいかがでしょうか?
ベルクさんの地質スキは超火山からでしたか。今回の本は、その写真や図をメインを大幅に増やした、より一般向けのビジュアル本のようです。氷河地形の解説と鑑賞おすすめポイント案内も多いです。火山という富士山のような単純なイメージの概念を打ち破る話ですよね。
山は多面体で、決して飽きることがないですね。
自分は学生時代の1980年前後に槍穂高に行きましたが、その頃槍穂高付近のカルデラ噴火のことは全く聞いてなく、3〜4年前にこれを知ったとき腰が抜けるほど吃驚しました。
さらに槍穂高カルデラ噴火のテフラを東京のすぐ隣の三浦半島で見つけた時は「あった〜」と大喜びしました。噴火当時は三浦半島付近は穏やかな浅い海で、槍穂高噴火の火山灰などが海底に溜まり、その後隆起して現在地上に出現しています。
2回噴火のテフラの厚さはそれぞれ1mと40cm程とかなりのボリュウムで、どれだけの噴火量だったのか想像を絶しています。
余談ですが爺が岳付近でもカルデラ噴火があり、このテフラも三浦半島で観察できるようです(まだ確認していません)。こちらは数cmと槍穂高カルデラ噴火に比べると薄いようです。
ベルクハイルさんの「ヤマノート」のご説明を参考にさせていただきました。
火山噴出物の広い範囲の影響は、遠隔地ほど感動的ですよね。そんな大噴火がいま起きたらマジで最悪なのですが、長い時間軸というのは全く面白いものです。山も大きいけど、時間も大きい。槍穂高カルデラ火山には、全く別の名前をつけてやりたいものですね。
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