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もし1942年ミドウェイ開戦の敗北で講和を結んでいたら、大正生まれの200万人の男達は死なずにすみ、焼かれてしまった日本の町並みは焼かれる事は無かった。日本はこれほどひどい負け方ではなく、主権国家を70年も喪失する事も無かった。あるべきだった未来、強い現実弱い現実。
昔、主権国家だったころの日本で生きていた著者の父親の挟持、誇りに関する個人的な追想がおもしろかった。戦後もしばらく祝日には国旗を掲揚していたが、あるときから死者の七回忌を終えたときのように、もう国旗を掲揚するのはやめよう、と云った話など。
あの戦争からこの戦争へ 高橋源一郎 2014
2014年までの数年間に日本で起きたさまざまな事象に関して、同時代で、様々な小説含めた文章を、個人的な目線で論じた批評集なのかな。
ハンナ・アーレント、バスケの黒子犯人の冒頭陳述文、風立ちぬ(映画の方の)、双葉町町長のことば、abさんご、会田誠、沖縄観劇日記、戦争の悲しみ、初夏の色、佐村河内守、愛と暴力の戦後とその後、33年後のなんとなく、クリスタル・・・。文章を、言葉を、徹底的に繰り返し読む、(特定秘密保護法案)も何度も音読。
言葉の専門家として、どんなふうに2014年を生きているのか、その姿勢がおもしろかったです。
永続敗戦論 白井聡 2013
鉛筆で線を引きながら読みました。ほとんど線だらけに。
日本はアメリカに負けたけど、中国に負けた憶えは無い、とずっと思い込んで来た。僕もある時期までそう思い込んでいたのを思い出しました。
yoneyamaさんと多分同じころに高橋源一郎さんを読んでいました。
深く優しく心に届く洞察でした。この方の言葉にしばらく耳を傾けていたいと思っています。
ところで高橋さん、こんな風に書いています。
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なかでも、わたしの記憶に焼きついたのは、次のことばだった。
「読書は、人生の全てが、決して単純ではないことを教えてくれました。私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。人と人の関係においても。国と国の関係においても」
以来、わたしは、彼女が書くもの、彼女の語ることばを、探すようになった。彼女とは、美智子皇后である。(「ぼくらの民主主義なんだぜ」p159)
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私も高橋さんに共感します。ニーチェ的なルサンチマンに溢れる社会に生きているわたしたちは、「複雑さに耐える」のはなかなか難しいこと。性急な結論に飛びつかず、粘り強く丁寧に現実的にリアクトしていくことを忘れてはならない、と改めて思いました。何より、「ものを読まず」「ものを知らない」ことを恥じない風潮にあって、読書を、と言ってくださる美智子皇后にほっとするような励ましを感じています。
高橋源一郎の最近の本ですね。美智子皇后のことば、について、こちらの本でも考察がありました。歴代皇后の役割、天皇制の女性性について。
「複雑さに耐える」
これは意味のある言葉ですね。
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