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転勤で引っ越す新しい町は、毎度とても魅力ある町に見えます。がっかりすることは、まずほとんどありません。それは多分、街で見かけた女の子と同じで、その人のことをよく知らないからいいところばかり見えるせいかもしれません。それで付き合っていくとなると、初めの頃、その子のことを根掘り葉掘り知りたくなります。女の場合なら本人とのやりとりで、町の場合はまず図書館で歴史や町の成り立ちや、その町でみんなが知っていること、年間行事や名所、美味しい料理屋さんなど調べます。町の形成期の中世や近代の歴史や地形に関しては、ずっと住んでいる人よりすぐに詳しくなります。街を歩いていい本屋、魚屋、自転車屋、風呂屋、豆腐屋、パン屋、肉屋、八百屋、散髪屋、酒屋、金物屋、登山用品店を探すにつけ、店主と話すにつけ、町を知っていくということを繰り返してきました。この週末は近所の自転車屋の三河弁丸出しのおじさんと長々話しました。
それで、4年ほど経つと、転勤の時期が来てしまい、「この町が嫌になった」とか「あんたなんか出て行ってよ」と言われるわけでもなく、未練を残して町を去ります。松本を出て、札幌長野新宿名古屋函館青森甲府、かつて移り住んだ町のことを時々思い出しては、今も同じ空の下、達者でやっているといいなあ、などと呑気に思い起こします。結婚するわけじゃないから気楽なものかもしれません。いつか出ていくことがわかっているから、女たちも優しくしてくれたのかもしれません。
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