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中でも登山愛好家として興味深いのは、少年達がアムステルダム近郊のブルックからハールレム、ライデンを経由してハーグまで片道50マイル、四日間のスケート旅行に出かけます。運河が発達したオランダでは、凍った運河をスケートで遠出できるのです。これは羨ましい!50マイルといえば80キロ、豊橋から名古屋まで滑っていく距離です。19世紀の欧州はちょっとした寒冷期で、同じようにロンドンからテムズ川をすごい距離を滑って遠出する話を同じ岩波少年文庫の「トムは真夜中の庭で」で読みました。今なら自転車?でも自動車が怖くて大人でもタイヘンです。この時期の少年たちが、極地探検、ヒマラヤ探検に育っていく世代です。
オランダは旧宗主国スペイン(ハプスブルク皇帝がスペイン国王だったため)から豊臣秀吉のころ独立し、17世紀にインドネシアを植民地にして、南蛮貿易、毛織物の植民地経営で近代化し、国土を運河と風車で改良した最先進国でした。今は地味な国ですが。そんな忍耐、努力のお国柄を表す小さな話が盛りだくさんです。著者はオランダからのニューヨーク移民で、児童文学雑誌の編集者。先祖の国オランダの文化風俗を紹介したく、1865年にアメリカの子供達に書いた児童文学です。
当時日本は幕末で、福沢諭吉が死ぬ気で蘭学を学んでいた頃です。ロシアのピョートル大帝が青年時代オランダの造船技術を学んでいた話や、スペインのフェリッペ二世がせめてきた時の話、オレンジ公ウィリアムの話もさりげなく挿入されていて、オランダ通になります。オランダ人がなんであんなにスケートが強いのか、わかりました。12月25日ではなく、12月5日に祝う聖ニコラスの夜の話も詳しく書いてありました。聖人がきて子供達に贈り物をくれるのはこっちの日なのだそうです。
訳は石井桃子さんで、児童文学黎明期の古典の三本の指に入るものですが、近年はあまり知られていないかも。あれ、今もしや版切れ中かも?
銀のスケート/ハンス・ブリンカーの物語
M.M.ドッジ作
石井桃子訳
岩波少年文庫
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