この春、悪天の週、とある難しい山で遭難した二人組の救出に後輩Aが成功した。
低体温症で既に数日間朦朧としていた遭難者Bは、パートナーCと難易度の高い核心部をかろうじてユマーリングで抜けた山頂直下で装備を紛失し、行動困難になった。二人は雪洞内に避難し、Cが救助を電話で要請したが悪天(強風、低温、ガス)で警察の救助隊は雪洞には近づけず。翌朝呼びに行き自力で救助隊と合流したCは、天候が悪化したため救助隊と共に下降ルートを下山した。山頂直下に一人残ったBの一生は時間の問題、自分では手を動かすことも出来ないほど弱っていた。
初日の捜索で一旦Cや警察と共に下ったAとその仲間Dは、翌日夕方の好天のチャンスを狙って再び悪天の山頂を目指した(警察の救助隊は行動見合わせ)。山頂下でかろうじて生きていた遭難者を午後3時に発見連絡、運良くガスが晴れ風も止み、延命措置をするうち、午後4時過ぎにはヘリ救助に成功した。体幹の深部体温は25度だったという。
山頂から清々しく眺めた夕景は美しかったことだろうなあ。
遭難パーティーは或る東京の大学山岳部の若手OBチーム。おそらく難しいルートで経験を積み、体力も技術もそれなりの自信があっての挑戦だろう。このルートは冬季の総合力が問われ、最も弱いところから突っこまれる。滅多なことでは手を出せない敷居の高いルート、それだけに腕に覚えのある者にとって憧れの稜線だ。
AとDの総合力は賞嘆に値する。二晩のビバークに耐えたBの生命力と、運の強さも幸運だった。
報道の短文の速報や、まして噂では遭難の本当のことなどわからない。一度騒がれてみればわかる。推測や思い込みで遭難の印象を口にしては恥をかく。こうすれば良かった、という正答は、一つもない筈だ。
厳冬期の難関ルートの関係ない話と思うだろうか。山の生死はどんな山でも誰にもあるし、それがなければ山ではない。
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