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50年ほど前、千畳敷のロープウェイが出来た頃姿を消して以来初めての一羽。昨年の調査では、かえらない卵を温めていた跡が見つかった。
雷鳥は、生まれたその年の秋にだけ、遠くへ飛んでいく習性があるという。それもメスだけ。巣に残っていた羽毛のDNA分析などから、乗鞍岳から来たのだろうと思われる。乗鞍岳と木曽駒ヶ岳の間は木曽川と奈良井川を分かつ分水嶺の高みが繋がっているから、それを辿って来たのだろう。最も低くても鳥居峠だ。直線距離ではより近い御嶽山や南アルプスとの間は、木曽川や天竜川などが遮り、休むところが無い。こういうルートの検討と選定を、鳥はいかにして成すのか。あの小さな目で遠い山を見て、ハイマツ帯がある高さである事を確認し、あの小さな頭で途中の休息ポイントの目処を立てるのだろうか。如何に鳥瞰できるからとは云え。
誰も仲間の居ない新しい天地を求め、単身で遠い山脈への旅に出た、若い娘冒険家の雷鳥の高い志。以来孤独に、イヌワシやキツネ、テンを避けていきのびてきた。幾年かの冬も越えた。その孤独やいかに。今もあの高みの上からガンコウランの葉を啄ばみ、ハイマツと雪の隙間の窓から私の住む町を見下ろしているのか。女鳥羽川の流れが見えるか?気高い女盛りの冒険家よ。
後ろから声をかけられ振り向くと、通学途中の娘だ。「あの白い山のてっぺんに雷鳥が一羽だけで居るんだよ」と話しては見たが、遅刻しそうで急いでいた。子どものうちから忙しい朝とは、やや気の毒である。しかしこの橋からの木曽駒ヶ岳の位置はおぼえただろうかな。いずれ一人でどこか遠くまで飛んで行け。
んーーん。
泣けてきますね。
これは山の見える町に住む楽しみです。
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