武田、織田、豊臣、徳川に変わる目まぐるしい時代、全て盛り込んだストーリーで木曽式伐木運材法の由来を知る。 この時代、都市建設と城郭天守の建設で膨大な木材を必要とした変革期だ。それまで搬出困難だった険しい木曽の瀬戸川などに木材運搬の新技術を編み出した。戦国末期の伐採技術や、技術者たちの出身地由来、技術、習俗に至るまで具体的なイメージが出来上がった。
榑(くれ)と土井という木材を産出し年貢として納める、稲藁ではなく藤蔓でわらじを編み、服の繊維も作り出す。杣や寄木の日常の食生活、ヒノキ、サワラ、アスナロの見分け方もわかる。鷹狩りの鷹の育て方も。茶坊の厳しい境遇も。
書評サイトで読み友さんの感想を読んで知り、図書館で借りました。著者は昭和24年ころから木曽の山に足を運び地誌を調べ記録映画などを撮り木曽谷に20年ほど通ったとのこと。この頃は再び敗戦後の木材需要で、木曽の山は変貌していった時代で、こうした話で伝えたい歴史だったのだと思う。果たして現代は?見かけ上は豊かな森林は復活したが、林業は廃れ、手入れはなされていない。森林の値打ちを知る者は少なく、関心も低い。
ところどころに挿入される木遣り唄は、やはり音声で聞いてみたいところ。このへんが映画作家の書く作品なのだろう。
こうして継承された木曽谷の山々を巡り歩く。実際の地理が頭にあるのが楽しい。余生は信濃の山を巡り歩きたい。
少年少女歴史小説シリーズ
木曽の杣うた
1975年2月10日発行
小野春夫
岩崎書店
地球温暖化が取り沙汰されているというのに、林業や木材の活用が新聞でもテレビでも一向に取り上げられないのが不思議でしようが無いのですが、コロナ禍で就業や活用の点で見直しが図られるといいと思います。
杣、榑、山登りする人にとっても馴染みない言葉ですね。
確かにそうかも知れないですね。日々山仕事ったって、重機とエンジンたよりで、斧で伐ていた人とは体の作りも違いますよねえ。
この本で知ったけど、鋸は、斧ほど音がしないからこの時代使用禁止だったんだそうです。盗伐防止というだけのために!
結局この時代も含めて、日本では、森林を循環させてうまくやってきたことは一度もなかったのかもしれない、と思った。でも取り組む値打ちはあると思うのだ。このまま温暖化するだけのなかで。
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