https://igloosky.com/2022/07/02/accident-report-hinoto/
もう一つは関係者のみ読むためのもので、沢登りで小滝を巻く際に数m落下して大腿骨、骨盤骨折の失血により、ヘリがくる3時間半後までに亡くなってしまったという。太い骨が折れるほど、近くに太い血管があり、体内で大量出血があったのだそう。
事故報告書は、現場のことを詳しく書いた必要なもの。当時者も自分の記憶の減衰に備え、考えをまとめるため、また心を安定させるために必要なもの。但し、どれだけ丁寧に書いても、あるいは詳しく書けば書くほど、読む立場によっては失望したり、リテラシーによっては浅はかな解釈や発言の種になったりもする。だが、読んだ者は強いイメージを心に持ち、現場での行動指針のための強い学びになる。
過去に私も骨折者を一人で背負って下山したことがある。60kgという比較的軽い人でも、1分も続けて歩けない。下ろすたびに本人は痛い。骨折部位は後から知ったが大腿骨頸部といって外から見えない場所なので固定の仕方もわからずできなかった。痛かったろう。当時は骨の構造などあまり頭になかった。
6月、7月、マトやんや友人知人の山中での骨折事故も相次いだ。山での骨折事故は搬出する間も苦痛に見舞われ、本人が一番痛くて惨めだろうと思う。いづれも山に慣れている人だし、どこでもありそうなきっかけで、なぜこの時この人だけが?という事例だ。私が被る可能性も無限にある。
「信州の遭難情報」などで、毎日ほぼ一人ずつの事故事例が簡潔に挙げられている。助言警告をしやすいわかりやすい事故ならコメントもわかりきったものがつけられるが、誰にでも起きる、いつ起きてもおかしくない事故は助言のしようがない。原因はよくあることで、いつもは転倒くらいで骨が折れないのに、なぜこのときは骨が折れたのかわからない。同じ大腿骨骨折なのになぜ生死が分かれるのかもわからない。状況はわかっても理由はわからないことばかりなのだ。でも、事故報告書は書かれなければ読めないし、長く山登りを続けたいなら、たくさん読むべきなのだ。
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30年近く前の北海道時代にスキー事故で膝の半月板という軟骨を傷めて、その時最新の技術で手術を受けた妻が、経年劣化で今月再手術を受けた。技術は進み、その時代に応じて受けられる最新のケアとのことだ。膝医療の専門家は狭い世界なのだそうで、専門医は30年前の先生の名を皆敬意を込めて知っているとのこと。いま自宅で松葉杖中。
ちょうど一年前から高校を休学してバレエの専門学校に留学していた18歳の娘が、稽古のやりすぎで膝靭帯の慢性損傷になった。治療のため帰国している。ダンスバレエの厳しい世界では、この年頃の長期中断は決定的だ。人生初期のほとんどの熱意を注いで打ち込んできたものを失うので、本人はいま思案中だ。私は警察の遭難情報みたいにムリやり助言しない。朝夕一緒にメシを食っているからわかるのだ。
母娘そろって膝の治療中で、三度のメシの支度と片付けを私が担当している。前からだけど。
猛稽古でもケガをしない才能、山を歩いて転んでも骨を折らない才能、骨を折っても死なない才能、メシを楽しく作れる才能。
でも、いろんな才能のある無しに関わらず、誰でも山に登っていいのだ。見舞われたトラブルの現場から手持ちの条件で考えて工夫してあるいは助けあって、いかに解決し脱出し生還するか。これが山登り=生きることの最高の楽しみではないか。
*写真はお昼の冷やし中華作り置きおかず載せと、初物の地元収穫とうもろこし塩ゆでと地元収穫の枝豆。
は、事故報告書上げるとなったら日本一、早そうですね。「前からだけど」
誰も死んで無ければすぐ出せるけど、死亡事故だと遺族、家族との話し込みも要ります。仕事中だと、いろんな事情でまず出せないね〜。
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