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著者は高森町市田出原出身1901年生まれの児童童話作家、宮下正美氏。巻末にこれは自身の実話だと明かされる。100年前の南信州農村の背景、鬼面山の名の由来、冒険行の末に会う牧野富太郎と思われる人物なども描かれ、鬼面山に惹かれて人生を変えた叔父さん、怖い山の話を諭す作太郎じいさんなど、大人たちの構成も秀逸で物語としてとても優れている。
今月鬼面山に登った折、こんな本があると教わって読んでみて驚いた。少年たちが辿った末に行き着いた奈良井川源流域と茶臼山周辺は先月の山行で全て辿っていたし、途中通ったと思われる伊奈川流域も滑川も正沢川も以前から歩いている。だから読んでいても実際の地図がわかっていて、ちょっとありえない行程だという気がするのだ。このスタートとゴールの場合、伊奈川を含めて何度も上り下りをしなくてはならず、特に三沢岳南尾根を超えるルートがありえない。里を目指して基本は下降なのに、何度も登り返さなくてはならないのがわからない。
こぐまを連れて旅をする危険さは今の時代ではハラハラするが、山中で手に入れるイタドリやアケビなどの食べ物はさすが山育ちの知恵だと思うし人の歩いた跡の道の嗅ぎ分け方や修験僧の洞穴を見つけるくだりにもリアリティーはある。
細かいことは置いといて、物語の舞台の山域を歩き回ったこの時期に出会った本として、運命と親しみを感じる。それに明治生まれ、山育ちの少年たちなら、5日間の山中冒険くらいやってのけるとは思う。いまの人とは基本が違うから。
晴れた日に市田からどんどん登って鬼面山の顔を見る山行、ぜひやってみたい。念丈岳経て、越百山あたりまで行って伊奈川へ下る感じかな。古老に、踏み込んだら二度とっ出られない怖い山と聞いた「もっさり山」というのは伊奈川から三沢岳南稜線のことだろうか。
書店であまり手に入らない本かも。松本市立図書館で借りました。県内の図書館には配られたようです。
山をゆく歌
宮下正美
初版1958
復刻2015 発行 高森町
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