上高地から立山へ
- GPS
- 80:00
- 距離
- 76.9km
- 登り
- 6,892m
- 下り
- 5,965m
コースタイム
- 山行
- 15:50
- 休憩
- 4:24
- 合計
- 20:14
- 山行
- 10:20
- 休憩
- 2:00
- 合計
- 12:20
天候 | 9月20日(日)(夕方以降):晴れ 9月21日(月):日中快晴、朝晩曇り 9月22日(火):晴れのち曇り 9月23日(水):晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2020年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
https://www.alpico.co.jp/traffic/local/kamikochi/shinshimashima/ 室堂バスターミナル〜電鉄富山 https://www.alpen-route.com/_wp/wp-content/uploads/2020/09/2020tkar_timetable.pdf |
コース状況/ 危険箇所等 |
メジャーな縦走路であり、特段の危険個所等無し。区間ごとの概要は以下のとおり。 ■上高地バスターミナル〜槍ヶ岳山荘 非常に良く整備されているが、ひたすら長い。 ■槍ヶ岳山荘〜三俣蓮華岳 西鎌尾根は一部鎖場があるが、全て利用しなくとも通過できるレベル。 ■三俣蓮華岳〜三俣山荘〜鷲羽岳〜雲ノ平〜三俣山荘 鷲羽岳の登りは急登だが規則的な九十九折で登りやすい。疲れの蓄積もあってか、祖父岳の南側トラバース道から黒部源流に降りる道が急傾斜で辛かった。 ■三俣山荘〜薬師峠 北ノ俣岳以降、長い木道の下りとなるが、土の道よりも足にくるので辛い。 ■薬師峠〜スゴ乗越小屋 薬師岳から北薬師岳の先までが思いのほか岩稜っぽく歩きにくい。 ■スゴ乗越小屋〜五色ヶ原山荘 スゴノ頭と越中沢岳の登りがかなりの急登。おそらく本行程中最も傾斜が強い。 ■五色ヶ原山荘〜室堂バスターミナル 荒々しい景観が続くが危険個所は全く無い。一乗越山荘から室堂バスターミナルの石畳が疲れのたまった足に堪えた。 |
写真
感想
本来は東北での沢登りを計画していたが、天気が悪そうなため、悩んだ末通常の縦走に変更。
今年はコロナの影響で、あちこちの山小屋が閉鎖されていたり、テン場が予約制になっていたりと、通常よりかなり制約が多い状況である。そんな中、最低限の制約で行けそう、かつ天気も比較的良さそうな場所ということで、上高地から立山の縦走に目を付け、急遽計画を作成した。
9月20日(日)〜21日(月)
上高地バスターミナルで身支度をする。
背後には残照の空に上高地のシンボルの焼岳が聳える。
天気が回復してきたのはありがたいが、これから12時間暗闇の中を歩くと思うと、どうしても気分が重たくなる。
それに、4時間ほど前に松本駅で食べたすごいボリュームの信州名物「山賊焼き定食」がまだ腹で消化されきっておらず、少し身体も重い。
歩き始めの頃こそ、遅めに下山してきた登山者何人かとすれ違うが、やがてそれもなくなり、独り黙々と歩いていく。立ち止まると、暗闇と梓川の流れる音、ただそれだけの世界になる。
ただし、キャンプ場がある場所は例外で、急に下界に降りてきたような賑やかさに包まれる。特に徳沢園のキャンプ場は、ありとあらゆる色と形のテントがひしめき合っていて、まさに壮観だった。
槍沢ロッヂ前で休憩していると、ちょうど小屋の方が戻られて話をする。このまま夜通し縦走していく予定と話すと、地図は持っているか、予備の電池はあるか、ナイトハイクは慣れているのか等々聞かれる。色々心配されていた模様。(まあ普通こんな時間に人に会わないはずなので当たり前か…)
大曲を過ぎ、槍沢の急登にかかる。
すると、ほどなく後ろからかなりのスピードでヘッドランプの明りが近づいてきて(お互いに?)びっくり。途中で追い越されるときに話をすると、これから大キレットを縦走されるとのこと。おそらく日帰りと思われるがそれにしても凄いスピード!
しかし、こういうときに人が近くにいるというのは安心感がある。
それに話をすると疲れも軽減される気がする。
そんなこんなで、たまにGPSで念の為位置を確認したりしながら、ジグザグのガレ場を登り、槍ヶ岳山荘に到着。槍ヶ岳山荘には2回来たことがあるが、もちろんこんな深夜にくるのは初めて。
まったく人気(ひとけ)が感じられず、不思議な感じがする。
風もあって寒いのであまり長居はせず先を急ぐ。
なお、せっかくここまで来たというのはあるが、この暗闇の中を槍ヶ岳に登るのは流石に危険に思われたので、今回はパスした。
西鎌尾根はザレ場や鎖場があるものの、特段の危険個所はなく、深夜でも問題なく行動できた。しかし、長い。やはり暗い方が集中力が要るので、せめて早く夜が明けてくれないかと思う。
写真も撮るものがないので、ひたすら歩いて距離を稼ぐ。
視覚に訴えるものがないが、途中の硫黄乗越は本当にそこだけ硫黄の匂いがするという嗅覚に訴える場所だったため、印象に残っている。
午前4時を回ると、ヘッドランプの光があちこちの稜線上を動き始める。
ようやく山の朝の始まりだ。
約5時間ぶりに樅沢岳手前で男女のパーティに会ったのを皮切りに、急に多くの登山者と会うようになる。
双六小屋付近で東の空が白み始める。
できれば双六岳で朝日を眺めたいと思い、速足で双六岳への稜線を登っていく。
結果、双六岳はちょっと間に合いそうにないので、その手前のなだらかなピークで日の出を待つ。しかし、残念ながら東の空は雲に覆われ、太陽を直接拝むことはできなかった。
それでも、西の双六、東の槍、南の笠、そして北の裏銀座の山々と、360度高峰に囲まれたこの場所での夜明けは感動的だった。(12時間歩いた甲斐があった!)
その後、双六までのんびり歩いて、山頂で写真を撮っていただいたりする。
東の空は雲に覆われているが、西には快晴の空が広がっており、これらかの好天が期待できそうだ。
明日歩くであろう黒部五郎や薬師岳の大きな山容を眺めながら、三俣蓮華を経て、三俣山荘に下る。ここのテン場もかなりの盛況で、こやから離れた山の斜面側にまでテントが広がっている。自分は到着した時間が特殊だったからか、小屋近の良いテン場を確保することができた。
ということで、いったんテントを張り、その後鷲羽岳などに散策に行くことにする。既に快晴になっているので、早く出発したい気もするが、当然ながら寝不足なので、2時間ほど仮眠をとってから出発することに。
最低限の休憩をしたのち、最小限の装備でまずは鷲羽を目指す。
急登だが、規則的な九十九折りなので、楽に登れる。
山頂からは大展望が広がるが、なかでも鷲羽岳が南東に擁する鷲羽池と、その後方に聳える槍ヶ岳が角度的に重なり合う景観が秀逸だった。
鷲羽岳を一通り堪能し、続いて雲ノ平に向かう。
山頂にケルンの林立する祖父岳を通過し、ガレ場を下ると、木道に出るので、あとは基本的にこの木道をたどっていく形になる。
雲ノ平には「〇〇庭園」の名が冠せられた地名が複数存在するが、今回はスイス庭園付近のみ「鑑賞」。雲ノ平山荘まではいかずに適当なところで引き返す。
復路は祖父岳を経ず、この北西〜南側をトラバースするルートをとるが、一度黒部源流に降りる部分があり、これまでの疲れの蓄積とあいまって、この下降路が結構膝にきてしんどかった。
まあ何とか下り、ロープの張られた沢を渡渉して、また100メートルほど登り返して、ようやくテン場に帰還した。
なかなか長い一日(1.5日?)だった。
夕飯は筑前煮と(生米派の自分としては珍しい)アルファ米を食べたが、疲労のためか食欲が湧かず、無理に胃の中に押しこむ感じになった。
9月22日(火)
テントから顔を出すと星が綺麗に見えている。
今日も天気が良くなりそうだ。
今日は少なくとも薬師峠まで行くつもりだが、そうすると翌日の行動がかなり大変になるので、できればスゴ乗越小屋まで行くつもりでスタートする。
まずは三俣蓮華を北面からトラバースし、稜線上へ出る。
その後、黒部五郎小舎に降りたあたりで夜明け。
黒部五郎への登り方は、稜線経由とカール経由の2通りがあるが、水が得られるのがカール側のみなので、カール経由で行くことにする。
最初カールは雲で覆われていたものの、歩を進めるうちに雲がとれ、巨岩の点在するカール中心部に来る頃には、すっかり青空に覆われるようになった。
適当なところで水を汲んでからカール壁の急登にかかるが、こちらもうまく斜めに道がつけられており、見た目よりも楽に登ることができる。
鷲羽岳に勝るとも劣らない大展望を楽しんだのち、一路北に向かう。
このあたりからは、北アらしからぬなだらかな優しい感じの山容が続く。(といっても細かいアップダウンはあるが)
沢屋垂涎の赤木沢(稜線から見ると意外に平凡に見えてちょっと意外だった)の源頭を越え、北ノ俣岳に着くと、有峰湖と富山湾が初めて望まれる。
槍穂等の北ア南部とは山域が変わってきたことを実感。
薬師峠までは非常になだらかな道を下る。
途中からはほとんど木道となるが、この木道は一見歩きやすいように見えるが、クッションが無いせいか、足への負担が大きくなる感じがした。
休み休み下って薬師峠へ。
薬師峠のキャンプ場は連休最終日だからか、それとも時間帯の問題だからか、テントが張られているサイトは一部のみだった。
さて、今日の行動の最低限のノルマは達成したが、まだ時間的にも体力的にも何とかなりそうだったので、今日中に薬師岳を越えることにする。
薬師岳の登りの序盤は沢沿いのガレ場、中盤以降はザレ場主体の斜面となるが、どちらも比較的登りやすく(むしろ沢に慣れた自分としては、木道よりも沢沿いの岩場などのほうが手も使えるのでありがたい)、比較的ハイペースで山頂に到着。
一方、北薬師までの稜線が結構細い岩稜帯で、手持ちの地図では30分で行けると書いてあったが、結構頑張らないと30分では無理な感じ。さらにその後もしばらく岩岩しい稜線が続き、さらにガスってきたのもあって、テンションダウン。
そのあとはスゴ乗越小屋まで、ザレ場っぽい道を下っていくが、やはりこの時間になると疲れが蓄積してくるようで、20分歩いて5分休みくらいのペースでノロノロと下っていく。
唯一良かったのは、北薬師岳の先の下りで、2羽の雷鳥を見られたことくらいか。(2メートルくらいまで接近して撮影できた!)
というわけで、今日もまたへとへとになりながら、スゴ乗越小屋に到着。
ガスの切れ間から、明日朝イチで登るべきスゴノ頭と越中沢岳の急登が垣間見えたが、あまりの急峻さに心が折れそうになる。
テント設営後、風が急に強くなる。
台風の影響が出始めるのは、明日の夕方以降と踏んでいるものの、万一このまま風が強くなり続けたら結構ヤバいんじゃないかと思い、不安な一夜を過ごす。
今日もあまり食欲が湧かなかった。
9月23日
気象状況の悪化は杞憂に終わった。
風はほぼ収まり、今日も星が見えている。
8時間くらい寝たからか、昨日、一昨日よりも体調が良い気がする。
今日は30分ほどのウォーミングアップ代わりの小刻みにアップダウンする稜線歩きのあと、スゴノ頭の急騰が始まる。ここは、これまでの急登と異なり、一直線に登っていく感じで本当に急だ。ただ、基本は樹林帯なので、全く恐怖感は無い。
越中沢岳も特に最初の取り付き部分が急で遠目にはどこを登るの?というように感じたが、そこは北アルプス、よくここにこんな道をつけたなあと感心するような具合に道がつけられており、難なく登っていくことができる。
越中沢岳のピークで、反対から来られた単独の方に会った。
なんと4泊5日で黒部川源流を周回するように歩いて、今日ようやく下山するとのこと。凄いな〜
東方に目をやると、後立山の稜線から、幾筋もの滝雲が流れ落ちてくるのが見える。
こんなに美しい滝雲を見たのは初めてだ。
後立山の稜線が空気のダムとなり、台風の接近に伴う東風に乗ってやってくる雲たちをせき止めてくれているようだ。
鳶山を越えると、いよいよ最終目的地である立山が手の届く範囲に近づいてきたことが実感できる。さらに嬉しいことに、五色ヶ原山荘の先の分岐で、3羽の雷鳥を見ることができた。昨日の雷鳥は全身が黒っぽかったが、今日の雷鳥はお腹の部分が白く、ちょうど冬毛に生え変わろうとしているところなのかもしれない。
ザラ峠を越え、またまた登り返して獅子岳付近に至ると、同じ方向から縦走してこられた女性に会う。なんと、仲間と赤木沢を遡行され、その後単独でこちらまで縦走してきたということ。羨ましい!
その後は鬼岳や龍王岳のアルペンチックな山容を楽しみつつ、浄土山南峰へ。ここからは一気に人が増え、目前には立山三山のうちの雄山が見える。
ここまでくれば下界も同然。
最後に20分ほど下ったところにある一乗越山荘に荷物をデポし、空身で雄山ピストン。槍ヶ岳に登っていないので、実は本山行初の3000m峰だ。
今回も山頂で記念写真を撮っていただく。
晴天のもと、最高のフィナーレとなった。
あとは、足に優しくない石畳の道をだらだらと下り、室堂バスターミナルへ到着。
立山黒部アルペンルートを利用し、下界へ向かった。
上高地から立山縦走と表題にあり、驚いて拝読させていただきました。これ程の長距離の縦走記録は初めてです。真似はできないですが、僅かな区間でも縦走してみたいです。お疲れ様でした。そして、ありがとうございました(・ω・✌
makotomotoさん、レコを読んでいただきありがとうございます!
何とか3日プラスアルファで縦走出来ましたが、高低差がかなりあったこともあり、毎日一日が終わるころにはヘロヘロ状態でした。。その代わり、目まぐるしく変わる景観に加え、雷鳥、高山植物等との出合や新たな発見もある素晴らしいコースでした。
どの一部をとっても十分価値のあるルートになると思いますので、機会があれば(そしてできれば天気の良い日に)是非縦走してみてください(^^)
orochiさん長い縦走お疲れ様でした。獅子岳でお会いしたものです。
青空のもとフィナーレを迎えられて、お互いに良かったですね♪
後ろから颯爽と歩いてきた姿がまるで風のような青年だなぁ、、と
感心していたのですが、途中でお話が出来てとても嬉しかったです。
orochiさんならどんな沢も山も行けそうですね!
今後のご活躍も期待しています。
改めて楽しいひと時をありがとうございました。
kimkim0506さん、レコを見つけていただきありがとうございます!
赤木沢を遡行後の立山への縦走、本当にお疲れ様でした。最高のルートですよね!!
台風も近づいていましたが、快晴のなか山行を終えることが出来たのも本当に良かったですね。
こちらこそ沢を登られている方とお話できて嬉しかったです。ありがとうございました(^^
先日も米子沢に行くなど、新潟のほうにもちょくちょく顔を出していますので、もしかしたらまたどこかでお会いすることがあるかもしれませんね♪
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