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山梨は河口湖の北岸あたりで「ざくろ石」が採れるらしいと。ただ例によって具体的な場所は不明で、なんでも枯れ沢の最上部だという情報だけを頼りにカミさんと出かけたのだった。
「沢の上流」だから湖の近くは「小川」くらいなはずだ。
そう考えて、地形図を見ながら西の方の川から攻めて行くことにする。地形図に載っていない沢もあるのだから、かなり当てずっぽうだ。
最初の川沿いの道を上って行くと「いまどきこんなのがあるのか?」というくらいうらぶれた小さな集落があり、その中を突っ切ってさらに上流に向かったが、どうも鉱物が出そうな感じがしない。
「どうもここじゃなさそうだ。次の沢に行こう。」と歩き始めた時だった。
道に、鎖もしていない実にくたびれた老犬が座っていた。目が合ったのだが、老犬は老犬らしくのっそりとしていて尻尾も振らない。
が、なぜかその犬が私たちに付いてくる。歩いても歩いてものそのそ付いてくる。
カミさんが「ハウス!」なんて言ってみるものの帰らない。
「困ったね、こりゃ・・・」「まあ、でもそのうちに帰るでしょ?」と放っておくことにした。
次の沢もはずれで、さらにその先を目指すと、集落が途絶えて杉林に突入した。舗装されていた道は土の細い道に変わる。
なんだかいい感じになってきた。犬が付いてきているのだけが、あまりいい感じじゃなかったが。
「こいつ迷子なのか?」「犬なんてちゃんと自分の家はわかってるだろうさ・・・」など言いながらもだんだん心配になる。
道はどんどんと山の中に進入。やがて藪の向こうに谷が見えてきた。流れは見えないが、谷があれば沢があるってものだ。
そこで道を離脱して藪をこぎながら谷底を目指した。
案の定、そこには水量の少ない沢が流れていた。いい感じだ!
で、沢から道の方を見上げてみると犬はさすがに藪こぎはしたくないらしく、道に悄然と佇んでいる。
「まあ、諦めて帰るだろうさ・・・それよりも、この上流だ!」と勇み立って沢を遡上した。
約20分ほど遡ると水は涸れて枯れ沢になり、さらにその先を詰めていくと産地を発見。我ながら良い勘だね。
二人であちらこちら歩き回って採集していたら、ありゃ犬が現れた! 無理矢理藪こぎしたらしく、身体には杉の枯れ葉や枝がいっぱいだ。おやおや。
帰路では沢を下るのではなく、途中からまた藪を越えて道に復帰できた。犬も付いてきた。
こうして犬はかれこれ数時間以上私たちに同行。かなりの山行をしたのだった。
もし飼い主がいるなら探しているだろうな、と思いながら犬に出会った集落まで戻ったが、集落の路上には誰一人もおらず、犬も帰ろうとしない。
困り果てていると、ふと道脇にお寺があるのに気が付いた。うむ、こういう時はお寺の坊さんに聞いてみるのが一番じゃないかい?
寺に入って住職を見つけて事情を話し「この辺で犬を飼っているお宅はありませんか?」と聞けば、あの家じゃないか?と教えてくれた。
そのお宅は最初に犬がいた場所から路地を100mほど入った家だった。
犬と一緒に、といっても犬はあくまでも勝手に付いてきたのだが、その家に行くと家人が出てきて案の定「うちの犬です。」とのこと。姿が見えないのであちらこちら探していたんだそうな。
結果的に犬をラチして連れ回した格好だから何とも申し訳なかったが、こちらの事情を説明すると向こうも笑うしかないようだった。
「なんだか変な山行だったねえ・・・・」車に乗り込んで二人でため息をついたのだった。
こんにちは、2度目のコメントさせていただきました。
前は川の字になってネコと寝ているみたいな日記だったような…、つまり私は『イヌ』とか『ネコ』とかに吸い寄せられやすいのです。
ここ掘れワンワン…、
はたまた、仙人(犬なので仙犬?
退屈だったし付いて行ってみたのかも
ちょっと不思議な山行、イヌとの出会いでしたね。
コメントありがとうございました。
まさに、途中で「このイヌ、ここ掘れワンワンて、ザクロ石の場所を教えてくれないかな、」と思っていました。
犬には犬の気持ちがあるのだろうと思いますが、この犬がどういう気持ちで私たちに付いてきたのか、まったく理解できません。
「暇つぶし」にしてはけっこうな難路だったのですが・・・。
「犬と登山」というと山梨では「高川山のビッキー」が超有名です。
犬も登山が楽しいってことがあるんでしょうか?不思議です。
度々お邪魔します。
イヌは登山が楽しい、のではなく大好きな飼い主と行く(=遊んでいる)のが楽しいのだと思います。
でも、飼い主でもないpasocomさんについていくのは楽しい、とは言えないですよね。
自分(不思議なイヌの事です)のホームの山に何しに行くのか、怪しいやつなのか、
監視していたのかもしれませんね。
「高川山のビッキー」?山梨にはそんな犬がいるのですか?
へぇ〜、興味ワクワクです。
ところで、今回の雪の被害、遅ればせながら、お見舞い申し上げます。
まだまだ孤立している個所もあり、停電中のところもあるのですよね。
寒い時期に本当に大変だと思います。
また自然の驚異の前で人は無力であるというか、自然の怖さを教えられました。
*************
ここに追記:
ビッキーの事、makasioさんの出会われた犬の事、一連レコなど拝見しました。
イヌ好きにとっては、なんか、胸キュン
そうそう、昨年の富士山のイヌ(富士夫君と命名されています)は
いまは下界で幸せに暮らしているようです。
私たちを監視していた、というのもあながち間違っていなさそうな気がしますね。
むしろ、それ以外ないという気がしてきました。
「高川山のビッキー」ですが、残念なことに、もう数年前(正確には2010年)に死にました。
ビッキーは高川山の麓に住み着いて登山者が来ると一緒に護衛するように山頂まで登ったそうです。
そのため「登山犬」と呼ばれて登山者のアイドルのような存在で、訃報が流れた時には多くの登山者が悲しんだものでした。
ネットで調べていただければ多くの情報があります。ヤマレコでも高川山に登った方のレコには必ずその名が登場する名物犬でした。
パソコムさん、こんにちは。わんこ好きです。
一昨年だったかな、丹沢の檜洞丸の犬越路という場所付近で出会った黒い犬のことを思い出しました。
新緑の雨と霧の中、そのワンに先導され、私は共に山行しました。
でも、もうすぐ下山というところでそのワンは突然山に帰ってしまったんです。
はぐれた猟犬のようでしたが、武田家の犬伝説があるところでなんとも不思議な体験をしました。
高川山のビッキー、もう一度会いたかった…
コメントありがとうございました。
丹沢にもビッキーのような登山犬がいたのですね。
その名も「犬越路」とは。で、何と読むのでしょう?
「もうすぐ下山というところでそのワンは突然山に帰ってしまった。」ということはやはり、犬にとっては山の中が自分のテリトリーで、その中に入ってきた人をエスコートするのが仕事と心得ていたのでしょうね。
おそらくビッキーも同じだったのだと思います。
すると私が出会った犬も同じだったのか?ただあの犬は野犬ではなく、普段は人と暮らしている飼い犬でしたが。
去年、富士山頂に犬がいる!と大騒ぎになりましたがご存じでしょうか。
その後、山終い前にボランティアさんが回収して、誰かが引き取ったとかと聞きました。
その犬はいったいどうやって富士山の頂上まで登ったのか?
不思議といえば不思議な話ではありました。
こんばんわ
人間でも動物でも相性や縁と云うものがあるのでしょうね・・
もう、三年まえに亡くなった、うちのネコは元野良ちゃん。
何気に眼が合って、つい呼ぶと、手のひらにゴロゴロ・・
公園には野良ちゃんがたくさん居るのに、この子だけが、わたしになついて・・ついつい家に・・
ふふふ・・その老犬もpasocomさんに何か感じたのではないでしょうか・・
縁って不思議なものですよね
でわでわ
コメント感謝です。
この時の経験は実に不思議でした。
犬だって犬なりの考えがあるだろうと思うのですが、それがわからない。
「人間でも動物でも相性や縁と云うものがある・・・」
そうですね。そのことで書きたいことがあるのですが、ちょっとためらっています。いずれまた。
やっぱり「一期一会」だったのでしょうか。
まさに「縁は異なもの。」ですね
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