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去年の冬に火事で焼失して休業以来、20ヶ月ぶりの再開だ。
私、やぶ蕎麦にはちょっとした思い出があるのでこんなうれしいことはない。
数年前の春3月のこと。春休みの息子と「東京一泊グルメ旅行」をした。
むろん星付きのレストランなど行けるわけもなく、「いかにも江戸前の味」を楽しもうという趣向。
あいにく悪天候の予報だったけどホテルも予約したし、日程を変えることは出来ずの強行だった。
その一日目のお昼に向かったのが「神田やぶ蕎麦」。
午前中は秋葉原を散策し、私が以前出没していたようなパーツ屋を巡る。仕切りされた箱の中に入れられたLEDとか抵抗、コンデンサなどに息子は目を奪われたようだ。
そして店を出てみるとなんと春の雪がこんこんと降り始めている。
そんな雪の中を傘を差して万世橋からやぶ蕎麦に向かった。
趣のある板塀に囲まれた庭から店の前に立つ。ここで待っていれば「次の方、どうぞ。」と声が掛かるはずなのだった。
しかし、出て行く人はひっきりなしなのになかなか声が掛からない。いったいなぜ?と思っていたらそこにひょっこりと店員さんが現れて「あれ、こちらは店の出口ですよ。」という。
この店、富士山みたいに登山道と下山道が分かれていて私たちは下山道のところに立っていたのだった。
私が「では並び直します。」というと、店員さん「いえいえそんな必要はありません。どうぞ中にお入り下さい。」という。
私たちは下山口から店内に招き入れて頂いたのだった。
案内されたのは二人用の小さなテーブルの席。イスも二つきりだから荷物を置く場所が無い。こんな日だから床はなんだか濡れた状態。しかし仕方がないからリュックも鞄も床に置いとけ、と言っているところに店員さんが「これをお使い下さい。」と荷物置き用のいすを持って来てくれた。
私がこの「グルメ旅行」を考えたのは息子に江戸前の粋な「客あしらい」も体験させたかったのだが、このやぶ蕎麦のあしらいには息子も強い印象を受けたようだ。
注文を受けた女将が板場にそれを伝える声。「せいろ〜。さんまい〜」も変わりがなかった。むろん蕎麦も「天たね」もおいしかった。
その後時を経ず、やぶ蕎麦は燃えてしまった。
ふだんニュースに興味など持たない息子が「やぶ蕎麦火事」のニュースにはじっと聞き入っていた。
「あの店はすごかったねえ。」と私が言うと「うん・・・。」という。息子に聞けば、「すごかった」というのは蕎麦ではなく、その「客あしらい」だというのが私と一致した意見。
オリンピックの誘致では「おもてなし」という言葉がもてはやされたが、そんなのを聞く度に思う。本当の「もてなし」とは?
マニュアルに従うのではなく、相手の困っていること、いま必要としていることを察知して、要望される前にその対応をしてしまうということ。
そこには単に「客あしらい」という以前の、日本人の本当の「おもてなし」の心意気、気配りみたいなものが宿っている。
神田やぶ蕎麦の復活。メディアはその店構えと味の復活だけをあれこれ伝えているけど、私はそういう心意気が復活できるかどうかが心配だ。あの優秀なスタッフさん達は再集結したんだろうか。
機会があったら、再開したやぶ蕎麦を訪ねてみたい。
おやおや・・
pasocomさんのマニアックなグルメの一面を見ましたね
わたしも東京の火事でショックを受けたことがあります。
わたしは30代に、青梅街道に面した西新宿八丁目に借りた会社のマンションで8年単身赴任していました
そのときに通っていた新宿大ガードの「思い出横丁」
角のうなぎ屋とか歴史を感じる喫茶店、狭い食堂を毎日歩いてましたが・・
それが全焼したニュースを聞いたのは仙台支店に赴任したころでした。
以来、東京に足を向ける機会とて無いのですが、あのうなぎ屋は、もう一度訪れてみたい店です。
人間長く生きているとそんな思い出の店や場所がありますよね
札幌、旭川、仙台、東京・・若い企業戦士だったころの思い出の地です
惜しむらくは、山に行かなかったことですね(笑
でわでわ
コメントありがとうございます。
新宿「思い出横丁」。いまはなんとHPあります。
そこで調べると「角のうなぎ屋」とは「カブト」でしょうか。
http://www.shinjuku-omoide.com/shop/kabuto/index.html
ここが火事になったのは1999年11月だとのこと。うっすらですがニュースを覚えています。
東京は変化が速いですね。思い出横丁も火事がなくても早晩取り壊されていたかもしれません。
激しい変化の中だからこそ、戦後の佇まいを残していた「やぶそば」は懐かしいのですが。
思い出の場所や店が無くなっていくのは寂しいですね。
ヨーロッパなどでは何年たっても同じ店が同じように営業しているとか。
「やぶそば」にもそういう店になって欲しいものだと思っています。
ぉお!このご主人です!
懐かしいですね
調べていただいてありがとうございます。
>ヨーロッパなどでは何年たっても同じ店が同じように営業しているとか・・
食の文化というものは、そういった総合的なものをいうのでしょうね
古き物も大事に継承していきたいものですね
ふふふ・・くぐり岩の参詣道も復活したほうがいいかも・・ですね
でわでわ
やはり、このお店でしたか。地図で見たらいかにも「角」のところに構えていました。
してみると以前と同じ場所を確保したのですね。
メニューを見るとうなぎというもののなかなかリーズナブル。
なんだか大阪風な気がしますが・・・。
大阪で初めて「まむし丼」というのに出会った驚きを思い出します。
>古き物も大事に継承していきたいものですね。
まさにそうですね。食に限らず・・・・。
わたくしは、まだ行ったコトないのですが…
おもてなしのココロがあるお店、素晴らしいです
今日の夕飯は、おそばにしよぅかなーっ
コメントありがとうございました。
やぶ蕎麦は東京のど真ん中、まわりを高層ビルに囲まれたところに板塀の日本家屋でしたからそこだけタイムスリップしたような感じがするのでした。
おっしゃるように最近のお店では店員をマニュアル教育していますから、接客の時に自分の頭で考えていない。マニュアル通りに振る舞うだけですね。入口を間違えた客がいたとすれば「並び直して下さい。」で終わりでしょう。
子供連れで雪の中、姿を見れば少々長い時間待っていたことはすぐにわかるのでした。
そこでのルール破りの判断は自分の責任でしたことですね。ためらうことは全然なかったです。それがすばらしい。
東京で、ただ一軒の蕎麦屋が営業再開したというだけで全国ニュース。
普通じゃありえません。それだけファンが多かったのでしょう。かの池波正太郎氏も大ファンだったようです。
引用したYoutube動画の中で漫画家の杉浦日向子さんもおっしゃっていますが、そこには味だけではない「客あしらい」の魅力があったのですねぇ。
機会があったらぜひprimaveraさんもお出かけになって見て下さい。
「天たね」はたしか1400円もして注文をためらってしまいますが一度食べる価値がありますよ。
とってもいい気分になったので、コメント遅いですが。。。
>江戸前の粋な「客あしらい」「いかにも江戸前の味」
息子さんとの旅行の目的も奥深く、いいですね〜♪
私も神田やぶ蕎麦に行ってみたくなりました。
去年、中古車屋さんで、新人営業マンが約束破りばかりして平気な態度に驚き、店長に他のお客さんからクレームは来ないのか?と聞いたら「最近はお客様も営業マンもコンビニ感覚なので、気に入らなければよそへ行けばいい。ドライなんです。」との事でした。そんな時代になってしまったのかとさみしく感じました。
やっぱり、おもてなしの心や温かい接客は、大事ですよね〜祝!神田やぶ蕎麦復活
試験でお忙しかったのが一段落されたようですね。まずはおめでとうございます。
東京はいまや世界一のグルメシティだそうで、世界中のどこの料理でも食べることができる、またパリなんかより高級なフランス料理店も多いとか。
しかし東京のグルメの魅力は「江戸の味」ですね。考えてみれば「江戸の味」とは多少気短かだった江戸っ子の好むような「ファストフード」なのかもしれません。にぎり寿司も蕎麦も昔は立ち食いスタイルだったとか。
またご飯の上に具を載せて一度に食べてしまう「丼物」も同様。東京では親子丼、うな丼、天丼なんてのが実においしい店があります。
また「気遣い」の話をすれば、江戸の価値観で一番大切だった『粋(いき)』ということ。べたべたせずに人が知らないところで気を使ってみせる、という気質が残っているんじゃないでしょうか。これがまた心地いいのです。
「神田やぶ蕎麦」、神田とはいうものの秋葉原から徒歩5分ほどの場所。機会があったらぜひ訪ねて見て下さい。
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