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建築設計に携わった者ならほとんど予知できたような騒ぎだ。
新・国立競技場の設計は国際コンペ(設計競技)で行われ、一等になったのがザハ・ハディド女史の提案だった。
これが発表されたときに、私はすぐに「それで大丈夫なの?」と思ったものだった。
ザハ・ハディド女史は過去にいくつもの国際コンペを勝ち取ったことで名をはせていた。ではさぞや多くの実績があっただろうと思うとさにあらず。
当選案に基づいて設計をしようとするととんでもない構造で建てられない、無理して建てようとすれば莫大な費用がかかる。そういう流れで彼女の設計はことごとく実現せず「建築できない建築家」という称号をもらってしまったほどだった。
建築のデザインをちょっと知っていれば今回のカブトガニのような当選案は一目見ただけで彼女の案とわかるものだ。また誰の案であるにしても、その完成予想図を見ればもいかにも予算などまったく考慮していない大規模建築だとすぐにわかる。カニの触角みたいな歩行者デッキはなんと首都高もJR線も越えて北側にまで延びている!
それを当選案にしてしまったのが、そもそもの「ボタンの掛け違い」だったのだろう。
このコンペについては専用のHPがあり、審査の経緯などがわかる。
http://www.jpnsport.go.jp/newstadium/home/tabid/441/Default.aspx
審査委員長は、かの安藤忠雄氏なのだが、当選案はどうみても安藤氏の好みではないようだ。審査に当たって彼はさほど権限をふるうことができなかったらしい。
審査報告を読むと応募案からの最大の選考理由としては「日本の実力(技術力)を世界に見せつける。」ということが最優先だったことがわかる。各案が予算にあっているかどうかというような検討はほとんどされなかったらしい。
で、最終候補に残った三案からも「一番インパクトがある。」などという理由でハディド案が選ばれてしまった。
当初建築費としては1300億円が想定されていたそうだが、ハディド案を見積もってみたら3000億円だと(笑い)。慌てて規模縮小案を作ったものの、いまだに1600億円以上は掛かると見込まれている。
この見積もりになってしまう主なる原因はやはり前例もない大規模アーチ構造を作るためだとのこと。
なんたることか。「日本の技術力を世界に見せつける。」と意気込んだが「それには予算が足りない。」んだそうな。
これまた、過去に何度もザハ・ハディド女史が引き込んだワナと同じものにはまってしまったのだ。
建築設計に携わる一人として言えば予算も含めて実現不可能な案を作るのは建築家じゃない。SF作家だ。
荒唐無稽なSF作家の案を当選させてしまったところに今回の混乱の始まりがある。
潔く誤りを認めて次点の案を当選案とするなど、早急に根本的な対策をしないととんでもない結末になりそうで怖い。
応募46案
http://www.jpnsport.go.jp/newstadium/Portals/0/compe/20140530_compereport_2_obosakuhin_1.pdf
http://www.jpnsport.go.jp/newstadium/Portals/0/compe/20140530_compereport_2_obosakuhin_2.pdf
pasocomさん 、私の職場から近いだけに、地元の話題にもなっています。
国立競技場はすでに解体され、年配者らが長く住んでいた周辺の公営団地から、住民は追い出され、団地は解体されました。地価は急上昇して、固定資産税が上がり、床屋さんなど長年の住民・商店が店じまいし始めています。
職場の野球チームの試合場や、練習場も閉鎖。
今度の新国立競技場は、年間40億円と十倍になる維持費の足しにするため、大型の音楽イベントにも貸し出すのだそうで、もし屋根なしなら大騒音なんだとか。屋根を付けたら、建設費と工期がともにかさみ、これもうまくいかないらしい。
突然、文部大臣は、東京都も金を出せと言ってきてます。500億円として、1世帯3万円くらいかな。
私も市民行事のトラック競技で走ったことのある国立競技場でした。野球場も同じ。
国立はあのままで増設スタンド程度にとどめ、長く利用すべきだった。そうすれば、近隣の影響もなかった。
開会式用に、ロンドン五輪のような仮設一部の競技場を、東京湾の埋め立て地に作れば、交通渋滞も避けられ、ずっと安く上がり、あとあとまで役立ったでしょう。
「汚染水はコントロールされている」と言い張って招致した五輪でした。口先だけで、福島も、そして五輪会場づくりも、制御不能のままです。
コメントありがとうございます。
私はそもそも東京で五輪というのには反対でした。広島とか仙台とか他の都市ならそう反対ではなかったですが。もともと国家プロジェクトなんだからどの都市でもできたでしょうに。
案の定、東京はまたぞや再開発ラッシュ。新しい道路や鉄道が延び、湾岸は超高層マンションがニョキニョキだそうで人口は増加の一方。地方のどこもが人口減に悩まされているのに、ますます格差が広がるばかりです。「地方創生」じゃなかったでしょうかね・・・。
またザハ・ハディド案はその巨大さゆえの圧迫感もあるそうです。なにしろ隣の東京都体育館がちんけに見えるほどの大きさですからその大きさは普通じゃなさそうです。
こう言っちゃなんですが、外国人の設計家には日本人のような周囲と一体になるというふうな設計ができないような気がします。
有楽町にある「国際フォーラム」。あれもコンペで当選した外国人の設計ですが、電車に乗って見ると屏風のような無粋な巨大壁に実に圧迫されます。
「ナントカ大聖堂」みたいな建築が良い建築だという歴史でしょうか。日本には馴染まないですね。
なるほど、全くそのとおりですね。
それにしても3千億とは呆れますね。
3千億円私にくれれば私でも作れると思います。耐用年数とか別にして。トタン板とか使って。もちろん下請けをビシビシとたたきますが。私はおおもうけ
それにしても、こんなデザインをカッコイイと思うのは時代遅れですね。昔の私たちの中学生になった頃の自転車にはそんな宇宙時代のような自転車が流行りましたが、「地味がカッコイイ」というヨーロッパ的な価値観に変わらなければ日本はいつまでも大人の国にはなれないと思います。その点、今の若い子供たちはお買い物自転車のようなのに乗っているのはそれだけ時代が進んだと思うところです。
コメントありがとうございます。
「こんなデザインをカッコイイと思うのは・・・・」はまさに私も同じ感想です。「鉄腕アトム」とかの背景に出てきそうな「子供好み」なデザインですね。
安藤忠雄さんは日本的な、余分な装飾をそぎ取ったシンプルデザインの方ですから、どうみても安藤好きな案ではないと思います。
(私は、安藤氏の建築思想の根源は千利休の茶室だと思います。)
なので、どういう動きであんな案が選ばれたのか? 実に不思議でもあります。
誰が余分な費用を負担するのか?しょせん国民だか都民だかの税金には違いありませんが、すったもんだしていると国際的な信用問題にもなるだろうし、恥ずかしい話です。
たびたびですいませんが、他の作品や最終選考を見ましたが、正直どれも駄作っていう感じですね。絵は上手ですが。
それなら「該当作なし」にするか、最初から安藤忠雄氏に設計依頼した方が良かったですね。舛添氏はどう考えるのでしょうか?もういちど白紙に戻しても国民都民は納得すると思いますね。
前の東京五輪の時の丹下健三の代々木プールの評判が良かったことが審査委員たちの背景にあって斬新なデザインへのこだわりがあったのでしょうか?デザインはとても重要であることは当たり前ですが。
それよりも、天気は大丈夫ですかね?豪雨だったら開会式はヒドイことになりそうです。北京みたいにヨウ化銀を撒いて人工降雨を降らせるのでしょうか?
そもそも10月10日は晴れの特異日でしたが、いまどきの五輪は夏ですからね。日本人として今から心配だなぁー。
いやいや、他の応募作も点検されましたか・・・。
私は最終選考に残った三作品の中、日本人の「妹島和代(せじま かずよ)」さんのがいいと思いましたね。競技場の周囲に緑を配置して、競技場自体も波のようにうねっていて圧迫感を減らしているようです。
http://www.jpnsport.go.jp/newstadium/Portals/0/NNSJ/third.html
これはやはり日本人ならではの感性です。
国立競技場はその名の通り「国立」ですから、あくまでも建て主は国。桝添氏にはどうする権限もありません。五輪招致したのは「東京都」なのに、ここに矛盾がありますね。
丹下さんの代々木プールはその造形で世界を驚かせたことは確かですが、いまはそういうふうに建物単体で主張する世の中ではなくなってきていますね。ほとんど地下に埋め込んで地上は入口だけ。その他の地面は緑で覆ってしまうなんてのがエコ建築としてもてはやされています。
国立競技場もあそこ掘り込んで巨大野壺(^^)みたいにしたらよかったかもしれません。
(大阪万博のアメリカ館がそんなでしたね)
実は国立競技場…私の母校(高校)の近所であります
で、体育祭は国立競技場にて。
建て替えで取り壊しのニュースを見て少し寂しい気がしてましたが、今度は何やらゴタゴタしてるみたいで…
外苑付近にあのデザインは…と思ってたんですが、どうなるんですかね??
コメントありがとございました。utaotoさんは学生時代に東京にお住まいでしたね。
それにしても「国立」で体育祭とは!(^^)。よくぞ借りることができたものです。観覧席から友達の顔が小さくて見えなかったんでは?
ご存じのように、あそこ一帯は「神宮外苑」。絵画館はまあ、建築デザインとしてはいかがなものか?ということはありますが、イチョウ並木やその他の樹木も多くて都内でも屈指の景観ですね。夏には周辺にビアガーデンもできて、なかなか雰囲気もいいです。
そこにこのような超巨大な建築が建てば周辺環境は激変するでしょうね。それでいいのか?
「世界に誇れる。」という価値観はもっと別な意味であってほしいものです。
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