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僕の理解では、本来、市というのは人が足で歩いて一日で行って帰れる範囲の広さに一つだけある最大の町です。遠くの人は、朝暗いうちから家を出て、市で産物を売って品物を買って帰ったと言います。だから市と市の間隔は、およそ30〜40キロ位ありました。その発見は以前ここに書いたことがありました。
https://www.yamareco.com/modules/diary/826-detail-125696
続いて町や村の中心部は、遠くても半日で往復できる距離にあるものかとおもいます。
郡とは、近代(明治以降)では市以外の町村が行政上属したものでありました。しかし古代以来の成り立ちから見て郡は山や川で囲まれた、天然の地形によって区切られてできた範囲とおおよそ重なります。山を歩いていると、群の境が山であることが多く、流れる川を共有しているのがおおよそ郡であることを知ります。
平成の市町村合併の時代、実態は変わらないのに、役場を減らすために合併して知らない名前の市がたくさんできました。郡をまたぐものも生まれ、市と言うには役不足の市も多く生まれました。そして郡を構成する町村が減り、中には消滅した郡もあります。古代以来の由来と名を持つ郡はどうなってしまうのだろう。
これは人が足で歩かなくなり、経済活動の繋がりのみで合併を考えるようになったためでしょう。自分の住む村の山や川の範囲も知らない人が増えたためでしょう。
山地山脈の名前に郡名がつくことも多いです。ただ、山地山脈は郡界にあるものなので、どちらの名をつけるかは微妙なのですが、これには法則があります。それは、京都や東京から見て表側の郡や国の名がつくことです。国名では、飛騨山脈、後立山、奥秩父、郡名では木曽山脈など。
山地山脈の名は、江戸時代にはなく、近代以来の命名に思えます。江戸時代は、高い山を〇〇山と呼び、〇〇山地とは呼ばなかったようです。白根山、立山、御嶽山、白山、など。
北アルプス、南アルプスは複合山脈の山域名です。南アルプスを分解すると、東から順に、巨摩山地、白根山とその南嶺、赤石山脈、伊那山脈の四列が並んでいます。巨摩山地は、甲斐国の巨摩(こま)郡の名です。
https://www.yamareco.com/modules/diary/826-detail-99048
山歩きをする身としては、名のない低山山地の呼び名として郡名を冠するとしっくり来ることがあります。松本付近では、筑摩山地というあまり知られていない名がありますし、北アルプス東列の前衛山脈は、安曇山地と呼んでも良いのではないかと思います。北アルプスとほぼ同義と思われている「飛騨山脈」とは、言葉本来の意味としては飛騨と信濃の境の穂高や槍までは指しても、越中の立山は飛騨山脈ではないし、その黒部川右岸山脈は(京都から見た)後立山であり、梓川左岸と高瀬川右岸に囲まれた、常念岳や餓鬼岳あたりまではそれらのどれでもありません。南アルプスに(無名ながら)巨摩山地があるように、北アルプスには安曇山地があって良いのではないかと思います。安曇盆地に接する黒沢山や、鍋冠山、大滝山に小嵩沢山の山彙を、そして霞沢、蝶ヶ岳、常念、大天井、燕、有明山、餓鬼岳までの山脈を、密かに私は安曇山地と呼びたい。安曇野山地じゃないですよ。野をつけるとなんかチャラくなってしまいます。
これらは信濃側の里から見える、「北アルプス」そのものです。苦労して図にしてみました。図を見れば、「安曇山地」は、高瀬川と梓川に囲まれた山塊なのだとわかります。欲を言えばこの安曇山地は南安曇山地で、後立山連峰は北安曇山地と呼びたい。ウシロという屈辱的な名を廃して。
右の写真は、きょうたまたま木曽福島に行ったら、「木曽郡民会館」という建物があり、郡に関してここ数日悶々考えていたので、感激しました。木曽郡は、郡の意義を継承しています。というか木曽郡内には市が一つもないから、郡の役割が生きているのかな。郡民よ、誇りを持て。半端な市民になるな。
こんにちは。
私の住所は羽島郡ですが、限りなく岐阜市中心部に近いところに住んでいます。私の息子は名古屋の大学へ行くのに、自転車で毎日岐阜駅まで通っていました。
でも「郡」としてしまうと、いかにも田舎者臭く思われそうなので「お住まいは?」と聞かれると「岐阜です!」と応えてしまいます。妙な心理ですね。
郡を滅ぼしたのは、そんな郡民たちの脱田舎衝動だったのかもしれません。田舎であることを「臭い」と思う限り、臭みはとれないのかもしれません。羽島にはおそらく深い意味の語源ああるのではないかと思います。
米山さん、こんにちは。
「後立山連峰は北安曇山地と呼びたい。ウシロという屈辱的な名を廃して」
もう、その通りです! さすが、米山さん、分かってらっしゃる!!
私は、絶対に「後立山」と言う言葉を使いません。
(ひょっとして勘付いてらした?)
何か代わりになる言葉はないかな、とずっと思ってました。
まあ、人が使う分には気にしないようにしてます、一応。
ついでに、安曇山地は、常念山系と呼んだりしてますが、時折、「前山」と言いそうになります。
おお、郡民のヤマムスさん。南北安曇山地は我らが物ぞと誇ってください。
甲府に居た時、甲斐、秩父国境の金峰山の稜線を、奥秩父と呼ぶのに違和感がありました。金峰山の表は甲斐の荒川源流の修験道で、7世紀からの聖山なんですよ、なぜか富士山よりも強く。
あそこは山梨郡なので山梨山地でもいいのですが、山梨郡の名は明治以降、県名に掠め取られてしまったので、ちょっと複雑なのです。
僕も常念山脈なんて呼んでいましたが、最高峰は大天井なのに、ちょっとかわいそうですね。
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