舞台美術と演出がさわやかで、とても良かった。前半の枯れ葉を敷き詰めたような赤茶色の舞台が鮮やか。オネーギンとレンスキーの決闘シーンが、夜明け前の朝靄のようなスクリーン越しでずっと進む。このあたりの照明効果が凄く良かった。
フルオーケストラに互角の声量とはこういうものかと、生演奏の実力を知った。主役級も合唱組も、ロシア語だろうがイタリア語だろうが歌ってしまうもんか。歌手もダンサーもオケも照明さんも音声さんも、この3時間のために凄い稽古しているわけで、切符代も千円や2千円てわけにはいかないと納得する。
「オネーギン」は19世紀ロシアの古典散文詩で、ロシア人なら誰でも知っている古典とのことで、僕も高校時代のロシア語ファン時代に岩波文庫で和訳で読みました。でもチャイコフスキーがオペラにしているとは、知らなかった。チャイコは全般にかなり好きだけど、それでも存在を知らなかった。やっぱり、地方では、上演の機会そのものが少なかったからだろうか。ワグナーやモーツァルトのオペラなら知っているのに。オネーギンもチャイコも知っていたのにチャイコのオネーギンは知らなかった。
バレエでもオネーギンがあり、ウチの中三バレエ娘は筋書きをだいたいご存じだった。オネーギンもやはり古典劇にありがちな「なんて愚かなダメ男」の物語だ。200年前の帝政ロシアとはいえ、浮気、ケンカ、放蕩におぼれるダメ男オネーギンに感情移入できない。でもダメな男は永遠なのだと思い直す。バレエをやっている娘は、眠りの森とか白鳥の湖とか、愚かであさはかな王子様が定番なので、ダメ男に手厳しい。しかし、バレエと違ってオペラは、ロシア語ながら歌詞が有り、サイドに日本語字幕が出る。原文ロシア語の韻を踏むエッセンスこそ味わえないけれど、どんな気高い思索を歌い上げているのかは、よくわかった。ダメ美学を至高のレベルに歌い上げるところが永遠不滅なんだな。
中三娘は来週のコンクールに向け、毎日稽古を休めないので見られなかった。というか、きょうは新学期始まって、いきなりの定期テストだそうなんだけど、試験前日でもバレエ稽古が最優先。ウチは親は勉強しろとか、絶対言わない。この年頃でやりたいことをとことんやらなければ、ダメ男ダメ女になる。
安めの席なので、双眼鏡は必携。東郷平八郎元帥が使っていたような骨董双眼鏡、重いけどレンズの品質が素晴らしい。
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