北鎌尾根、小槍、奥穂高岳、そして台風10号


- GPS
- 147:35
- 距離
- 60.3km
- 登り
- 4,862m
- 下り
- 4,849m
コースタイム
- 山行
- 2:30
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 2:50
- 山行
- 12:20
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 13:00
- 山行
- 9:30
- 休憩
- 1:10
- 合計
- 10:40
- 山行
- 6:00
- 休憩
- 2:30
- 合計
- 8:30
- 山行
- 6:25
- 休憩
- 0:30
- 合計
- 6:55
天候 | 8/11 晴、8/12 晴、8/13 晴、8/14 曇、8/15 曇、8/16 雨、8/17 曇のち晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2019年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
予約できる山小屋 |
横尾山荘
|
写真
この雪渓をおりたあと、しばらくしたら、3人組のパーティと出会います。話を聞くと北鎌のコル付近で道に迷い、水が無くなったので下山してきたのだそうです。このまま、水俣乗越を目指しますとのことでした。
正直言うと、ほとんど垂直の壁にビビりまくりで、自分のカメラで撮影する余裕もありませんでした。ここからはガイドの中島さんの撮影です。
感想
膝や肩を痛めてしまい、夏山が楽しめなかった昨年のリベンジを果たすべく、北鎌尾根+槍穂縦走、できれば西穂までを6泊7日で結ぶという贅沢な山行計画を立案しました。しかし、あいにく台風10号が接近してきたために、これを避けながらの行動を余儀なくされてしまいました。
1日目:公共機関で上高地に入りました。上高地は猛暑を避けるための観光客であふれかえり、バスも沢渡手前で渋滞にはまり30分くらい遅れての到着となってしまいました。上高地到着後、昼食をと思っていたのですが、観光客があふれかえっているので、断念し、徳沢園まで我慢して、カレーを食しました。横尾山荘は通常の山小屋とは異なり定員制ですし、またお風呂もありますので、明日からの山行に備えて英気を養います。また、横尾山荘のお弁当はコモパンを使ったパン弁当なので日持ちします。ということで朝食用と昼食用のお弁当をお願いするなど、最後の準備をしました。
2日目:深夜1時に目が覚めてしまったので、少し悩んだのですが、起きることにしました。静かに行動し、談話室へ移動して朝食を食べ、2時過ぎに出発します。外はもちろん真っ暗なのでヘッドライトをつけて行動します。槍沢ロッジまではだれにも会わず、それはそれは静謐な登山でした。槍沢ロッジでは、槍沢ロッジを通り過ぎてもまだ夜明けにはならず、結局、夜明けはババ平を過ぎてからになりました。大曲からは槍ヶ岳へ向かう他の登山者とわかれ、水俣乗越を目指します。ここは地味につらいコースです。水俣乗越では休憩を取りながら天気の最終確認します。天井沢側の急坂を下ってしまうと、登り返しはかなり困難になりますので、北鎌尾根行きを中止するならここです。幸いにも台風の影響はまだなさそうなので、決行ときめて、峠を下ります。北鎌沢出会まで、2組のパーティに出会いました。一組は前日、北鎌のコル付近で道に迷い、水が無くなったので中止したというパーティ。もう一組は、湯俣から上がってきたものの時間切れで中止したパーティでした。北鎌沢出会には9時半には到着し、北鎌のコルまでは確実に上がれそうです。右俣と左俣の合流地点で水をくみます。全部で4.5リットルほどをもって右俣の急登を登ります。すでに気温が上昇し、なかなかつらいです。結局、5時間をつぎ込んで北鎌のコルに到着です。2年前に北鎌沢出会いでテント泊したときは3時間弱で登れたことを思うと、暑さと長時間行動でのバテが来たのでしょう。できれば天狗の腰掛までとも思ったのですが、時間切れなので、ここでテント泊にします。1時間ほどあとに、60代の男性も上がってきて2張となりました。この日は貴重な水を使いパスタを茹で、たらこソースをかけて食べ、就寝しました。
3日目:隣の男性には前日のうちに断りを入れておき、了解をいただけていたので、夜の3時前に起床して、朝食の準備をはじめます。パンとコーヒーの朝食です。テントを片付けてもまだ夜明け前でしたが、3度目の北鎌尾根なのでほぼ道もわかっているので、起床されていた隣のテントの男性に声をかけ、ヘッドライトをつけて出発します。男性は夜明けをまって出発するとのことでした。天狗の腰掛までは、かなりの急登です。木の根をうまくつかみながら登っていきます。天狗の腰掛の手前の小ピークでは前日追い抜かれた若い男性がテント泊をしていました。声をかけて先に行きますが、結局独標の手前でまた追い抜かれてしまいました。天狗の腰掛を過ぎると独標が眼前に広がります。なかなか立派な山だと思うのですが、100名山はおろか、300名山にも含まれていないのは謎です。よく見ると独標の山頂に登山者の姿も見えました。いいところでビバークをしたようです。天狗の腰掛を過ぎても道は低木の間を抜けていくのですが、途中で一か所、明らかに動物がガサガサうごいている箇所がありました。狐か狸でしょうか?あるいは熊でしょうか?登山道から10メートルくらい離れた場所なので、とっとと通過します。そういえば、北鎌尾根ではライチョウを見たことがないのですが、これらの野生動物にヒナがやられてしまうのかもしれません。まあ、自然の営みですので、仕方がないことです。小さな尾根を過ぎると独標のトラバース道が見える場所にきます。トラバース道に異常がないことを確認します。コの字のでっばりを乗り越え、チムニーまで進み、稜線へと上がります。チムニーから上がると独標よりも少し先のピークにでてしまうので、独標はパスします。ここからが、北鎌尾根のハイライト区間です。天気もよく槍ヶ岳がくっきりと見えます。来た甲斐があったというものです。あとは、基本的には稜線を進みます。トラバース道らしきものがあっても安易にはすすまず、まず稜線をすすみ、どう見ても無理と判断したら戻ってトラバース道にいくという方法をとれば安全なルートを進めます。いくつものピークを越えて11時半に北鎌平に到着です。気温も高く時間も早いので、30分ほど槍ヶ岳を望みながら休憩をとります。大槍の付け根に近づくと、男性がいて、「ここは北鎌平ですか?」と尋ねるので、すでに通過しましたよと答えると、なんと湯又から千丈沢経由で上がってきたとの由です。風化の進んだ岩の多い個所を無事に通過できて何よりでした。カニのハサミを目標にすすみ、これ以上進めない箇所から大槍に取り付きます。一応、カラビナとスリングはすぐに取り出せるようにしましたが、過去2回同様にそのまま登りきることができました。幸運にも山頂にはそれほど人はおらず、記念の写真をとってもらい、槍ヶ岳山荘へと下ります。初めて北鎌尾根をやったときは、水不足で苦しんだのですが、今回は1リットルちかい水を残して到着しました。槍ヶ岳山荘の入り口に、小槍クライミングのポスターが貼ってあります。槍ヶ岳には何度かきたことがあるものの、スケジュールの都合から申し込めなかったのですが、どうせ台風接近で途中で下山することになる今回ならば、すこしくらいスケジュールが狂っても問題ありません。明日もまだ天気が持ちそうですし、窓口で翌朝の空き状況を聞くと、参加できるとのことなので、予約をします。槍ヶ岳山荘のテン場はもちろんすでに一杯なので、翌朝、ここまで戻ってくるつもりで殺生ヒュッテまでくだります。殺生ヒュッテのテン場にテントを張り、小屋の夕食を食べて就寝しました。
4日目:小槍クライミングは朝7時に集合なので、ゆっくりです。4時半に起床し、シリアルとコーヒーの軽い朝食を食べます。前日の夕方に雨が降ったので、テントが濡れてしまい、可能な限り水滴を落とす努力をします。ただ、天気自体は上々です。5時に殺生ヒュッテを出発し、6時前に槍ヶ岳山荘に到着します。時間がありますので、コーヒーを頼み、ゆっくりとした時間を過ごします。7時に玄関前に集合すると、ガイドの中島さんに加え、男女1名づつの若者がいます。聞くと槍ヶ岳山荘の従業員の方で、私同様、初めて小槍クライミングに挑戦するとのことです。玄関前でレクチャーと懸垂下降の方法を教えてもらい出発します。そもそも、自分としてはどこから小槍に続く登山道があるのかが分かっていなかったのですが、大槍に向かう登山道が始まる箇所から、すぐに左に行く小径がそれでした。あまり足場の良い場所ではなく、加えて朝露で濡れているのでちょっと緊張します。小槍の根元まで、30分弱はかかったと思います。根元から見上げる小槍は、大キレットや北鎌尾根の岩場の比ではありません。正直、登れる気がしません。が、ガイドの中島さんはリードクライミングをして登って行ってしまいます。上から声がかかり、まず15メートルほどのクライミングをします。ここは、それほど難しくはありません。登りきると、70cm四方くらいの狭い岩場に4人の人間が立ちます。正直言って、ここでも怖いです。ここでセルフビレイをして待機します。ガイドの中島さんはさらに、ほぼ垂直の岩場を登っていき、あっというまに小槍の天辺に到着してしまいました。そして、声がかかります。トップロープクライミングといい、滑落防止のためのザイルはありますが、基本的には自分の力で登らなくてはなりません。緊張のあまり、セルフビレイを外すのを忘れるという失態からスタートしたくらいです。スタンスになる場所も、わずか数センチの凹みしかないような箇所が多く、困難を極めます。どうしても一か所だけ、ロープにぶら下がった状態でトラバースしないと突破できない箇所がありました。どうにかこうにか30メートルほどの絶壁を登りきると、山頂です。広さは数メール四方です。残念なことにガスがかかっていて眺望はゼロです。槍ヶ岳山荘の若者二人も上がってきて、謎のアルペン踊りを撮影してもらったらたり、手遊びを撮影したりしました。大槍の方から声が聞こえるので、晴れてくれればと思うのですが、ダメでした。最後は懸垂下降で一気に付け根まで下ります。一度だけ、クライミングジムで3メートルほどの懸垂下降をしたことがあったのですが、実践はこれが初めてです。最初の出だしこそ緊張しましたが、らくちんです。あとは楽しく槍ヶ岳山荘へと戻ります。従業員の若者二人は、今日は8日ぶりの入浴日だそうで、その話で延々盛り上がっています。住み込みで貯めたお金で英語を勉強しに行くといっていました。若いっていいなぁとオッサンらしい感傷にひたります。天気はすっかりガスってしまったのですが、槍ヶ岳山荘で身支度を整え、とりあえず南岳小屋まで行くことにします。快適な縦走路ではありますがずっとガスがかかり眺望はありません。日差しがなく、風も強くなってきたので肌寒いくらいです。さすがに台風の接近が迫っているせいか、途中でであった登山者も10名に満たない程度でした。慰めになったのは途中でライチョウの親子に会えた点でしょうか。南岳小屋もガラガラでわずかに5名の宿泊しかありませんでした。おいしいという前評判通りの夕食を食べ就寝しました。
5日目:台風がなければ、大キレットを通り北穂高岳を経て穂高岳山荘まで行きたいところなのですが、暴風ほどではないにしろかなりの強風加えて小雨まじりのガスなので、あきらめて下山することにしました。天狗原分岐まで戻り、天狗原を経由して下山します。初めて通るコースなので、少しだけ楽しみです。下山を始めてすぐは、鎖やハシゴのあるエリアですので注意が必要です。小雨で濡れて滑りやすいのも要注意です。横尾尾根のコルまで降りてくると雲に下に出たおかげで見晴らしがよくなります。小雨もやみました。どんよりとした天気ではありますが、右手の本谷のカールはなかなか見ごたえのある風景です。バリエーションルートになりますが、行ってみたい場所です。左手の天狗原側も巨石が広がる氷河地形です。天狗池に移る逆さ槍ヶ岳が有名ですが、ガスにかかって、槍ヶ岳がどの方向かもわかりません。槍沢の登山道に合流しても台風の影響でしょう登山者もほとんどいません。槍沢ロッジで焼鳥丼の昼食を食べさらに下山します。横尾を過ぎ、徳沢まで戻ってきました。このまま上高地まで下山してもいいのですが、徳沢ロッジで空室状況を聞くと、個室でも取れるとのことなので、奮発して4人部屋に泊まります。ここもお風呂のある山小屋なので入浴してさっぱりし、生ビールを飲み、のんびりとした時間を過ごします。
6日目:台風は夜半に通過したはずなのですが、朝起きると雨が降っています。朝食を食べても雨が降り続いています。上高地へ下るにしても2時間は雨の中を歩かなければいけないのか?と思うと、どうせ雨の中を行くのならばということで、涸沢に上り返すことにしました。横尾までは、雨の中のトレッキングも悪くないなと思わせる穏やかなものだったのですが、そこから涸沢は難路となってしまいました。予想に反して雨脚は強くなり、沢が増水していました。何回か沢を横断しているうちに、登山靴の中は完全に水浸しになり、ザックの一部にも浸水してきました。体力的には穂高岳山荘まで行けそうだったのですが、乾燥室ですべてを乾かしたいという欲望には勝てず、涸沢ヒュッテ泊まりにしました。この日は時間が早かったので、素泊まりにして自炊にしました。
7日目:天気が良ければ奥穂高岳まで行くつもりで早朝に起床しました。どんよりとした天気ですが、雨はあがりました。とりあえず、軽く食事をとり、出発します。歩いていると雲の隙間から朝日が差し込み斜面が赤く染まります。ただ、ザイテンより上はガスに覆われどんよりとしています。奥穂とは思えない登山者の少ない登山道を上がっていくと、コースタイムよりも早く穂高岳山荘に到着します。稜線まででると風が強く、天候の回復に期待を込めて、小屋で少し休憩を取ります。しかし、1時間あまり粘っても回復しないことから、あきらめてガスの中を奥穂高に上ります。コースタイム通り50分で山頂です。人生5回目の奥穂高登頂です。このあとは、吊尾根を通り、紀美子平を通過し、時間がないので前穂はパスし、岳沢小屋を経て、上高地へと下山しました。
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