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21世紀の今では山岳古典の一冊に数えられようか。
世紀末辺りに住んだ札幌の「オバケ屋敷」には、この手の山書が単行本でゾロゾロと並んでいたのだったが、山岳部員でありながら高所登山に興味のなかった私は手にしなかったのである。
これを読んだきっかけは、読み返した雑誌「coyote」��65(2018秋号)の山野井泰史氏の項「ぼくはこのような本を読んで山に出かけた」に紹介があり、ご自身のヒマラヤ単独行で自らを鼓舞する為に携行したとあった。
連絡将校のテリー氏と医師？のウルズラ氏(♀)の待つBCから単身【ロープも通信機器も携行せず、ピッケルとアイゼン、わずか一ｍ(！)のザイルとアイスとロックのハーケン各一本に食料、ガス、一�團謄鵐函△修靴同�毛寝袋、高度計にサングラス（懐中電灯も持たず！）という『バイ・フェア・ミーンズ(P.164,173)』】、一停滞の6日間で「死の地帯」を登って降りてくるという記録である（標高差の記載はない）。早々とサードマン(＋三人目の少女)が出現する。
一人、単独、独り、長い影の夜、黒い孤独、、、そして、白い孤独。
最終日にはすべてを捨て、地震で崩壊してしまった往路を辿ることも叶わず初見でしかもザイルは無いので懸垂下降も不可のクライムダウンのみ(ダブルアックスではないと思われる)という条件下で生還を果たす件が意外に呆気なく書かれているところに凄みを感じた。下降時の心理的余裕の無さ、ギリギリ具合の表れに思う。というのも「自己の内面を鋭く描いた作品」と担当の奥田氏は書くように、メスナー氏の心理描写が長々長長と(些かクドく)記録されているが、核心とも思われる最終下山日に裂いた頁数は僅か8ページ。
カッチョエエ！ これぞ真の単独行！ 20代で読んでいたら私もこんな世界を求めたかもしれない。読むに遅すぎた。
21世紀の今でこそ少人数無酸素アルパインクライミングの記録を見掛けるが、大規模極地法登山が当たり前の当時としては革新的記録だったことだろう。この本、この記録を「物差し」にして、今日日行われている先鋭的アルパインクライミングが進展していったのだ。山野井氏のギャチュンカン然り、日本山岳会東海支部のウルタル�曲�然り。と同時に、これら二山行の凄絶さの理解も深まった。
これを読んで、先月号の岳人誌「ひとりの山――単独行を楽しむために」を読み返すのだが、何故ひとりで登るのかに対する回答が皆、ふるっていた。と言うことは全く無くて普通過ぎて困った(P.16,17)。
私なんかは他人と行ってもその人と一体何を話せばいいのか判らないから、というのがあり、困ったことである。
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