![]() |
![]() |
この雨、八ヶ岳にも降り注いで残雪を溶かしているのだろうか・・・。
日本列島の背骨に当たる部分に聳えて、稜線に降る雨を太平洋側と日本海側に分ける稜線を「中央分水嶺」という。
北海道では大雪山系で三股に別れて太平洋・日本海・オホーツク海に流れる分水嶺になるのだそうだが、本州では青森から山口まで一本のラインで繋がっている線だ。
この中央分水嶺が我が山梨周辺ではどこを走っているかというと、東は三国山から甲武信ヶ岳まで埼玉・長野県境をなし、そこから山梨・長野県境となって、金峰から小川山へといういわゆる奥秩父の主脈を西進する。この辺は銀座通りみたいなルートだ。
小川山から西に向かうと一変、藪こぎのバリルート。しかしそれも信州峠まででそこからはファミリーでも手軽に歩ける横尾山までのハイキングコースだ。そして、その先はまた人気(ひとけ)の少ないルートとなり、突然に県境を離れて飯盛山(めしもりやま)に至る。
飯盛山を下ると平沢峠。獅子岩のとなりにりっぱな駐車場を持ち、中央分水嶺の標識を見ることができる(上図右)。
その駐車場の西はなんとゴルフコースだ。中央分水嶺はゴルフ場をほぼ二分して下り、小海線と国道141号線に突き当たる。
小海線を横切る所には「JR鉄道最高地点」の巨大な標識がある。標高は1375mだ。
国道を横切ればそこからは「県界尾根」となって赤岳に登り詰め、再び山梨・長野県境を離れて横岳から蓼科山まで向かう。
(上図左は三国山から蓼科山までの中央分水嶺)
この分水嶺を離れた雨はどこに流れていくか。
日本海側は単純。水は全て千曲川となって佐久平を北に向かい、新潟県に入って信濃川と名前を変え日本海に注ぐ。河口は佐渡汽船などが発着する新潟港だ。
一方、太平洋側は多彩。長野・埼玉県境では中津川、下って荒川となって東京湾に注ぐ。河口脇にはTDL(ディズニーランド)がある。
甲武信ヶ岳から西、赤岳まででは笛吹川・釜無川となって甲府盆地を流れ、やがて富士川として駿河湾に注ぐ。河口の手前、東名高速の富士川SAからは富士川の流れを見下ろすことができる。
赤岳から北に向かう縦走路の西側は美濃戸など登山拠点の脇を流れていったん諏訪湖に入り、そこから天竜川となって伊那谷を下って浜松で太平洋は遠州灘に出る。
大同心に降った雨が浜松に流れ着いているなんて普通考えもしないね。
中央分水嶺ではないが面白いのは阿弥陀岳の付近だ。赤岳−阿弥陀岳の稜線の南に降った雨は立場川となり釜無川に注いでいる。つまり富士川水系。しかし、同じ稜線の北側は美濃戸経由の天竜川水系。
麓ではこの二つの水系の間には顕著な稜線がない。富士見の町の真ん中、横断歩道橋の架かった「富士見峠」という交差点が分水嶺だ。阿弥陀と入笠山を結ぶ線の南は富士川水系が長野県に食い込んでいるのだった。
たとえば赤岳の山頂に立ったとすると、稜線を隔ててかたや新潟・佐渡まで流れて行って甘エビを育み、反対側は駿河湾に注いで桜エビになるなんて考えると実に楽しい。まさに「ニッポンの頂き」に立っているという最高な気分だ。
**************************************************************************
10年ほど前に「社団法人日本山岳会」が創立100周年記念事業のひとつとして「中央分水嶺踏査」を実行した。
約6,000人の会員「全員参加をモットー」に27に分けた区間を25地方支部と首都圏で分担し、2006年に全てのルートを完踏したとのこと。下記にその踏査報告がされている。興味ある方はご一読を。
http://www.jac.or.jp/info/100/bunsuirei/
おはようございます
最初のルート図見て、pasocomさんの山行計画か?と思いました(^^;
でも、中央分水嶺・・これ、いいですね
百名山は結構、目指しておられる方が多いので、日本の分水嶺を歩く!なんて面白そうです。
八ヶ岳では、県界尾根?の方を通るのですねぇ・・
これ・・誰かがきっと刺激受けて・・やるかもね
でわでわ
早々のご訪問ありがとうございます。
地図に赤線が引いてあるとヤマレコユーザーとしてはすぐに計画ルートか?と思ってしまいますね。
いや、しかしこの赤線部分だけでも歩くとなると5日くらはかかるでしょうね。特に書いたように小川山〜信州峠はシャクナゲのヤブ漕ぎルートだそうで、私も注意しているのですがヤマレコでもこの3年間に2つしかレコを見掛けません。ここだけで丸一日以上所要するようです。
私自身も大弛峠〜金峰〜小川山、県界尾根〜赤岳〜中山までは歩いているのですが、やはりバリルートは相当なネックですね。怖いもの見たさで一度挑戦してみたい気持ちはあるのですが・・・。
中央分水嶺は当然関西あたりでもあるわけで、ネット検索すると「中央分水嶺 高島トレイル」(琵琶湖の北の方)」なんてのがヒットします。
http://www.takashima-trail.jp/images/pdf/2014event.pdf
uedaさんも意識してどこかの区間を走破、なんていかがでしょう。
pasocomさんおはようございます。
私はいま修業のためにヤマレコ休止宣言中ですが実はちょこちょこヤマレコを見ていて言わば修業の小休止です。そんな訳で微妙ですがコメントしたくなりました。
実に面白いですね
中央分水嶺ではありませんが安曇節に「槍で別れた梓と高瀬、巡り逢うのが押野崎」という歌詞が私は好きです。というかどこの分水嶺も何かしらロマンを感じます。そのロマンは山に登る目的と共通しているようにも思えます。
日本山岳会の経緯はともかく、100周年記念の行事として壮大な調査はとてもらしくていいですね。日本野鳥の会のような新しい側面の感触も得ました。
ご紹介のページを見ると掲載された新聞の紹介があって、そこをちらりと見ると、中央分水嶺の最高峰は長野県の乗鞍岳で、最低点は千歳空港の20メートルという記事がありました。こうなると、高い中央分水嶺よりも低い分水嶺の方が何となく面白いというか興味が出て来ますね。
我が愛知県は残念ながら分水嶺的には面白い山はありませんが、八ヶ岳に関しては意識がありませんでしたので別の興味が出てきました。
よい日記をありがとうごさいました。
murrenさん、修行中とはいったいなんの修行でしょう? ひょっとして住職様ですか。
murrenさんのコメントを読み、初めて「安曇節」というのを知りました。
安曇野を歩くと南に流れている高瀬川がどうして信濃川に合流するのか、とても不思議な感じですが、改めて地図を眺めると確かに槍からいったん北に流れてぐるっと迂回して梓川に合流しているのですね。
余談ですがJR中央線の特急名「あずさ」は当然この梓川からとったのでしょうが、JRの列車名の中でも最高級にいい名前だと思います。品格とロマンを感じますね。
中央分水嶺の「最低地点」は驚きました。北海道で新千歳空港の中をよぎっていることは知っていましたが、だとするとその稜線は札幌側と苫小牧側に向かって標高を下げているはず。
(本文に書いた踏査報告でもさすがに空港の中は踏破できなかったらしい・・・笑)「最低」なら「標高0m」まであるんじゃないか?と直感的に思うのですが・・・・。
この分水嶺、本州の西端である山口ではどうなっているんでしょう??これも興味津々です。
パソコムさん、奇遇です。おとつい、日本山岳会山梨支部の会誌「甲斐山岳」一号(2009)をいただき、昨日、分水嶺踏査の項を読んでいたところです。甲斐山岳は、県立図書館、市立図書館にもありますよ。貸し出しはできないけど閲覧ができます。
中央分水嶺踏査、2004年頃、全国の日本山岳会でやりましたね。以前僕がいた北海道では、凄く長くてタイヘンだったようです。北海道支部では、立派な一冊の本ができていました。山梨県、長野県、意外に短かったですね。
分水嶺でぼくが、お!と思ったのは木曽川源流の鉢盛山と奈良井川(→犀川→信濃川)の源流の中央アルプス将棋頭山やや北からの流れが、20キロ以上も南北が逆転していて、鳥居峠のところでわずか2キロくらいのところをすれ違い、両大洋に泣き別れするところです。
それから、日本海、太平洋境が多分一番細い、北海道道南の静狩峠付近、太平洋の海岸から水平距離わずか300mほどのあたりに、日本海側へ流れる来馬川の分水嶺があります。この崖下の室蘭本線小幌駅は、二つのトンネルに挟まれた、鉄男には有名な秘境駅です。
追記:
すっかり忘れていましたが、以前、こんな書評を書いていました。
http://aach.ees.hokudai.ac.jp/xc/modules/AACHBlog/details.php?bid=248
さっそくのコメントありがとうございました。
北海道では書いたように分水嶺が3本ある。その長さたるや大変なものでしょうね。本州分と同じくらいかも。
山梨・長野あたりは逆に分水嶺が「銀座通り」みたいなメジャー登山道だったりしますから、意外と踏査するのは簡単だっただろうと想像できます。
中央分水嶺は県境になっていることも多く、それだとわかりやすいのですが、長野県内では確かに塩尻峠−善知鳥(うとう)峠−鳥井峠などが分水嶺なはずですが、かなりこみ入っていて詳細にトレースするのは難しいです。
やはり、さすが長野県は「十州に境を連ねる国にして」のとおりです。
私は山登りを始める3年前以上は、富士見峠を境とした、天竜川と釜無川にわかれる、分水嶺をしらべながら、町中の河川と用水路を追いかけていました。
入笠山はスキーゲレンデ、西山保育園前、富士見小学校前、富士見峠、桜ヶ丘団地横、分水牧場、立沢の尾根、と分水嶺と川や用水路を追いかけました。水田用の用水路が入り組んでおり、その水門の開閉によって、どちらに流れるか変わる、なんてところも多々あります。
所詮、天竜川も釜無川も太平洋に流れますが、雨の日に道路に流れる水を見ながら、どちらにながれるのか、その境はアスファルトの道路のどこか、そこを境に別々の旅を行う水に思いをはせながら眺めるのは楽しいです。
コメントありがとうございます。
やはり私が感じていたように富士見の町の中での雨の流れは複雑なのですね。
地図で見てもあちらこちらに川(水路?)が書かれていて、どこが分水嶺なのかまったくはっきりしませんでした。
「水門の開閉によって、どちらに流れるか変わる、なんてところも多々」だとは・・・。
富士見峠の交差点からは入笠山の沢入登山口まで行けますが、すぐ脇に富士見小学校がありますね。子ども達は毎日分水嶺を登下校しているんだなあ・・、と面白く感じたものでした。
確かにいずれ太平洋なので「中央分水嶺」じゃありませんが、駿河湾と遠州灘ではかなり違う場所ですね。
ほんの少し降る場所が違う雨水がそれほど違う径路を辿って海に向かうなんてなんか実に不思議な感じがします。
関西だと琵琶湖が太平洋側になるんでかなり北の方ですね
京都市内から少し北に入った美山とかは由良川系なので日本海側…
確かに高島トレイルが分水嶺となってますね
面白いです。
歩きたくなります
お久しぶりです。コメントありがとうございました。
時々レコを拝見していますがお変わないようでうれしいです。
さすがに関西の方はあまり詳しくわかりませんが、滋賀県は全域琵琶湖に注いで「瀬田の唐橋」から瀬田川−宇治川−淀川となって大阪湾に注いでいるということでいいのでしょうか。
してみると敦賀のあたりはかなり日本海側に寄っているのですね。再認識です。
京都の市域は言わずと知れて鴨川が南に流れて淀川に合流ですね。
地図で改めて京都の北の方を見直してみましたが、「京都市」の範囲はみな桂川で大阪湾に向かう水域、その北の美山などは由良川で日本海に注いでいるようですね。ただし南丹市の南半分は桂川上流らしくこちらは太平洋水域なのでしょうか。どうもこの間に中央分水嶺があるようです。
このあたりは分水嶺といってもさほど高い山があるでもなく、そういう意味ではわかりにくい分謎めいている感じで却って面白そうですね。
高島トレイル、去年のヤマレコでこんな記録を見つけました。
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-311635.html
すごい記録ですね
詳細な情報で、是非いつの日かこのレコ参考に歩いてみたいと思いました。
分水嶺…
福井との県境から丹波方面に向けてなだらかな稜線を南西に下りてく感じで伸びてますね。
北山、南丹から丹波方面になると標高500mtにも満たない所になりそうです。
いや〜こうして地図眺めるのは面白い
北山方面の山々は標高こそ低いものの、谷と尾根が入組んでおり、地形図見ると複雑で面白い場所です。
武奈ヶ岳から西を向くと延々と続く北山の山々が…
ただ、人の出入りが極端に少ないので道迷いが怖いんですよね…
情報が少ないだけに中々足を運べないという…
再度のコメントありがとうございました。
リンクした高島トレイルのレコ、その歩行距離約90km、累積標高プラスマイナス7800m!!だとか。「歩くのは最小限にして走る。」とも。綿密な記事も合わせて実に驚異的な記録ですね。
途中、なぜか滋賀−福井県境から少しずれるのが面白い。途中には「武奈ヶ嶽」という山もあります。また途中の峠では標高300mほどというところもあるようで。
最後は三国岳という山で終わっていますが、ここから西の方、京都市と南丹市の境を西に進むのでしょうか。
するとすぐに天狗岳というのが見当たります。これ、以前私が京都から富士山が見えるかもと書いた時にutaotoさんがこの辺か?と書かれた山ですね。
なぜかこの高島トレイルというのはずいぶん整備されて指導標も充実している様子ですが、そこから西は急に人の出入りが少ないと・・・・。
確かに高山は案外と登山道がはっきりしているのに里山などはなにも整備もされておらず適当な踏み跡だらけ(^^)なんてところが多くて却って危険なところも多いですね。
やはり、まずは高島トレイルからチャレンジいかがでしょうか。もちろんこんな長コースじゃなくても。
pasocomさん、こんばんは
初めてpasocomさんからコメントいただいたのが、確か私の分水嶺日記でした。
ちょうど興味を持ち始めで、平沢峠からゴルフ場へと続く事を教えていただいた。
以来、分水嶺を歩く時は、「こっちの水は太平洋、こっちは日本海だな」と確認しながら歩いています。長い長い水の旅を思うと、なかなか面白いです。先日の至仏山も鳩待峠から、中央分水嶺でした。
日本では分水嶺が書かれた地図は無いけれど、アメリカではポピュラーな地図にさえ、大陸分水嶺は書かれているそうです。
まあ、必要無いっちゃ、必要無いのですがね。
コメントありがとうございました。
そう、Casuminさんの中央分水嶺日記にコメント入れさせていただいたのが初めてでしたね。
あのときも「日本山岳会」の踏査記録をご紹介しましたね。
私自身もそれまで漠然と知ってはいたものの、あれ以後、八ヶ岳や奥秩父のあちこちで「ここは分水嶺だ。」などと思いながら歩くようになりました。「中央」でなくても細かい流域まで気になって山梨の中でも「こっちは富士川、こっちは多摩川、いや相模川か?」など想像したりして。
確かに「必要無いっちゃ、必要無い」話ですが、必要性が無いような話だから面白いとも(^^)
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する