〜漢一匹北鎌尾根〜
- GPS
- 88:52
- 距離
- 52.2km
- 登り
- 6,499m
- 下り
- 5,654m
コースタイム
- 山行
- 15:09
- 休憩
- 1:23
- 合計
- 16:32
- 山行
- 6:13
- 休憩
- 1:02
- 合計
- 7:15
- 山行
- 10:09
- 休憩
- 1:26
- 合計
- 11:35
- 山行
- 10:45
- 休憩
- 2:19
- 合計
- 13:04
天候 | 1日目:雨→晴 2日目:晴 3日目:晴 4日目:晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
帰り:上高地からバス |
コース状況/ 危険箇所等 |
○貧乏沢のコル(2549m)ー貧乏沢出合(1774m) 大天井ヒュッテから約20分、2549m右手に看板あり。最初は藪漕ぎとガレ場で道は不明瞭。2280mで左手から沢と合流。沢をそのまま下り、危険と感じたら左岸側に巻道がある。沢沿いはゴーロの歩行技術が必須で大岩をクライムダウンする箇所あり。左岸の巻道は苔が酷く藪漕ぎもありルーファイが難しい。巻き道に従い過ぎると高巻きし横の小さな沢に誘導されるので注意。貧乏沢出合に1張分のビバーク地あり。 ○貧乏沢出合ー北鎌沢出合(1830m)ー北鎌のコル(2480m) 貧乏沢出合から20分ほど渡渉しつつ歩くとケルンが目印の北鎌沢出合に着く。幅2m程の狭い枯れ沢の北鎌沢右俣を直登すると何度か分岐点がある。それらは全て右手を選ぶ。ただし2430m付近の枝沢(クライマーホイホイ?)だけは左を選んだ。北鎌のコルを視認しつつGPSで確認し、方角を定める。 ○北鎌のコルー天狗の腰掛(2749m)ー独標(2899m) コルには3張のビバーク地あり。100m先にも1張分。2720mのフィックスロープがある岩場を越えたら2張のビバーク地点がある天狗の腰掛へ。こっから岩場の始まりで、踏み跡が錯綜し出す。独標基部(2800m)では千丈沢側へトラバースするのが無難。直登したい方は天上沢側によく分からん支点とフィックスがある。緑のフィックスでトラバース後すぐに独標へ直登し稜線に出る。独標には2張程のビバーク地。 ○独標ーP13(2873m)ー北鎌平(2960m)ー槍ヶ岳(3180m) 独標では北鎌の全貌を拝める。相変わらず踏み跡が錯綜しているが気持ちのいい稜線歩き。P13からトラバースが多くなり、気を抜けば下へ下へと誘導される。北鎌平まで3ヵ所程ビバーク地点あり。 北鎌平からは槍がすぐそこに見えるので、好きな所を登った。槍ヶ岳基部付近にはケルンや残置物、人工物が多くなる。 ○槍ヶ岳ー穂高岳ー上高地 南岳(大キレット)〜奥穂高〜岳沢も急峻な岩陵地帯。 目印は豊富にあり、浮石も少ない。ガバが殆どなので3点支持をしっかりとし慎重に進むこと。 |
写真
感想
今回は1人で北鎌尾根(+α)を歩いてきました。
天候や運が味方してくれ、良い結果となりました。
※北鎌尾根はアプローチを含め標高差、所用時間も長大なバリエーションルートです。いったん尾根に入れば登山道や目印、エスケープルートはありません。途中で引き返す、脱出する事が非常に困難です。もし行くなら体力・技術・天候を味方に付けて母ちゃんに感謝の手紙を書いてから挑みましょう♪
【行動概要】
1日目:信濃常盤駅-白沢登山口-餓鬼岳-燕山荘
時間:24:41-2:32-9:50-17:16/CT:×1.0
2日目:燕山荘-大天井岳-大天井ヒュッテ-貧乏沢-北鎌沢出合
時間:9:22-11:27-12:45-13:08-16:40/CT:×0.75
3日目:北鎌沢-北鎌コル-独標-槍ヶ岳-殺生ヒュッテ
時間:5:09-7:30-10:34-15:40-16:40/CT:×0.6
4日目:殺生ヒュッテ-槍ヶ岳-南岳-北穂岳-奥穂岳-上高地
時間:4:30-4:50-6:38-9:23-11:38-17:30/CT:×0.8
《北鎌尾根の所感》
長時間歩ける体力、ルーファイ、読図、基本的な登攀力・歩行技術・突っ込む勇気が必要でした。
・体力
長時間かけて累積標高1700mを登ります。高所で不安定な場所を何度も通るので“超”体力が必要です。
・ルートファインディング
錯綜する踏み跡が多いため、正しいルートを見極める力が必要です。読図だけではなく、現場で地形を見ながら進むので場数が必要です。途中で引き返す事を念頭において“ここを下る事が出来るのか”を常に考えましょう。まさに“ルートファイティング”です。
天上沢側に明瞭な踏み跡があっても基本的に千丈沢側を選択するのが無難と感じました。天上沢側に行こうとすると途中で懸垂下降が必要な箇所が出てきたり、詰みそうなオーラがありました。
万が一の為にも懸垂下降は習得するべきかと。
・基本的な登攀力、歩行技術
急斜面のザレやゴーロ、浮き石を見分けて進みます。また岩が脆かったり、ルーファイによっては難しいルートを通る可能性があります。基本的にはガバですが、何度も腕で全体重と荷物を支える場面があります。
難しい箇所は荷物を置いて登り、ロープで引き上げる等で対処可能かと。
【感想と振り返り】
若かりし頃、父と表銀座コースを歩いている時に一目惚れした稜線が、北鎌尾根だった。当時は登山道がない所に立ち入る考えはなかったし、○鎌尾根って紛らわしくすぐ忘れていた。ただ何度も槍ヶ岳に立ち、何度も見てきたカッチョええ尾根を歩いてみたかった。
《1日目》
信濃常盤駅に終電で到着後、準備してから白沢登山口を目指して歩く。以前、初ソロで餓鬼岳に敗退しているので、今回は鬼退治すべくこの山をスタートにした。
餓鬼岳までは沢沿いの危険な道と笹を掻き分けながらの長い長い急登である。沢沿いは整備されていなければ確保して下さいレベル。急登に差し掛かると膝が痛み出す。この膝の痛みは水分不足で発症しがちで安静にしないと治らない。さらに行動食のおにぎりで胃もたれし(滅多にならない)食欲もない。最悪な気持ちだが水を大量に飲みつつゆっくりと進む。しかも雨…。「おれは晴れ男なんだ」と自信たっぷりでカッパを着ずに進むと笹の影響もあり靴下から水が侵入し靴はぐちょぐちょになった。
餓鬼岳小屋に着いたときには全身びしょ濡れとシャリバテ気味で1時間半程の大休止。大天井岳まで行く予定を、手前の燕山荘に変更した。
燕岳までなら余裕っしょ、と思ってたら全然進まねーの。結局イルカとかメガネとか素通りし(余裕なし)なんとか到着。
燕山荘のお兄さんから「明日ここから北鎌通って槍まで行けるんじゃない?」とか言われたけどムリムリ。
明日は休養日にするんだ。とビール飲んだら飯食わずに寝てしまった。
《2日目》
寒くて全然寝れなかった。怠いけど起きて行動しなきゃ絶対後悔するから仕方なく準備する。飯を食っちまえば身体は暖まり力は漲りこっちのもんだ(胃もたれ治って良かった)。
体調はほぼ回復し、靴も1日歩けばある程度乾くのを知っているし、景色と歩きやすさで表銀座は素晴らしい道だ。
大天井ヒュッテから少し経つと無事に貧乏沢の入り口を発見。こっから本番と気を引き締める。
すぐに別れ道があり藪を掻き分けて進む。「ここ下りんのこえー」と思ったら左側に踏み跡が微かにあるが、苔で滑りやすく藪漕ぎする箇所が出てくる。「沢を下るなんてやるもんじゃねぇな」とイライラしながら2度とここは通らないと誓う。
天上沢から20分ほどでケルンを発見。北鎌沢出合だ。見上げると北鎌のコルが見えるが、思ったより近いな!と。時間的にここで終了。
《3日目》
2人組のガイドパーティーが先に北鎌沢を出発していた。水を3L補給し、急登を進む。自力で頂上までルーファイしたいので先頭に行く。分岐があれば右を進み、最後だけ左に進むとだけ覚えている。地形図だけで進んできたが、想定外の地形が出てきたのでGPSを投入。なんとか北鎌のコルまで来た。ここまで来ると引き返す事は危険なので進むのみだ。
すぐにフィックスがあるが、意地でも使うもんかと頑張らずとも越えれた。独標基部に取り付いたが直登はムリ。怖え。トラバースを選択。またフィックスあるじゃん!(事前把握済み)でも怖いからセルフをかけるが、一歩目以外は怖くなく難なく進めた。すぐに稜線へ直登すると独標までは比較的簡単にいける。独標からの槍が最高にカッコィィ。今まで歩いてきた、これからの道のりの全てが見える。
「独標から槍を見ながらの素晴らしい稜線歩き」とメモしてたのにいきなり道が分からない。2890m地点で天上沢側に進むと懸垂じゃなきゃ下りれない崖にぶち当たる。引き返し千丈沢側から行けば良いものの踏み跡全く無しのトラバースを何故か選択。ホールドがなく行き詰まり、戻るのもヤバい。手汗ぶぁっのお漏らしポイントだった。結局引き返しザックをデポし先を覗き込んだら踏み跡があったので進む。
いくつかピークがあるが、いずれも巻き道があったと思う。巻き道より直登した方が楽しく安全な場合があるが、反対側が崖だったら懸垂をするしかない為ビビって巻き道を選択することが多かった。
P13からルーファイミスと根性無しやらでトラバースが多くなり「楽しい稜線歩き」の予定が崩壊。北鎌“尾根”を歩きにきたのに、トラバースしてばっかりでは意味がないと言うことで、北鎌平からは遠回りでも尾根を歩いた(すっごい楽しい)。
槍ヶ岳の基部にはケルンや残置物が沢山ある。岩は硬くガバばかりで登りやすい。テンション爆上げなので難しそうなところを攻める。チムニーは一つだけ気合で進んだ。あっという間に賑わっている頂上の祠の裏側に着いてしまい、どんな顔で登場しようか非常に悩む。
ニョキっと顔を出すとYouTuberの安涼奈さんが撮影をしていた。一番最初に気づいたアリョーナさんが「凄いすごい」と喜んでくれ山頂にいた人達からもとんでもない祝福をされ、ハッキリ言ってデレデレ。「アリョーナさんいつも動画見てます」と言って山頂で沢山お喋りして写真撮って山荘まで下りてきた。テン場は空いてないので今夜は殺生ヒュッテに泊まる。
《4日目》
寝坊(起きてたのに)してまずは槍ヶ岳山荘まで登り返す。笠ヶ岳か穂高連峰のどっちを行こうか…。行ったことのない笠ヶ岳が有力候補だが、お姉さんが南岳へ歩き出したので方向は決まった。一般登山道の楽しさはルーファイせず無心で歩けるのが良い。しかもおれは「こんな所あったっけ?」と新鮮な気持ちを忘れずに何度も歩けるので良い性格をしているものだ。
風が強くたまに雹が降ったり、でとても寒い。難所でも風で身体が揺れる。ヘリの音がうるさいので振り返ると北穂高岳を過ぎたあたりで突風に煽られながら救助活動をしていた。良いペースで来ていたが、奥穂高岳でタイムアップ。ジャンダルムは飛ばして重太郎新道を使い上高地に下山する事にしよう。今夜は小梨平で風呂入ってビールと肉を楽しむんだとルンルンだ。
前穂高岳基部(紀美子平)付近で人が集まっている。どうやら高齢者パーティーの1人が疲労で動けなくなりヘリで救助されていたらしい。現場に到着すると残ったパーティーが下山を開始し始めた所で、休憩しながら眺める。「あーーこわ。」鎖から片手を離すことが出来ずザックに振られながら叔母さまが必死に下りている。リーダーの人に登攀道具貸しますよ、ロワーダウンしましょうかと提案してもあまり理解していない。一番ヤバそうな叔母さまのザックを持ちましょうかと提案するとお願いします。と言ってくれた。
途中の岳沢小屋までダブルザックで下り、山小屋の人に事情説明する。時間も遅く、遭難の可能性もあるからと電話しバタバタし出した。あとは山小屋の人に任せよう。叔母さまニュースにはならないでくれよ…。
駆け足で下り、小梨平キャンプ場で今回の山行は終了!!
《最後に》
自分にしては記録を沢山見て予習した。その中で推しの登山系YouTuber『金の猿』さんの動画が一番役に立った。歩行スピード・標高、時間を細かく動画で教えてくれるし、なによりオモロイ。地形図を手元に置き予習する机上登山ではそれらの情報がある事で容易にイメージ出来た。
机上登山をする事で全部理解してしまい“答え合わせ”をするつもりで挑んだが、そんな甘くなかった。
まず2万5千分の1地形図で表示されない小ピークや尾根・沢、岩壁などが出てくる。それらを予想しルーファイするのが難しく、神経を使った。また「簡単だ」「技術的に問題無し」とのレポートが多数あり、軽く見ていたが実際は嫌らしい部分が沢山あり、ビビりながら勇気を出して前に進んだ。
知り合いが1人で行ってくると言ったら、止めたいし、めちゃくちゃ心配する。
だけどやっぱり、
1人で、誰もいない北鎌尾根に行けて良かった。すげー楽しかった。
いつかは末端から、白くなった北鎌も歩きたいな…
最後まで見て頂きありがとうございます!!👋
あ、次は写真のコメントの番ですよ!
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