最近ふとしたことで思い出したStefan Glowaczのクライミング写真集「Rocks around the world」が何の偶然か?p.31、p.127で紹介されている。不思議。
※シュテファン・グロバッツ;1965年3月22日生まれの未だ50歳かよ!(氏もまた、クライミングを手段として僻地にて冒険的クライミングを展開、継続する素晴らしいクライマーである)
今、手元には無い。
けれど、かつて有った。
札幌でのプー太郎時代に、映画制作の歩荷バイトで稼いだ金が懐にヌクヌクと残っていた折、立ち寄った大通公園近くの山岳古書店でこの本が目に入った。今ほどクライミングの歴史に興味も無かったくせに、中古の割に高価だったが一息に購入した。
当時、中央区の一軒家に同居していた幾人かのうち、山岳部の後輩に当たるUという無愛想な男が居た。
同じ山という共通項を持っていながら同居人の先輩に話を合わすでもなく、淡々と飯を食いバイトに出掛け時折登校するといった生活だったと記憶する。
我々プーのおぢさん達が夜中に集いて酔くろうて気炎を揚げていても、ノソっと現れて同席するでもなく飯をボソボソ喰って階上へ行ってしまうやうな男だった。
「つまらんやつやね(沢田征次)」
とは言わないまでも、一緒に居て気持ちが浮き立つ様なこともない男、そんな奴だった。
山岳部は既に辞めており、得意分野のフリークライミングに特化し鍛錬して、道内のちょっとした大会で入賞したとの話も聞いた。そんな、マッチョマン。
あれ程愛想の無い男だったのに、京大生の小柄な妹ちゃんが来道来札した際には、我々にはついぞ見せたことのない柔和な笑顔で応対していたのが印象に残った。
私が北海道での沢登りに区切りをつけて札幌を去る際の荷造りの折に、どういった経緯でかは失念したけれど珍しく欲しいという意思表示をしたUにこの豪華本をあげた。グロバッツ程ではないにせよ、クライマーとして大成できるように。
後年、山の会のZと沢登りの話をしていた時に「そういえば、Uは未だ見つかっていないそうだ」という話が出て、一体何の話かと聴き返した。
何でも、その後Uは山岳部時代の同期達とthe most famous streem in japanであるところのカウンナイ川へ沢登りに出掛けたのだったが、某かの事情で他の連中が先行して入渓した後を追って入山したものの、その後の行方知れずでどうやら下部の平流部での徒渉に失敗して流されたものと想像された、と。カウンナイがUにとっての天国への階段となってしまった。
何処かの記事にも書いたことだが、カウンナイの下流部は実に侮れない。あれだけ徒渉失敗の死亡事例があるのにも係らず、遡行レベル★でガイドブックに載るものだから安易に実行されてしまう。それはさて置き、垂直の世界で馳せた力も、殊、水の力には抗えなかったか。それ程までに、水の力は侮れない。
あれが正に彼奴の「冥土の土産」になっていなけりゃいいんだが。
この世のクライミング界は、ここのところ躍進著しい。
あの世でも攀じるところは幾らでもあろう。
5.15dだろうがフレンチ10aだろうが4次元クラックだろうがシュバルツカミンだろうが、力尽き果てるまで存分に登ってくれ。
グロバッツを手本に、また山岳部で培ったであろう開拓者精神を元手に。
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