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ディスクは所有してはいない。
大学の講座で席を同じくしたマゾ谷、いや佐土谷君に買わせた(いや、買ってくれた)CDをダビングしたカセットテープを所有している。
はずだったが、家探ししても無い。アレレ?
このテープは実によく聴いた。それは何故かというならば「それしか無かった」から。
別段、制限も無かったのだったが卒業後の水産庁補助調査員として春からの
「4カ月間に渡る照洋丸での船内生活をするに当たり、音楽と本とを持ち込むならば何を選択する?」という個人的制約の中で選んだ唯一の音楽が件のカセットだった。何でもかでも持ち込めばいいというものではない。
【尚、その際持ち込んだ本はといえば、司馬遼太郎「竜馬が行く」金子光晴「どくろ杯」そして「デラべっぴん」】
B面一曲目、オスカー・ピーターソンの左手打鍵から移ってのコロコロと跳ねる右手のイントロからしてもう、頭の中の水平線に朝日が昇る。
マグロ延縄混獲調査は深夜1時頃に始まり、日の出とともに午前の部終了。午後に備えて朝から缶ビール飲んで朝寝して、10時頃から捕獲「してしまった」アカウミガメに取り付け放流したGPSデータ(当時はピンガーと称していた)を追跡調査するという仕事だった。早めの夕食を摂り、軽く飲んで寝て、また深夜起きるの繰り返し。そんなルーチンの中で繰り返し聴き続けた音楽が、件のテープの一曲だった。
今思えば、海上生活も悪くは無かった。チョイスも悪くなかったと思う。
レスター・ヤングの絶頂期は戦前期にあって、その流暢なアドリブラインは後にスタン・ゲッツ、ズート・シムズをはじめとするイミテイター達を「レスター派」と称する程に後継に絶大な影響を及ぼした。ビリー・ホリデイをして、レスターをテナーサックスプレイヤーのプレジデント(大統領)の意で『Pres』と称した。
ジャズ評論家、油井正一氏は名著「ジャズ ベスト・レコード・コレクション」で曰く「レスター聴くなら45年まで」「まさにジャズ史上の最重要人物の一人」。
レスターは1944年9月召集の軍隊生活で虐待を被って精神を病んで以降、そのアドリブにおける天才的飛翔は鳴りを潜めてしまったけれど、戦後も一時的に健康を取り戻して快調な演奏を見せた時期があり、このディスクもその一枚である。
絶頂期には遠く及ばない、しかし心を打つものが確かにある。
素敵な音楽なので、一度聴いてみるといいと思う。
YouTubeでも聴けるけれど、素晴らしい音楽を身に付けたいならば、身銭を切らなければならないと思う(人に買わせてダビングしておいて何を言うか)。
村上春樹氏は『Pres And Teddy』を推すけれど、私個人としてはこちらのスィーツを推す。DrumsのBuddy Richも、いつになく穏やかにスイングしている。加えてデイビット・ストーンマーチンのジャケット画もいと好し。
●Lester Young and Harry Edison -『Pres And Sweets』-05-「One O' Clock Jump」
卒業に際して献上した「Stan Getz plays」を、今や社長のサド谷よ、聴いてっか? 21年して先月、ようよう買い直したんで。
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