何?なんよ? 作業員一同大いにざわついた。
猟銃? 発砲音のような、それにしては音が大き過ぎた。
仕事を始めた十年近く頃のこと。
奥山の林道終点で木材運搬用トラックへの積込み作業中に、積み荷が見え辛くトラック位置を少しばかり移そうとした矢先の破裂音だった。
破裂音? よもやパンクか?
トラックタイヤを仔細に点検するも異常無し。
ありゃ、後輪タイヤ周辺に、チェーンソーオイル(潤滑油)がぶちまかっている。
何と、オイルを詰めた2リットルペットボトルを積載トラックが踏みつけて、その余りの重量に耐えきれず破裂した模様。
それにしても凄い音がしたものだった。
褒めるべきはこの日本製ペットボトルの性能高さ、だらう。
海外に出掛けて日本との違いを思い知る一つに、ペットボトルのヘニャヘニャ度がある。
まぁ、購買客が飲み終えるまでの間に破損しない程度の強度を保てば良いなら、何も日本製のペットボトル強度にするまでもないとは思う。でも、それにしても中国製のヘコヘコボトルはイタダケナイ。使い捨てだぁよ、あれでは。
そこへいくと日本製ペットボトルは素晴らしい。世界に誇れるメイドインジャパンの一つだ。
これを有効利用しない手はない。沢登りに空気抜いてベコませて携行し、源頭で水を汲み、山向こうの水源地に辿り着くまでの水筒として重宝する。
家では家で、調味料入れから酒の移し替えまで何でもこなしてくれる。嗚呼、昨晩詰めておいた「三岳」を水と勘違いした妻がドボドボと流しに捨てた! そんながあってもペットボトル活用は止まらない。
昔、「ブッシュマン(改題;コイサンマン)」という映画でコーラのガラス瓶を後生大切に使うシーンが登場したもので、ところ変われば、、、ちょっと映画の趣旨とは違うので詳述は避けよう。
この「ブッシュマン」ペットボトルバージョンを日本で目の当たりにしたことがある。日本にもニカウさんが居た!
その男、鳴奈瀬酔一郎(仮名)は当時勤務の学校まで片道2時間の山道を車で通い、ガソリン代だけでも月の給金の相当な額を吸われていたようだ。後に非常勤から格上げされて交通費支給になったそうだが、それにしても大層な僻地に住んでいた。
家から一番近くのコンビニまで車で一時間半!と豪語するこの男の同棲者への何よりの土産は、コンビニプリンだったという。
そんな浮世離れた男が、同行した沢登りで携行したペットボトルが凄かった。使い込みの度が過ぎて、擦れ擦れの薄々白白の代物だったのだ。
「何ソレ? そろそろ買い換えたら?」
「ペットボトル何て買える訳ないがぁ。これも生徒がゴミ箱に捨てたところを漁って拾い上げてきたモンやて」
「・・・・・」
当時私も相当貧乏だったが、お互い三十代にして何の会話か! 嗚呼、総てが懐かしい。
そんなニカウ氏(which made in Japan)も、現在はオール電化の家に住んでいる、らしい。
「清貧」ということばがあります。私が今回の日記に書いた草野心平は「人間カネを持つとアホになる。」が口癖でした。だから生涯「金科玉条」のように貧乏を貫きとおしました。だから文化勲章受章で天皇陛下にお会いするのに「それらしい」衣装が無くて、てんやわんやでした。
となると、阿呆になってみたい気もすれど、やはり身の丈に合った暮らしが一番かと思う年の瀬です。「清貧」という精神性は、生活一般といわず登山にも掲げたい文字です。
天皇陛下に面会、南方熊楠にも似たエピソードがあったような、なかったような。
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